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日本でトクホのカルピス「アミール」血圧低減効果、EUでは却下

情報提供
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ヨーロッパでは血圧降下の効能表示が認められないカルピスの「アミール」
 エコナ問題をきっかけに、消費者庁で健康食品の表示に関する検討が進んでいる。その4回目の会議で、米欧の海外事例が報告された。基本的にメーカーに自由な表示を認めるアメリカに対して、EUでは食品のヘルスクレーム(健康強調表示)を公的機関が審査・許可する制度を開始している。4千種以上の表示について審査中で、随時結果を公表中だが、現在のところ申請の7割が却下されている。その中に、日本ではカルピスが申請し、トクホの許可を受けた乳酸菌飲料「アミールS」の成分も含まれていることが分かった。
Digest
  • 食品への健康強調表示4000種類を審査中のEU
  • 日本のトクホでも却下された例も
  • トクホ許可後の大規模試験で効果なし
  • 医薬品より効果があるように宣伝
  • 市販後の追跡調査の必要性
  • 最初期のトクホは審査が甘かった?
  • 健康食品の国民の健康への影響を検証すべき

花王のエコナ問題をきっかけに健康食品の制度に関する検討会が消費者庁で行なわれている。トクホを含めた健康食品の安全性の検証のあり方が主な議題のはずだったが、はじまってみると、効能を含めた表示規制の是非が、主な議題となっている。

食品への健康強調表示4000種類を審査中のEU

2月4日に開かれた4回目の検討会では、アメリカとEU(欧州連合)の例が紹介された。

アメリカでは、ダイエタリーサプリメントという制度が、基本的にサプリメントメーカーが自由に効能を表示してよいという制度になっている。自由の国にふさわしく、メーカー団体が国を訴えて勝訴し、表示できる範囲を広げてきた経過がある。

極端なところまで行き着いた状態で、ほとんど証拠が無いような効能でも、「国は表示を支持する科学的根拠はほとんどないと結論づけた」という但し書きをつければ、表示できる。こうした表示が、消費者はもちろんのことメーカーにとってもプラスになるのか、はなはだ疑問だが・・・。

一方、EUでは食品や食品に含まれる成分の効能の表示(健康強調表示)に関して科学的根拠を評価して公的機関が許可する、という制度を導入しようとしている。許可された表示は、サプリメントにかかわらず食品全体に表示しても良い、という仕組みだ。

EUの健康強調表示の内容は4種類に分けられており
1)「一般に認められた科学的根拠にもとづく表示」
2)「新規な科学的証拠に基づく表示」
3)「疾病リスクの低減に関する表示」(ガンなど病気になるリスクが減るという表示)
4)「子どもの発達及び健康に関する表示」(子どもの骨の成長に効果があるなど、他の効能が大人対象なのに対して子どもへの効能に特化した表示)

2)~4)の表示に関しては、メーカーが提出したデータをもとに個別に評価され、許可される仕組みなのに対して、(1)の「一般に認められた科学的評価」は、許可リストに収載されるとそれ以降は市販前の届出は必要なく自由に表示できることになる。その分、科学的根拠のハードルは高くなる。

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EUの評価で健康強調表示が認められた成分と却下された成分。第4回検討会資料2日本と海外の比較(鬼武委員)より

4000件以上の表示案の申請がされており、逐次評価結果が公表されている最中だ。現在のところ、94件の評価結果が発表されているが、許可された例は29件と、30%程度に過ぎない。その多くはビタミンやミネラルなど、すでに食品の栄養素として働きが分かっているものが大半だ。

一方、却下された65件の成分の中には、日本でもトクホへの申請を却下されたヒアルロン酸や、他にもグルコサミン、サメ軟骨など日本でも盛んに販売されている健康食品の成分も含まれている。これらの成分は日本でも効能の表示は認められていないため、使用者の体験談など、あいまいな表示で販売されている。

日本のトクホでも却下された例も

ただ、EUで却下された事例のなかには、日本では特定保健用食品(トクホ)として認められた成分も含まれていることが分かった。その一つが、カルピスが1999年11月にトクホの許可を受けた「アミールS」という乳酸菌飲料だ。

カルピスの原料として利用されてきた乳酸菌Lactobacillus helveticus(ラクトバチルス・ヘルベティカス)で発酵させた発酵乳の中に含まれるラクトトリペプチド(特に2種類のVal-Pro-Pro(VPP)およびIle-Pro-Pro (IPP))に、血圧を降下させる効能があるというものだ。

それがEUでは、2009年7月に公表された審査では「その成分と『正常な血圧を維持する』という効能の因果関係を証明する証拠としては不十分」という結論を出されてしまったのだ。

その点については、4回目の検討会で、委員の1人である日本生活協同組合連合会組織推進本部安全政策推進室長の鬼武一夫氏によって報告された。

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アミールの有効成分である「ラクトトリペプチド」の評価概要 第4回検討会資料2日本と海外の比較(鬼武委員)より
その時に提出された資料がこれ(右記)だ。

 EUの食品に関するリスク評価機関である欧州食品安全機関(EFSA)は、
 「一部の小規模の研究において、ラクトトリペプチドの投与により収縮期血圧が有意に低下したことが観察されているが、これらの結果は大規模な介在試験によって裏づけされていない。パネルは、提出された証拠は、トリペプチドのVPPとIPPの摂取と正常な血圧の維持との間の因果関係を確立するには不十分である」
と結論づけている。

鬼武氏は、消費者庁の検討会の中でこの事例を指摘し「日本ではトクホとして認められているものの、EUではヘルスクレームとして認められていないものがいくつかあります。何が違うのかということを、ぜひ検証すべきではないかと思います」と意見を述べた。

これは非常な重要な指摘である。EUが現在審査中である4000種類の健康強調表示の中には、アミールS以外にも、エコナやヘルシアなど他のトクホとして認められた成分が含まれているからだ

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カルピス社のホームページでのアミールの効能の宣伝。医薬品より血圧降下作用が強い。

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