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武田バイオ研強行建設を止められぬ公害調停の欠陥

情報提供
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起工式当日、新研究所の建設を反対するプラカードを掲げる住民
 武田薬品がバイオ動物研究所の建設を公表し、それに反対する住民達は「公害調停」を申請した。だが、調停進行中にも工事は進み、調停中の議論も非公開で報道されないなど、住民よりも企業側に圧倒的な有利な仕組みになっており、生活者の立場から見ると、公害調停は欠陥だらけの法律だ。武田薬品は7月3日、住民を無視して新研究所の起工式を実施した。「生活が第一」を掲げる民主党は、政権をとったらこの欠陥法令を議論の遡上に載せるべきだろう。
Digest
  • 住民を無視して行われた起工式
  • 公害調停の内容は、調停が終わるまで守秘義務がある!?
  • 公害調停の問題点(1)守秘義務
  • 公害調停の問題点(2)調停中にも工事が進む
  • 公害調停の問題点(3)申請人のうち1人でも賛成すると調停は成立してしまう。
  • 公害調停の問題点(4)内閣府の中に公害等調整委員会がある
  • 先進国の中で日本だけがない環境権

住民を無視して行われた起工式

 武田薬品が神奈川県藤沢市に東洋一のバイオ動物実験研究所を建設を予定している。それに反対する住民達は公害調停を申請したが、国に出した公害調停は県の調停委員会に廻された。

 住民達が4月に公害調停の申請を出してから、だいぶ日数が経った。住民達は早期の話し合いを希望したが、武田薬品の意向で第一回目の調停は7月の27日となった。住民達は武田薬品が調停に必要なデータ資料などを揃えている為に日数がかかっているのだろうと思っていた矢先、武田薬品は公害調停にて審議を問う前の7月3日に新研究所の起工式を断行した。

 調停の日を延期したのは、6月24日に武田薬品の株主総会が行われた為であったのだ。

 この住民無視の誠意を欠いた企業行動に、藤沢市を中心とした住民達は「企業倫理を問う」と怒り、起工式の朝から新研究所建設反対のデモンストレーションを現場にて行った。

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住民の反対を無視して起工式を行った武田薬品新バイオ研究所
 起工式当日、午前10時前には工事中の武田薬品新研究所前で、反対住民40名ほどが建設反対のプラカードを掲げ、行き行く人達に新研究所の安全性を問うビラを配った。

公害調停の内容は、調停が終わるまで守秘義務がある!?

 デモに参加した僕は、住民から第一回目の武田薬品問題に対する公害調停が7月27日に行われるのを聞き、調停の途中経過を聞こうと、この調停を担当する神奈川県公害審査会事務局大気水質課環境調整班に電話をしてみた。

———27日に行われた武田薬品と住民達による第一回目の公害調停はどうなったのでしょうか?

大気水質課「公害調停につきましては公害紛争処理法の37条によりまして守秘義務があります。ですので当事者以外の方には、調停の内容や進行過程を申し上げることはできません」

———私も公害の被害を受ける可能性のある住民なのですが?

大気水質課「調停の場合、当事者というのは申請を出している人、つまり申請者のみと想定されていますので、住民の方にも調停についてお話することはできません」

———でも住民達は調停がどのように進んでいるか心配です。
大気水質課「調停は裁判と違いまして、その過程は調停が終わるまで公表することはできません」

 法律で決められた守秘義務。なぜ、このような法律があるのだろうか?武田薬品問題に限らず、多くの公害問題は影響を受ける住民達に充分なアナウンスメントがされない。新研究所建設予定地にほど近い記者の知人である藤沢市民も、武田薬品がP3レベルの研究所を建設する事を知らなかった。

 市民が自分達の住む近くに、公害の恐れのある研究所が建設されていることも知らず、尚かつ、その建設に対して公害調停に申請していることが地方新聞にさえ報道されていない。守秘義務のため途中経過も報道されない。その間、公害の恐れのある生物実験研究所は建設をストップせず、工事はドンドン進められて行く。これは、いったいどういうことなのだろうか?

 そして、一年近くかかる調停の過程を我々住民は知ることが出来ない。裁判でさえ公開なのに、多くの住民に被害を与えるかもしれない問題に対して守秘義務があるなんておかしいのではないか。調停が終わった頃には、研究所の建設は終わっているなんてこともある。そんな原則や制度を変えるべきではないのか。

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建設反対デモには40人を超える住民が参加した。
 長野新幹線などの公害調停を経験し、公害紛争処理法に詳しいジャーナリスト、岩田薫氏に話を聞いた。岩田氏は『住民運動必勝マニュアル』(光文社新書)などの著書を持つこの分野の専門家である。

公害調停の問題点(1)守秘義務

 岩田氏の話によると、工事の差し止めを求める公害調停は、手数料3800円で起こせるので、公害を心配する市民にとっては起こしやすい制度である。(損害賠償を求める場合は、その額が求める事項の価格になる)

 通常、住民が公害調停を申請すると、公害審査会に調停委員会が組織され、調停委員3人が指名され、申請人と被申請人を呼んで、審査・調整を行い、調停委員会の権限で、両者の合意を目指す。今回の武田の場合

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武田薬品の新研究所建設現場周辺に張られた建設反対のポスター

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