トヨタ総行動に集まった人々(2月11日)。非正規社員の待遇改善や下請けいじめをやめろというアピールが多かった。
|
大量リコール問題で揺れるトヨタ自動車は、昨年暮れに下請企業に対し納入価格を3割引き下げるように要請、ニュースとなった。こうした中、従業員の待遇改善や下請けイジメなどに抗議する「トヨタ総行動実行委員会」が800社にアンケートを実施しようとしたところ、ファクスや郵便が届かず、前回(2004年)から100社以上が消滅していることが分かった。集計結果ではピーク時に比べ発注量が4割以上減った会社が7割にのぼり、「すでに過去1年間で単価引き下げがあった」と答えた企業も約6割を占めた。リコール問題や3割カットで揺れる地元の声を聞いた。
【Digest】
◇3割カットに非難集中
◇日系ブラジル人、危篤の母に会うのも至難の業
◇トヨタ式自動車優先デモ行進
◇アンケート対象100社が消滅
◇トヨタ100万・一次下請け85万・二次60万・三次40万・・
◇3割カットに非難集中
昨年(09年)12月23日に発表されたトヨタ自動車による部品価格3割引き下げは多くの関連会社に衝撃を与えており、「このままではつぶれる」という声が聞こえてくる。
ところが、アメリカでの大量リコール問題がメディアに大きく取り上げられたが、肝心のトヨタのおひざ元の生産現場の声は、相変わらずほとんど報道されていない。
|
ピーク時に比べた仕事量の変化。
下請け企業では平均で5割程度、仕事量が減っている。(以下、一連のグラフは、トヨタ総行動実行委員会に加盟している「愛労連」提供) |
|
そこで、2月11日の「トヨタ総行動」に集まる地元の人びとに接してみたいと、愛知県豊田市に向かった。「トヨタ総行動」は、もともと地元(愛知県西三河地域)の労組関係者が始めたローカルなものだったが、年々盛んになり、県外からの参加も増えてここ数年注目されている。
いくつもの団体が集まる実行委員会の主催となっており、今回で31回目を迎えた。この行動は一部メディアに報道されたもののベタ記事扱いで、現場の雰囲気・生産現場の声はほとんどわからないので、改めて当日の様子を再現してみたい。
一日中氷雨の降り続いた2月11日の建国記念の日。集会開始15分前に豊田市内の公園に到着すると、まだ人影がまばらだった。祝日とはいっても、トヨタ関連会社は「トヨタ・カレンダー」に基づいて操業するため、休みではない。MyNewsJapanの取材に協力してくれたトヨタ関係者のなかには「世の中は休日ですが、会社は操業しているので当日は参加できない」という人もいた。
しかも冬の雨だ。人が集まるのか、と思っていたら、開始6~7分前から続々と人が集まり始め、「臨時工・下請けイジメ トヨタは世界一」と書いたのぼりや様々なプラカードを掲げた人など、およそ千人に膨れ上がった。
午後1時、「みなさん、この中にプリウスに乗っている人いますか? いたら傘を上にあげてみてください」と司会者からの声で集会は始まった。傘や手を挙げる人はほとんどいない。
実行委員会を代表して榑松佐一(くれまつ・さいち)愛労連議長が登壇した。
「1年で15%、3年で30%も納入額を下げろというのは無謀だ。以前からリコール問題は発生しており、三菱や日産がリコール台数を減らすなかで、トヨタはすでに190万台(2004年)にもなっていた。
その一方で下請けに対するコストを切り下げてトヨタは2兆円もの利益をあげていた。そして経済情勢悪化で、1万人だった期間工を千人にまで減らしている。利益第一主義で30%カットは絶対許せない。
私は20年間、トヨタの前でビラを配り続けてきた。それに対して会社は、ごみ箱を用意して捨て続けてきた。批判に耳を傾けずに間違いを正さない体質に問題があるのではないか。莫大な内部留保(13兆円)を賃上げと下請け単価引き上げに回すべきだ」
◇13兆円の内部留保、3600億円の株主配当
さらに労組関係者の発言が続く。
「エコカー減税などを利用し、トヨタはプリウスを製造販売してきた。このような恩恵を受ける一方で派遣切り、下請けのコスト削減をした。しかも、悪化する経済情勢でも株主に高額配当を続け、労働者のためには努力せずに雇用確保もしない。まずは、下請け単価切り下げをやめることが安全性確保のための第一歩ではないか」
テレビや新聞では、大量リコール問題を技術的視点や組織、あるいは対応の遅れなどの視点から批判するコメントが圧倒的である。しかし、実際にトヨタ車を製造している人たちからは、安全性の根本は下請け単価切り下げなど、端的にいえば下請けいじめが原因ではないかという指摘が多く、会場に詰めかけた人びとからも、部品納入価格3割カットに怒りの矛先がむけられているようである。
トヨタ自動車本体で働く労働者も発言した。
「いま、トヨタの外でも中でも不満が渦巻いている。そしてついにトヨタ内部でも期間工が立ちあがった。13兆円の内部留保、3600億円の株式配当があるじゃないか。たとえばトヨタ社員全員の給料を1万円上げても約6億5千万円にしかならないから、できるはずだ」
この労働者の言うトヨタ自動車本体の「期間工が立ちあがった」という件に関しては今後調査し報告していきたい。まずは当日の集会で発言した、再雇用を拒否された期間工(40歳)の話を聞こう。
「トヨタに入社したのは2007年12月。『トヨタ期間従業員募集 正規社員登用あり 昨年実績943名』という新聞広告を見て応募し、採用されました。
正社員になろうと頑張って無遅刻無欠勤で2年間働き、カイゼン提案も積極的に出してきました。6カ月、3カ月、1年と更新を繰り返し、昨年12月で雇い止めになりました。その理由を聞くと、無遅刻無欠勤で2年間働いてきた私にたいして『理由を示す必要がない』という回答でした。
私が働いている堤工場は、プリウスを製造していて残業や休日出勤もありフル稼働しています。ですから同じ期間工2人が契約延長している。それは、モノを言う私をけむたがったとしか思えません。
毎日出勤して『働かせて下さい』とお願いしても工場内に入れてくれません。トヨタが引き金となって、雇い止めや派遣切りが日本全国に広まっている・・」
◇日系ブラジル人、危篤の母に会うのも至難の業
一人でも加入できる名古屋ふれあいユニオンの酒井徹委員長(26歳)による話はさらに悲惨だ。
「これまで名古屋ふれあいユニオンは、派遣切りに対して闘い、組合員の直接雇用を勝ち取った例もあります。また、ユニオンとして扱ったケースで、研修生が正社員の10倍もの家賃を支払わされていた事例もあります。(筆者注:トヨタ自動車二次下請の「ツカモト」で、ベトナム人研修生4人を田んぼの中の築34年アパートの一部屋に押し込み、一部屋月17万円の家賃を取っていた)。
いま訴えたいのは、デンソーの子会社アンデン(資本金10億円・従業員約1400人)で働く日系ブラジル人のことです。彼は8年間まじめに働き、有給休暇も取っていませんでした。その彼に故郷のお母さんが危篤という知らせが入り、有給休暇をとって国に帰ろうとしたのです。未消化の有給休暇が40日間ありました。
ところが請負会社の退職規定には『帰国した時』と入っているのです。ですから、もし危篤のお母さんのところに駆けつけて日本に帰ってきても解雇だというのです。8年間まじめに働き続けている人が危篤の母親に会うために有給休暇をつかったら解雇というのは、あまりにもひどい.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
|
業種別の仕事量変化。
「一般機械」では、まったく仕事がないと答えた業者もある。 |
|
|
単価の切り下げ状況。
左:「過去1年に単価引き下げがあった」と答えた下請け業者は70社中47社もある。
右:企業規模別の状況。「前回より」と表記されているのは「過去1年で」という意味。すでに40%以上も単価を引き下げられたところもある。
|
|
