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未払い賃金なし「確認書」を強いる東建コーポレーションの「逆らえない」社風

情報提供
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東建コーポレーション倉敷支店。農地や休閑地の地主に借金をさせてアパートを建てさせる「土地活用ビジネス」。業界大手・東建の営業マンたちは厳しいノルマにさらされ、長時間のサービス残業に耐えてきたという。
 私の未払い賃金はゼロ――。「賃貸アパート経営」業界大手・東建コーポレーション株式会社(名古屋市、左右田稔代表取締役社長、東証一部上場)が、社員に対して「未払い残業代はありません」という趣旨の「確認書」を書かせていたことがわかった。サービス残業をめぐる労基署の是正勧告直後のことで、組織的な未払い賃金隠しの疑いが浮上している。現在岡山地裁と福岡地裁で集団訴訟を戦う社員・元社員は35人。全日本柔道連盟公式スポンサーでもある同社の内情について社員らはいう。「逆らうと何をされるかわからない会社です」
Digest
  • 「これ書かないとどうなっても知らんよ」
  • 「500人の前で吊るし上げ」
  • 残業代請求すると「エエことにならんで…」
  • 「労組結成」で苛烈さ増すパワハラ
  • 未払い賃金ゼロ工作の裏マニュアル
  • 東建への質問状 
◇突然招集して“未払い賃金を放棄せよ”
 「2008年3月27日の夜でした。外回りをしていたら、支店で会議をやるので営業マン全員集まるよう電話で連絡が入りました。何か大事なことかな、と思って支店にあがったんです」

 そう言って振り返るのは岡山県内にある東建コーポレーションの某支店で元「建築営業」社員として働いていた男性Aさん(41)だ。建築営業とは、農家など土地の所有者のところを足しげく回り、「アパート・マンションを建てませんか」と契約を持ちかける仕事である。現職時代Aさんは、朝から晩まで土日もなく働いた。月の残業時間は100時間から150時間を軽く越す。ほとんどがサービス残業だった。

 全員会議をやるという電話をAさんが受けたのはこの日の午後9時ごろ。担当する地主のところを回っている最中だった。営業職にとって夜は忙しい。その時間帯に営業社員全員で会議をやるというのは珍しかった。「何か大事なことか」と感じたのはそれゆえである。

 会議の内容について、電話連絡では何も言っていなかった。しかし、Aさんには心あたりがあった。

 3ヶ月ほど前の2007年12月、名古屋市にある緑支店が労基法違反(賃金未払い)容疑で労働基準監督署の立ち入り調査を受けた。さらに、未払い賃金を払うよう会社に対して是正勧告が出された。結果、同支店では一部ながら未払い賃金が支払われた。

 この「緑支店事件」は噂として岡山方面にも伝わっていた。

 Aさんによれば、東建にはいくら残業しても痕跡を残さない仕組みがあった。タイムカードも昔はあったが、出退勤の時刻は「午前9時―午後7時」と手で書き込んだ。どんなに帰宅が遅くても勤務終了時刻は午後7時だった。たとえ本当の時間を書いたとしても、支店長が承認してくれないのだ。

 タイムカードはパソコン管理に変わった。そのうち勤務終了時間が午後7時から8時に変わったものの、やはり仕事を終えた実際の時間より大幅に早い時刻を記録することに違いはなかった。

 こういう状況を苦々しく思っていたAさんは、会議の報に期待を抱いた。

 「ひょっとして残業代を払うという話だろうか…」

 支店に集まった営業マンはAさんを含めて総勢約20人。一同を前に支店長は手短に要件の説明をはじめた。

 「未払いの残業代があるのか、ないのか、みんなに聞かないといけない…」

 予想どおりだった。残業代の話だ。支店長の説明に引き続き、別室で個人面談がはじまる。話は短かそうだった。ひとりあたり1~2分程度で、次々に社員が入っては出ていく。何人目かにAさんは部屋に入った。支店長と向き合って座る。支店長は机に一枚の紙を出すと言った。

 「こういう確認書があるんだが…(未払い)残業代があるのか、ないのか…。ないんだったら書いてくれ」

 「確認書」なる文書には次のように書かれていた。

  東建コーポレーション株式会社
  代表取締役 左右田稔殿

          確 認 書

 私は、平成17年9月26日から平成20年2月25日までの間において、勤務していました期間の未払い賃金について調べましたが、会社から私に支払われる未払の賃金はないことを確認しました。――

 要するに、払うべきカネはない、という書面にサインしろということだった。Aさんはがっかりした。

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東建コーポレーションが営業職社員に署名させた「確認書」。未払い残業代はない、といった趣旨のことが書かれている。署名せざるを得ない空気だったと社員はいう。

「これ書かないとどうなっても知らんよ」

 「確認書」が是正勧告に対する策であることは容易に想像できる

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「確認書」の撤回を求め、未払い残業代の請求をした結果、隔離されたり社用車の使用を禁止させらるなどのパワハラを受けたという営業社員のBさん。現在、東建を相手どって訴訟を起こしている。

未払い残業代ゼロの「確認書」を社員からとるための管理職用”裏マニュアル”。〈社員自らが「未払い賃金がない」となるよう働きかける〉などと、できるだけカネを払わないですむための手順がかかれている。

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読者コメント

そのとーり2019/03/08 21:49
正義の鉄槌2019/03/08 21:47
東建マン2019/03/08 21:46
あおい2010/05/12 17:25
事情通2010/05/12 16:29
土地活用2010/05/11 18:37
2010/05/11 08:55
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記者からの追加情報

 岡山地裁で係争中の東建コーポレーション未払い残業代請求集団訴訟(原告11人・水谷賢弁護団長)の次回弁論は、6月3日に同地裁で開かれる予定。またこれに先立つ5月29日午後2時からは、岡山市勤労者福祉会館で、武富士の残業代不払い事件を戦った経験を持つ河村学弁護士を招き、岡山・福岡両弁護団も参加して支援集会が開かれる。
本文:全約7,700字のうち約5,800字が
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