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一宮署の刑事、孤独死した高齢者のカネ94万円盗む ネット競馬と飲み代でサラ金苦に 同様の「警察権力犯罪」全国で続発中

情報提供
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署内で保管中だった孤独死者の遺留金が刑事課の巡査長によって盗まれる事件が起きた愛知県警一宮警察署。

警視庁三鷹署地域課の男性巡査長(発生当時26歳)が、孤独死した高齢男性宅から現金約800万円を盗んだ事件(2023年5月発生、占有離脱物横領罪で懲役1年2月執行猶予3年の刑が確定、懲戒免職)が記憶に新しいが、昨年(2023年)から警察官による同様の犯罪が全国で急増していることがわかった。警察庁への情報公開請求結果によれば、2022年までは全国で年0〜1件とほとんど発覚していなかったが、23年は、開示請求した9月時点ですでに4件発生。その後も千葉、京都、岡山の各県警で発覚し、1年間で7件に。警察の信頼崩壊が進んでいる。

Digest
  • 保管庫から刑事が金を盗む
  • ネット競馬と飲み代で借金苦に
  • 「後輩に毎日誘われた」
  • 退職金で穴埋めしようとした
  • 後輩を巻き込もうとした
  • 「手が震えた」
  • 2023年になって急増
  • 悪徳警官を撃退するには

※警察庁の遺留金品窃取事案報告書、愛知県警の再発防止通達は末尾でPDFダウンロード可

警察署内の保管庫に保管中の遺留金(孤独死宅で発見された故人の現金)を愛知県警の刑事が盗んだ事件につき、公判傍聴取材をもとに報告するとともに、たちの悪い権力犯罪の続発を踏まえ、市民が警察からどのように身を守ればよいか、具体的な撃退・防御策をお伝えする。

保管庫から刑事が金を盗む

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公判で明らかになった犯行動機は「飲み代」「ネット競馬」「サラ金苦」だった(名古屋地裁)。

2023年10月10日、名古屋地裁702号法廷。保釈中の被告人・愛知県警一宮署刑事課の元刑事・小石雄太巡査長(39歳)は一般の入口から入廷した。頭髪を丁寧になでつけ、小太りの体に濃紺の背広をまとっている。

小石元巡査長は一宮署内の金庫から現金を盗んだとして窃盗罪に問われている。その初公判がまもなく開かれようとしていた。

盗んだ金は孤独死した高齢者宅にあった故人の所持金で、警察署に引きあげて保管していた。犯行は昨年2月から3月にかけて実行、昨年6月に県警に逮捕され、8月に懲戒免職処分を受けた。免職になった直後に県警OBが顧問をする会社に再就職している。

これと似た事件は同年5月、東京の警視庁管内で起きている。三鷹署地域課に所属する交番勤務の巡査長が孤独死した高齢者宅から800万円を盗むという手口である。一報を受けて現場に行った巡査長が、刑事課員の到着を待つ間の「空白の時間」を使って犯行に及んだケースだった。これに対して今回は捜査を担う刑事自身が署内に保管していた金を盗んだという点で違う。犯行現場は警察署内だ。より大胆といえる。

やがて公判がはじまり、検察官が起訴事実を読み上げる。

起訴事実1――被告人は、2023年2月14日午後11時ごろ、一宮警察署(愛知県一宮市)刑事課内の変死貴重品保管庫内から14万円を窃取した。

起訴事実2――被告人は、2023年2月15日から3月22日にかけて、複数回にわたり、一宮警察署刑事課内の変死貴重品保管庫内から合計80万円を窃取した。

 背筋を伸ばして証言台に立つ小石元巡査長に向かって須田健嗣裁判官が罪状認否を求める。

「いま検察官が読み上げた起訴事実にまちがいはありませんか」

「まちがいありません」

小石元巡査長は小さな声で答えた。

検察官の冒頭陳述、証拠の説明と手続きがうつる。小石元巡査長は被告人席に戻って腰を下ろし、硬い表情でそれを聞く。一見するとまじめで経験のある中堅刑事の雰囲気がある。だが公判で浮かびあがったのは、「借金」「ギャンブル」「飲食」で首が回らなくなった挙句に犯罪に走った無責任で社会性を欠く中年男の姿だった。

ネット競馬と飲み代で借金苦に

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愛知県警本部。2023年度に起きた警察官による重大犯罪には、港署地域課巡査部長による盗撮・強制わいせつ事件(免職)、機動隊巡査長による強制性交等事件(同)、千草署巡査長による強制わいせつ事件(停職6月)などがある。女性宅に侵入するなどの建造物侵入事件も複数起きている。

小石元巡査長は高校卒業後、愛知県警に就職する。就職した年は公判では明示されていないが、1984年生まれということから推定すると2002年ごろだろう。一宮署刑事課に異動したのはそれから約15年後の2017年だった。強行第1係員となり変死事案を扱うようになる。

後輩と飲み歩くようになったのはこのころからだ。飲酒に加えてネット競馬もするようになる。出費が増え、やがて給料ではまかないきれなくなり、サラ金から借りる。

サラ金の金利は年利十数%とべらぼうに高い。借りては返すということを繰り返すうちに借金が増えるのが普通だ。小石元巡査長も同じ道をたどる。最終的な借金額は約350万円。返済額は月10万円はくだらないと思われる。給料は手取りで月30万円。住宅ローンや食費、生活費を出せばかなり苦しい。

そして、ついには子どもの金に手をつけるまでになる。2023年2月9日、子ども手当が14万円入金された。

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元巡査長は高卒で愛知県警に就職し、警察官として約15年の経験があった。事件当時の階級は巡査長。

事件後、愛知県警本部捜査1課は通達を出して再発防止を呼びかけているが、どの程度の効果があるかは疑問だ。

死者宅の貴重品を警察で保管する際に作成する書類(愛知県警に対する情報公開請求で開示された文書)。

元巡査長はネット競馬で浪費し、サラ金で借金をして自転車操業に陥っていた(JRAのホームページより)。

死者の遺留金を盗む事件を受けて再発防止を呼びかける愛知県警の通達。これを魔除けのように部屋の中の目立つところ、あるいは貴重品のある付近に貼っておくのはどうだろうか。

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