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隔離部屋のトヨタ系社員は語る 通勤車が事故寸前も実態調査せず

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入社以来7年以上、いやがらせを受けているという黒崎真人(仮名)さん。背景の緑色の建物内に設置された隔離部屋に“収容”された。
 トヨタ系列の自動車部品メーカー・ファインシンターの社員(37歳)は、障害者の賃金が不当に削られていることを労基署に報告するなど、会社側の不正を指摘し、改善させたことがある。職場での差別やイジメにも抗議していた。だが、もの言う社員に対する会社側の嫌がらせはエスカレートした。2007年6月には、会社の駐車場内で通勤車の4本のタイヤすべて同じ位置にビスやガラス破片が刺さる事件が起きたが、会社は目撃者探しの貼り紙をしただけ。上司3人から「もう何も言うな、組織にさからうな」と言われ、ついには特別につくられた隔離部屋に“収容”されてしまった。
Digest
  • 車のタイヤに突き刺された3本のビス
  • 不正指摘し、いじめがエスカレート
  • 深夜の工場で2時間半の吊るし上げ
  • QC活動からも残業からも排除
  • 700℃の炉に登る危険な作業
  • 「もう何も言うな、組織に逆らうな」と上司

車のタイヤに突き刺された3本のビス

トヨタ系自動車部品製造販売のファインシンター(愛知県春日井市)。その工場で働く黒崎真人さん(仮名・37歳)は、いつものように交替勤務の作業を終えて深夜0時を過ぎ、自動車で帰宅しようとしていた。

会社内の駐車場を出て門の守衛前を通るとき、カチンカチンという妙な音が気になったが、そのまま走行した。実は、その前日も似たような妙な音がしていた。そのまま走っていると、後輪が滑るような妙な動きをするようになった。

 国道19号線を走行中に異変を感じ始め、41号線に入ってから、ずるずっと後輪がすべり、あやうく対向車に衝突しそうになった。ヒヤっとしたが、もう深夜だ。その日は眠りに就いたという。

会社内駐車場や構内を走行中もカチンカチンと妙な音が二日続けて聞こえていたし、昨晩は車がおかしな動きをして、本当に危なかった。(どう考えてもおかしい・・)。そう思って黒崎さんは調べてみると、一本のタイヤの真ん中にはガラス(プラスチックにも似た素材)の破片が突き刺さり、さらに一本のタイヤに36ミリのビスが一本、残り2本のタイヤには40ミリのビスが2本刺さっていた。しかも、四輪すべての中央のほぼ同じ位置にしっかりと突き刺さっている。(写真参照)

「後日調べてみるとどのビスも、会社の設備室の備品として置かれているものでした。工場に出勤したときに敷地内の駐車場に車を止め、休み時間に別の工場敷地内の駐車場に移動していたのです。それから真っ直ぐ家に帰りました。4本のタイヤ全部のほぼ同じ位置にガラスやビスが刺さっているのは、どう考えてもおかしいです」

不安に思った黒崎さんは地元の春日井警察署に被害の届を出した。2007年6月9日のことだった。

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(上)左端のタイヤにはガラス破片が刺さり、右3本にはビス(ネジ)が刺さっていた。 (下)タイヤの真ん中に溝に突き刺さっていた・・・。

不正指摘し、いじめがエスカレート

実は、この黒崎真人さんは、「トヨタ系のファインシンター、最低賃金以下で障害者を違法雇用」(MyNewsJapan 2009年12月18日掲載)の記事に示したとおり、障害者の賃金が不当に削られていることを労基署に報告し、改善させた実績を持つ人物だ。

この事件は、障害を持つ山崎哲男さん(仮名・20歳)を採用するにあたって、最低賃金減額制度による正規の手続きを得ないで最低賃金以下で働かせたもの。黒崎さんは、山崎さんの両親らと一緒に協力して改善させたものである。改善といっても、違法に賃金を削っていたものを、労基署に届けて合法的になったものであり、最低賃金以下で働かせていることには変わりない。

しかし、彼が気付かなければ、最低限の是正すら覚束なかっただろう。このような行動をとる社員だから、会社からの風当たりは強い。

また、障害者問題の発覚と前後して、黒崎さんは全トヨタ労働組合(ATU)のメンバーであることを社内で公言したことも、風当たりが強くなったことの背景にある。

トヨタ自動車本体をはじめグループ各社の労働組合は、労使協調型(はっきり言えば御用組合)だ。このような組合と違い、ATU全トヨタ労働組合は、正社員・非正社員の区別なく、また元請け下請けや国籍の区別なく労働者の生活を守る活動をしている。そのため会社からはよく思われない。

だが、風当たりが強いというレベルではなく特定組合員に対する攻撃ではないかという疑問を持ったため、黒崎氏本人にこれまでの経緯を聞いてみることにした。

「学校卒業後、自営業の親戚のところで働いたり、住宅関連の企業で働いたこともあります。結婚して家を購入し住宅ローンもあり、2人の子供の将来の教育費などを考えて、大変でも3交替勤務で深夜勤務も自宅から通える給料の高い転職先を探していたのです。

2002年の11月中旬に、職安でいまの会社(ファインシンター)を見つけたのです。工業高校卒以上が条件だったので、応募条件に満たない部分があるが良いかとその場で職安の人に会社に電話してもらうと、『交替勤務でやってもらえるならいいですよ。3交替で勤務をお願いすることになるかもしれないですが、いいですか』ということだったので、面接をお願いしました」

さっそく面接となり、「3交代勤務でお願いしたいのですが、よろしいですね」と担当面接員に確認され、02年12月に採用された。

深夜の工場で2時間半の吊るし上げ

㈱ファインシンターは、資本金22億300万円、従業員1000人強で、主要株主はトヨタ自動車(20・8%)。主要製品の約86%が自動車用部品である。ここでの黒崎さんの仕事はどのようなものだったのか。

「私の仕事は、粉末の金属粉を成型機で圧縮し、圧粉体といわれる素材をカーボントレーに乗せて、それをメッシュベルトに載せて高温の炉で焼く作業です。トヨタ車のオートマチック(ミッション)クラッチ、サスペンションの部品です。

最初の試用期間のときから大変でした。私の配属された係では、ある古参社員の班長が係内では所属の係長より発言権がありました。その班長は自分が『そうだろう?』と言って自分の意見や考えを周囲の者に同調させるようなところがある人です。

話を聞いている時『ハイ』と口に出して言わずに私はうなずいて聞いたりしていました。

すると一方的に『返事がない』『聞いてない』ということにされてしまい、ぎくしゃくし始めました」

黒崎さんは、自分の考えを述べてテキパキと仕事を進める感じ。直接会ってみると、元気のいい職人タイプだ。実際に職場や労働組合でも自分の考えを述べ、「こういうやり方がいいのでは」と提案することもしばしばだったという。

つまり、「もの言う社員」が社風に合わなかったということだろう。ただ、それならば、どの会社でも起きそうなことだ。ところが、黒崎さんが経験したことは、決して普通ではない。

「生意気だと思われた社員には徹底して嫌がらせするようなところがありました。中途採用で入ってきて嫌がらせを受けて辞めた人も多々います

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不安に思った黒崎さんは、春日井警察署に被害届を提出した。タイヤに刺さっていたものを提出したときの押収品目録交付書。

(上)ATU(全トヨタ労働組合)が団体交渉のために会社に送った申し入れ文書の一部。後半のV「快適な職場環境つくりについて」の項目で高温炉作業の現状の説明を求めている。しかし(下)に掲載した会社の回答文書(一部)ではV-①「解答の限りではありません」とされている。

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I112010/02/17 23:34

殺人だな。

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5994掲示板より2011/04/10 18:48
黒崎真人2011/03/19 19:23
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以下1点、より正確を期すため、訂正いたしました(林)2010/2/14。
×国道19号線をそれ左折しようとしたとき、ずるずっと後輪がすべり、あやうく対向車に衝突しそうになった。
→国道19号線を走行中に異変を感じ始め、41号線に入ってから、ずるずっと後輪がすべり、あやうく対向車に衝突しそうになった。
本文:全約7,100字のうち約4,200字が
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