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『#ケチって火炎瓶』判決文拡散で安倍支持者がオウンゴール 安倍首相と暴力団関係者の会談を報じた寺澤有氏が語る危険な話

情報提供
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安倍晋三首相の大スキャンダルを追及しているジャーナリストの寺澤有氏。
 「#ケチって火炎瓶」事件が大騒ぎになっている。1999年4月の下関市長選で、安倍首相の秘書だった佐伯伸之氏は、親交のあった建設会社会長の小山佐市氏に対立陣営候補への選挙妨害を依頼した。ところが小山氏への見返りは不十分で、逆に佐伯秘書への恐喝容疑で逮捕されてしまう。怒った小山氏は、知人の指定暴力団「工藤会」系高野組の高野基組長に依頼して、安倍首相の自宅や事務所を合計4回、火炎瓶で襲わせた。今年5月、証言に加えて安倍事務所と小山氏が交わした文書3通の現物が現れ、安倍首相が直接、小山氏と面談していたことが判明。政権に致命傷を与える事件にも関わらず、山本太郎議員以外の野党とマスコミはだんまりを決めている。首相サイドは自然鎮火を狙いたいとみられるが、安倍支持者らがネット上で事件の判決文を拡散させ“オウンゴール”状態に。『安倍晋三秘書が放火未遂犯とかわした疑惑の確認書』を著した寺澤有氏に、危険すぎる取材余話を聞いた。
Digest
  • 総理大臣辞任はおろか国会議員も辞職
  • ケチって火炎瓶事件の本質は「民主主義否定と差別」
  • 安倍支持者が選挙妨害や秘書と暴力団系の関係を拡散
  • 山口県警OBの安倍氏の筆頭秘書がキーマン
  • 小山氏が取材に対し「4000万円を要求」の危険な意味
  • 新聞テレビの報道記者は取材できるのか?

総理大臣辞任はおろか国会議員も辞職

暴力団と深い関りを持つ人物に秘書が選挙妨害を依頼し、その報酬をめぐるトラブル処理のために、安倍首相がその人物に直接会って2時間も交渉したのが「火焔瓶事件」の本質だ。

首相辞任どころか議員辞職すべき重大事件である。

山岡俊介・寺澤有両ジャーナリストが5月13日、火炎瓶事件で13年の懲役を終えて出所した小山氏と5時間超のインタビューを敢行し、6月9日には安倍事務所と小山氏が交わした確認書や願書計3通を公開して以降、一般市民が事件を拡散している。

しかし、7月17日の参議院内閣委員会で山本太郎議員が安倍首相に質問した以外は野党の動きがなく、テレビと新聞はまったく報道していない。これ幸いにと、安倍首相サイドは一切、アクションを起こさずに、”自然鎮火”を狙っているようだ。

実際、8月末にやや沈静化の動きも見え始めた。ところが、味方のはずの「安倍支持者」たちが、火に油を注ぎ、安倍首相のマイナスイメージを拡散する皮肉な現象が起きているのだ。

「安倍支持者らによるオウンゴールの連続です」

あきれ顔で言うのは、山岡俊介氏とともにこの事件を取材して証拠文書を公開した寺澤有氏である。その理由を聞く前に、ここで再度、「安倍首相 #ケチって火炎瓶事件」の流れとポイントをおさらいしておきたい。

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女性スキャンダルを報じた「アサヒ芸能」。これも誹謗中傷ビラとしてまかれた。

ケチって火炎瓶事件の本質は「民主主義否定と差別」

1999年4月の下関市長選で、安倍陣営の江島潔候補(現参院議員)を応援するため、建設会社会長の小山佐市氏が、対立候補の古賀敬章氏に対する誹謗中傷ビラを撒いた。選挙妨害である。

当時、安倍首相の佐伯伸之秘書(故人)から中傷ビラ配布を頼まれたというのが、小山氏の主張だ。

共同通信社出身の2人のジャーナリスト、青木理氏と魚住昭氏は、佐伯秘書にインタビューし、その内容を『月刊現代』(2006年12月号)に発表している。

その記事によると、安倍陣営の佐伯秘書は、古賀候補の女性スキャンダルを扱った週刊誌記事を小山氏に見せ、「それで、 僕は 『 こんな 記事 が 出る ヤツ は 国会議員 の 資格 が ない』 と 小山 に 言う た」と、スキャンダル記事を見せた事実は認めたが、中傷ビラをまけとは言っていない、とインタビューで答えている。

中傷ビラは何種類かまかれており、その一つが「北朝鮮うんぬん」というもの。その中傷ビラは、古賀氏は「北朝鮮国生まれで」「古賀氏が下関市長に当選すれば、下関の街は朝鮮支配の町になり・・・」と、まったくの虚偽が書かれていたばかりか、悪質な差別文書だ。

小山氏本人は、「週刊誌記事のコピーをバラまいた。(北朝鮮うんうんうの)怪文書はワシやない」と語る一方で、「とにかく、安倍事務所の佐伯秘書が『古賀は朝鮮人で、当選させたら下関は朝鮮に支配される』としきりに言っていた。だからワシも協力したんや」と山岡俊介氏と寺澤有氏によるインタビューに答えている。

ともあれ市長選挙では、安倍陣営が推す江島潔氏が当選した。「対立候補を当選させないための活動」をしたのに、見返り”がないため、安倍事務所と小山氏の間で交渉が行われた。

6月17日 1通目の確約書
6月22日 願書(竹田力筆頭秘書が小山氏に対し、7月3日午前10時に事務所で安倍首相と面談してほしいと依頼)
7月3日 安倍首相と小山氏が2時間面談
7月13日 上記の直接面談を踏まえ、2通目の確認書

これらの書類が今年になって公開されたことで、今回の事件に火がついた。

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事実無根の誹謗中傷を書いた怪文書。ヘイトスピーチそのものの文書が下関市長選でばら撒かれた。

そのころ、なぜか安倍後援会関係者が絵画を売って欲しいと、何度も小山氏に頼みこんできた。うるさいので小山氏は販売したという。その代金として300万円を受け取った。(領収証の宛名は、もちろん佐伯伸之秘書ではない。)

安倍首相と小山氏が面談した翌月、1999年8月30日、絵画販売代金300万円の受け取りが、佐伯秘書に対する恐喝だとして小山氏は逮捕される。が、早期釈放で不起訴となる。

確認書を交わしたにもかかわらず、合意通りに実行されなかったどころか、逆に恐喝で逮捕された小山氏は、指定暴力団「工藤会」系の高野組・高野基組長に依頼して、2000年6月から8月にかけて、安倍晋三氏宅らに向けて4回(間違えて攻撃した場所を含めれば5回)、火炎瓶を投げさせた。

事件から3年も経った2003年11月、小山氏、高野組長ら数名が火炎瓶事件で逮捕された。裁判の末、2007年3月、小山氏が懲役13年、高野組長が懲役20年(服役中)の判決が下った。

事態が急変したのは、服役していた小山佐市氏が今年2月に出所し、15年以上前から事件を追っていたジャーナリストの山岡俊介氏(主宰するアクセスジャーナルで事件の連載記事執筆)と、電子書籍「安倍晋三秘書が放火未遂犯とかわした疑惑の『確認書』」を書いた寺澤有氏に連絡してきたことだ。

安倍支持者が選挙妨害や秘書と暴力団系の関係を拡散

寺澤氏が言う。

「安倍首相の支持者たちが、裁判所のホームページに掲載されている、関係者をアルファベットで表記した判決文を拡散させています。

安倍首相を擁護するために判決文を利用しているのですが、本当に判決文を読んだのか、とあきれ返ります。

いわゆるネトウヨといわれる大勢の人たちが、佐々木亮弁護士らを懲戒請求し、逆に訴えるぞと言われてうろたえている事件が話題になりましたが、それを思い出しました。

拡散するなら、しっかり読んだほうがいいですね。判決文が拡散されればされるほど、安倍首相が不利になり、窮地に立たされるのではないでしょうか」

確かに安倍支持者、ぞくに「安倍信者」などと呼ばれる人たちが、今回の安倍首相と暴力団とのかかわりはねつ造だ、と反論している。たとえば、こんなサイトがある。

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安倍支援者のサイト。疑惑の「確認書」の意味を全く理解せず、文書の日付も違い、判決を出した裁判所名も間違え、のちに訂正されている。判決文を拡散したり、安倍首相を擁護すればするほどボロが出てしまう。
 「事実を整える」《2018-08-26 「安倍総理が小山佐市に選挙妨害依頼」というデマ:裁判所の判決文に見る火炎瓶を投げ付けた犯人の主張」》

ここでは、公表されている判決文をもとに、「『安倍総理が下関市長選の選挙妨害依頼』というデマ」、「裁判所が事実認定した内容『小山は信用できない』」などと書かれている。

――なぜ判決文を拡散するのが“オウンゴール”になると思いますか。

「判決文によって安倍首相は悪くないと言っているわけですが、普通の人がこれを読めば、安倍首相や安倍事務所に悪印象をもつ内容になっています。

まず、首相の秘書である佐伯伸之さん(故人、判決文ではW)が、《かねてから交際していた》と、長年にわたり暴力団とかかわりのあった小山さんと交際していたことが認定されています」

判決文の「2 認定できる事実」の中では、「(2)本件各下関事件発生前の状況」を示し、証言者の調書をひいて、次のように記載されている。

《~被告人B(小山)は、G議員(安倍晋三)の地元秘書でかねてから交際していたW(佐伯伸之)に対し、平成11年に行われた下関市長選で自派と対立するX(古賀敬章)候補を当選させないように活動して貢献したと主張して金員の支払いを要求し・・・》

「このように長期間にわたって佐伯秘書と小山さんが交際していたことが明白に認定されている。これだけでも国会議員としてはマイナスです。

しかもそれに続いて

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【上】確認書1999年6月17日付、【中】願書1999年6月22日付け、【下】確認書1999年7月13日付。当事者でなければ分からない内容が記載されている。このような確認書で合意したのに、それが実行されなかったとして、小山佐市氏は工藤会系高野組の高野基組長に依頼。安倍氏自宅ほかに火炎瓶を投げ込まれることとなった。

【上】地元の最大手パチンコ企業・東洋エンタープライズの永楽本店。同社が安倍晋三後援会事務所などを貸している。(写真提供:寺澤有氏)自宅もかつては同社が貸していたが、1990年に父親の故・安倍晋太郎氏に、,翌1991年に相続で所有権は移転されている。【下】下関市内の安倍晋三氏宅。ここも火炎瓶を投げ込まれた。(写真提供:山岡俊介氏)

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2018/09/22 00:19
2018/09/20 14:25
甚六2018/09/15 09:43
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