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原発SLAPP(口封じ訴訟)被害者が法廷で明かした実名――熊取谷稔(パチンコ)、黒澤正和(警察)、吉田文毅(資源エネ、特許)…

情報提供
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外国特派員協会に招かれての記者会見。真ん中が田中稔氏。右は週刊金曜日発行人の北村肇氏。(2012年8月31日)写真提供:ナタリー三浦郷子氏。
 「最後の大物フィクサー」白川司郎氏、東電利権に食い込む――。週刊誌にそんなタイトルの記事を書かれた白川司郎氏は、執筆者の田中稔氏(ジャーナリスト・『社会新報』編集次長)個人に対し、名誉毀損であるとして今年3月、6700万円の損害賠償を求め、訴えた。12月10日の第5回口頭弁論で被告席の田中氏は、各界の重要人物を結ぶ橋渡し役を白川氏が務めた一例として、ゴルフコンペに言及。コンペ参加者のキーワードは、パチンコ・原発・特許である、と指摘。パチンコ機器メーカー代表の熊取谷稔、警察庁の黒澤正和、原発推進の資源エネルギー庁で総務課長を務めた元特許庁長官の吉田文毅…と、関係者の実名を法廷の場で明かしていった。
Digest
  • 原子力村を追及したら訴えられた
  • 北軽井沢接待ゴルフに集まった重要人物の名前
  • 熊取谷稔・黒澤正和・吉田文毅氏らが集った
  • 新銀行東京の内田泰司取締役もコンペに参加
  • 1%を守るための名誉毀損という罪

原子力村を追及したら訴えられた

この裁判は、スラップ(SLAPP=恫喝訴訟・口封じ・いやがらせ訴訟)であると、被告の田中氏が反論しているのがポイントだ。大企業・大組織・権力・資金のある者が、資金力に劣る一般人や個人、市民団体などを名誉毀損で訴えて言論封殺を狙う訴訟を、スラップという。

訴えられた個人は、訴訟のために時間をとられ、仕事も日常生活にも支障をきたし、精神的にも金銭的にも疲弊し、言論活動をすることができなくなる。こうして相手の言動を抑えるのが目的だから、訴えること自体で目的を達成し、勝ち負けは関係ない。米国にはこうした訴訟を規制する法律があるが、日本は野放しとなっている。

田中氏側は、「フィクサー」と書いた大手新聞・週刊・月刊誌記事19本を含め、計約60本もの記事リストと解説書も提出している。これはつまり、本訴訟が個人を狙い撃ちにしたSLAPPであることを示している。

関係者の実名を挙げた口頭弁論を再現する前に、田中稔氏が訴えられた対象の記事の概要を確認しておこう。

『週刊金曜日』2011年12月16日号の概要

「WANtED “原発裏金”運搬人」と題する1枚の怪文書が衆院議員会館にばらまかれたのをきっかけに、怪文書で批判されている白川氏について調べた。

東京渋谷区神山町の敷地約300坪の白川邸については、土地建物の所有名義が、白川氏の中核企業㈱ニューテック100%出資の日本テクサ㈱である。この土地と建物に、西松建設を抵当権者とし㈱ニューテックを債務者とする40億円の抵当権が設定された。

その1年半後に西松建設の抵当権が抹消され、あらたに権利者を㈱新銀行東京、債務者を㈱ニューテックとする7億円の抵当権が仮登記されている。

白川氏が会長を務める(株)ニューテックは原発警備の会社であり、監査役に東京電力立地部長などを歴任した小菅啓嗣氏が就いていた。

さらに110億円の脱税で逮捕された水谷建設の水谷功元会長の事件に絡んで特捜部が動いた。そして最後に、白川氏が関係する企業一覧を記して記事は終わる。

この記事に対して白川司郎氏は12年3月16日、名誉毀損だとして版元の週刊金曜日は訴えずに、執筆者である田中稔氏個人のみに総額6700万円の賠償を求める訴訟を起こした。

原告・白川氏の主張を大きくわけると、「フィクサーと表現されたこと」「東電利権に関係していると書かれたこと」の二点。訴状からピックアップすると以下のようになる。

≪「『最後の大物フィクサー』白川司郎氏」との見出しについて(中略)この用語で原告を表現すること自体、読者が上記見出しを一瞥しただけで、原告の人物像に悪印象を持つ恐れがあるのであり、原告の社会的評価を低下させるものであり、原告に対する名誉毀損であることは明らかである≫

≪「東電利権に食い込む」との見出しについて、原告は、当該利権なるものに関与した事実はない≫

北軽井沢接待ゴルフに集まった重要人物の名前

12月10日の第5回口頭弁論では、被告の田中氏が、白川氏が各界の有力者をつなぐ仲介役であることを示す新事実を陳述したのだ。具体的には、田中氏が裁判所に提出した第三準備書面の概要を口頭で述べるかたちである。

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ゴルフコンペの前日2012年9月1日、長野県北佐久郡軽井沢町のニューテック軽井沢保養所では、懇親会が盛大に開かれた。
≪平成24 年9月2日、群馬県内のゴルフ場で原告を会長とするニューテックグループによるゴルフコンペが行なわれました。コンペ招待者には次のような人物が含まれていました。

パチンコ機器メーカーの代表である熊取谷稔(いすたに・みのる)氏、元警察庁生活安全局長の黒澤正和氏、元特許庁長官の吉田文毅(よしだ・ふみたけ)氏などです。

熊取谷氏は政財官をつなぐ仲介役として知られ、黒澤氏はパチンコ業界の監督官庁である警察庁のOB。吉田氏は原発政策の推進官庁である資源エネルギー庁の総務課長も歴任していました。

つまり、この3人と白川氏を関連付けるキーワードは、第一に「特許」、第二に「パチンコ」、第三に「原発」です。

コンペにはニューテックに対して13億3千万円もの貸し付け融資を実行した新銀行東京の現職の取締役や元海将らも含まれていました。原告がニューテックグループの陣頭指揮を執っている様子、原告が業界と官僚OBをつなぐ仲介役(フィクサー)と呼ぶのにいかにふさわしいかを確認しました。『週刊金曜日』11月16日号に詳しく掲載されていますのでご参照ください≫

法廷における上記の陳述に加え、後日、田中氏に、ゴルフコンペを取材するため北軽井沢に乗り込んだときの生々しい実態を語ってもらった。

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白川司郎氏の実質的自宅(東京都渋谷区)。建物と約300坪の土地の名義は日本テクサ(ニューテックのグループ企業)。

田中氏が訴えられると、5月16日には参議院会館で「原発スラップを問うジャーナリストと市民の会発足集会」が開催され、7月には「『原発フィクサー』訴訟と闘う田中稔さんを勝たせる会」が発足し8月7日には東京杉並区内で集会を開いた(写真)。

「『原発フィクサー』訴訟と闘う田中稔さんを勝たせる会」は、ニュースレターを発行し始め、毎号、裁判のポイントや背景についての解説や情報が掲載されている。

海外でも注目を集めている原発スラップ裁判。この記事は「リポーターを黙らせるには野球のバットはいらない・・」と始まり、刺激的かつポイントを衝いた内容となっている。

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記者からの追加情報

次回の第6回口頭弁論は2013年1月28日午後1時30分 東京地裁 615号法廷<P> 「原発フィクサー」訴訟と闘う田中稔さんを勝たせる会は、裁判に関する情報を随時提供している。

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