このところ携帯電磁波の危険性が、特に海外で指摘されている。写真は、昨年、集英社から出版された矢部武著『携帯電磁波の人体影響』
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基地局設置のための土地の借地料が年額でわずか3千円(高知県)とされたり、長野県伊那市や鎌倉市稲村ケ崎など各地で住民感情への配慮がないまま基地局の稼働断行を繰り返したり――NTTドコモの企業倫理が問われている。さらには、メディアに対する取材拒否、労組を通じた政治献金。電話会社相互の競争が激化するなか、ドコモの暴走が目立つようになった。
【Digest】
◇電磁波から逃れて
◇電磁波アレルギー
◇「白装束」報道
◇「守る会」の調査
◇年末のどさくさの中で電波発信
◇問われる企業倫理
わたしの手元に一通の土地賃貸借契約書がある。高知県高岡郡○○町にある基地局設置に際して、NTTドコモと地主との間で交わされたものである。契約書の第5条は賃料を明記している。
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本契約開始日から平成23年3月までの賃料は金30,000円也とし、それ以降は年額金3,000円也とする。本契約開始日から平成23年3月分までの賃料金30,000円也は、本契約締結日から2ヶ月以内に支払うものとする。また敷地通行および使用料金2,000円也についても本契約締結日から2ヶ月以内に支払うものとする。
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NTTドコモと地権者の間の土地賃貸借契約書。第5条に賃料3000円(年額)が明記されている。 |
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読者は賃料の額から「0」が2つ欠落しているのではないかと勘違いするかも知れない。が、2011年(平成23年)4月からの賃料は、年額で3000円。月額にすると250円。日割りにすると10円にも満たない。しかも、契約の有効期間は10年にも。
わたしはこの契約書をみずからが主催するウエブサイトの読者から入手した。この女性読者は、わたしに基地局設置に伴う賃料の標準的な額を問い合わせてきたのだった。
基地局の設置には反対だが、知人が年額3000円でNTTドコモに土地を提供する契約を結んだことを知り、電磁波問題とは別の観点から、企業倫理に疑問を差し挟んだのである。知人が無知につけ込まれ、バカにされているのではないか、と相談してきたのだ。
「わたしもどの程度の賃料が標準なのか詳しいことは知りませんが、年額3000円ということはありえないでしょう」
「地主さんが騙されたということでしょうか?」
「それは断言できませんが、通常はありえない賃料ですね」
「設置場所が田舎なので、安くなっているのでしょうか」
「さあ、どうでしょうね」
わたしは各地の基地局問題を取材してきたが、賃料が年額で3000円という例を他に知らない。都市部では少なくとも年額で50万円ぐらいになる。100万円を超えるケースも多々ある。
この賃料への誘惑に負けて、近隣住民の健康被害をも顧みずに、自分の敷地へ基地局を設置させる地主が後を絶たない。
念を押すまでもなく、わたしはNTTドコモの基地局から、地主がどの程度の賃料を徴収すべきかに深い関心を寄せているわけではない。それよりもむしろ、年額3000円の賃料に設定してはばからない企業倫理に、暗い好奇心を刺激されたのである。ドコモの体質を知るうえで格好の材料だった。
賃料を極端に切りつめたり、電磁波による住民の健康被害が懸念されても、強引に基地局を設置していく企業戦略。それと平行して舞台裏では、
労組を通じて政治献金を送り、携帯ビジネスに有利な政策決定
をさせる。
コンプライアンス推進委員会を設置しているNTTドコモの企業倫理とは、どのようなものなのだろうか.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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ドイツ医師グループによる「基地局周辺の症候群」の報告。『健康を脅かす電磁波』(荻野晃也著・緑風出版)より |
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