新宿のどら焼き屋でインタビューに応じる濱田正晴さん。
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オリンパス社員の濱田正晴さんは、コンプライアンス室への内部通報をきっかけに、15年の営業職キャリアを無視した配転を強いられた。営業販促の管理職候補として推薦を受けたこともあったが、50歳を目前に新入社員と同じところからキャリアの積み直しとなり、不可能な目標を設定され、出社ゼロの社員の半分という低評価まで下された。これまでのキャリアを奪われた不利益は大きいが、配転無効を求めた訴訟で裁判所は「配転による不利益はわずか」と判断。濱田さんは、「報復に利用されるような不完全な成果主義は問題だ」と主張する。(同社の各種人事制度類はPDFダウンロード可)
【Digest】
◇能力成果主義なのに「全欠者の半分」という評価
◇業務目標は「山本担当部長の知識レベルになること」
◇「能力成果主義が報復の道具として利用された」
◇管理職にこそ内部通報の奨励を
◇法律の素人でも通報できるような法改正を
光学機器メーカー、オリンパス(東京都新宿区)に勤める濱田正晴さん(49)は2007年6月、当時の上司が、取引先の機密情報を知る社員を引き抜こうとしていることを知り、同社の手続きに従ってコンプライアンス室に内部通報した。ところが同室長は、濱田さんが通報者であることを上司らや人事部長に漏洩。その後まもなく、15年の営業職キャリアとは異なる「最先端技術探索研究職」というポジションへの配転を強いられた。
濱田さんは、配転命令は通報者の不利益な取り扱いを禁じた公益通報者保護法に違反するなどとして、08年2月、配転命令の無効確認と精神的被害などに対する慰謝料1000万円の支払いを求めて、会社と当時の上司2名を東京地裁(田中一隆裁判官)に提訴した。
しかし2010年1月、通報は「公益通報に当たらない」と判断され完全敗訴。公益通報者保護法による司法判断は、社内コンプライアンス室への通報とは、会社側の行為がどのような法令に違反するおそれがあるか、誰のどのような利益を損なうのかを明らかすることを、通報者に求める内容だった。(裁判所の判断や濱田さんの経歴については前回の記事(オリンパス公益通報“対象外”とされた社員が語る「通報には弁護士レベルの知識が必要」)をご覧ください)
また、東京地裁は、配転によって濱田さんが受けた不利益は、「賞与減額分の約24万円など不利益はわずかなもの」と認定。しかし、オリンパスは1998(平成10)年度に年齢給を完全廃止し、職能給に一本化。労使協定による労働条件へと、変更している。成果主義に一本化された評価制度下で、15年のキャリアと無関係な部署に配転させられることが、本当にわずかな損失と言えるのか。
濱田さんは「成果主義には、恣意的な評価を可能にする問題があることは、社内でもこれまでに指摘されていた」「内部通報や内部告発を萎縮させる道具となり得る制度」と主張する。また、オリンパスが自社の人事制度や運用ルールを否定した人事考課をおこなうことで、内部通報者に対して陰湿な報復をしている、とも訴えた。
現在は東京高裁で控訴審の審理が進められています。次回期日は7月12日(月)13時20分から東京高裁820号法廷でおこなわれます。閉廷後、原告弁護団による傍聴者への説明も予定されています。濱田さんにお聞きたいことがありましたら、ご連絡ください、追加取材いたします。※ただし弊社会員に限る。連絡先:info@mynewsjapan.com |
◇「全欠者の半分」という評価
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濱田さんの一次評価の推移。配転後は、全欠者の半分程度の評価を下されている。管理職への推薦書も。 |
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オリンパスの社員は、会社が定めた職務ごとの能力開発ガイドラインに従って、S(スタッフ)、P(プロフェッショナル)、E(エクゼクティブ)の3つの資格ゾーンに区分されている.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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人事制度に関するオリンパスの社内パンフレットの一部。昇給や賞与の仕組みが記載されている。 |
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04年9月にオリンパス人事部が作成した「人事考課者研修テキスト」の一部。P資格者は成果と能力のみで評価されることや、全欠者への対応ルールが記載された部分。 |
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