6月1日にJR草津駅東口の広場で、岡本圭生医師の小線源治療の継続を求めて開催された集会と、それに続くデモ行進。150名が参加した。(写真撮影・提供=田所敏夫)
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滋賀医科大学医学部付属病院の泌尿器科の暴走が止まらない。岡本圭生医師による前立腺癌患者に対する小線源治療を妨害しないよう仮処分命令を受けたあとも、大学病院は手術枠を減らしたり、手術の順番を待つ待機患者に「(来年以降は)附属病院泌尿器科の他の医師による治療及び経過観察を行うか、他の医療機関に紹介してもらうかを選択します」と誓約させている。岡本メソッドの評判を落とすため、治療成績を他の大学病院と比較した文書をウェブサイトで公表したが、数字の巧みなトリックであることも判明した。こうした「岡本バッシング」と平行して泌尿器科は、4月から岡本医師とは別枠で独自の小線源治療を開始。しかし関係者の話では、7月、8月、9月の手術枠が1件も埋まらず、10月に1件だけと、患者が集まらない。泌尿器科に対する不信感が広がっているようだ。最新情報をレポートする。
【Digest】
◇仮処分後の岡本外来
◇仮処分の内容を履行ぜず
◇待機患者に突きつけられた書面
◇低リスクの患者がかかえる不安
◇事件をなかったことに
◇国立がん研究センターのプレスリリースを偽造
◇比較方法の誤り
◇民間企業の視点から事件を見ると
◇待機患者の苦しみは続く
岡本医師に割り当てられてきた
小線源治療の手術枠は、週3枠。毎週火曜日に3人の患者が「執刀」を受けてきた。6月以降に手術枠に組み入れられる患者は、仮処分によって治療を受けられることになった人々。司法命令で命が繋がった患者たちである。7月2日が、手術の期間が延長されてのち、最初の手術日だった。
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滋賀医科大の塩田浩平学長。(出典=九州医事新報) |
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この事件の発端は、既報のとおり、滋賀医科大学医学部附属病院に、
日本メジフィジックス社の協力で、前立腺癌小線源治療学講座(以下、寄付講座)が設置された2015年1月にさかのぼる。
寄付講座が設置されたあと、泌尿器科の河内明宏教授と成田充弘教授が、寄付講座とは別に泌尿器科独自の小線源治療を計画。本来は岡本医師が担当すべきだった23名の患者を、泌尿器科に誘導した。ところがふたりとも小線源治療が未経験だったために、患者を担当していた成田医師が「執刀」の前段で医療過誤を起こした。
河内教授らの計画は、岡本医師が塩田浩平学長に中止を進言したことで、とん挫したが、事件は終結しなかった。事実上、モルモットにされた被害患者らが、病院長や学長に抗議を開始。岡本医師も、病院に説明と謝罪を要求した。
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大津市の郊外にある滋賀医科大学医学部附属病院のロビー。 |
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泌尿器科の不正行為に対し、隠ぺいで逃げ切ることを画策した病院幹部は、当初2017年末で、寄付講座の閉鎖と岡本医師の解雇を予定した。しかし既に多くの患者に対し2018年以降の岡本医師の治療予定が組まれていることを無視できず、代替案として2019年12月末をもって寄付講座を閉鎖することを告知。そして、岡本医師による「執刀」は、その半年前の6月30日で終了する予定と告知した。ところが、この決定により「執刀」のスケジュールが組めなくなる患者が30名以上発生した。
そこで岡本医師と待機患者の代表7名が、「執刀」期間を11月30日まで延長するように求めて、今年の2月に仮処分を申し立てたのである。裁判所は5月20日にそれを認める仮処分を下した。その結果、岡本医師による「執刀」は、11月30日までは継続されることになった。
◇仮処分後の岡本外来
京都市の上田正信さんは、手術の期間が延長されてのち、最初の手術日にあたる7月2日に、手術を受けた。
上田さんは知り合いのクリニックで、血液採取による前立腺癌の検診(PSA検査)を定期的に受けていた。PSAの値は徐々に高くなっていた。そこで医師の紹介で市立病院を紹介され針生検を受けた。針生検とは、前立腺に針を刺して、癌細胞の有無を調べる検査である。
しかし、癌は見つからなかった。そこで再び、クリニックでPSA検査をしながら経過を見ることにした。
2018年にPSA値が一気に28ng/mLにまで上昇した。(正常値は、4ng/mL以下とされている)。医師は、上田さんに市立病院での再検査を勧めた。.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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『しんぶん赤旗』(日曜版、2018年6月17日)が掲載した記事。タイトルは、「前立腺がん 高リスクでも高率に完治」。 |
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赤枠で囲った部分だけが、国立がん研究センターのデータ。その他は、滋賀医科大病院が収集したデータである。「加筆」の分量は、およそ2ページに及ぶ。 |
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