読売が名誉毀損で訴えてきた『週刊新潮』(09年6月11日)の記事。請求額は約5500万円と高額だ。
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『週刊新潮』に掲載された「押し紙」、つまり新聞の部数偽装を調査報道した記事が名誉毀損にあたるとして、読売が2009年7月に執筆者と発行元を訴えた裁判が、クライマックスに近づいている。執筆者の黒薮哲哉氏と新潮社に対して計約5500万円の損害賠償支払いを求めたものだ。読売は「押し紙」の存在を全面的に否定しているが、新潮社側は、かなりの証拠を提出している。読売が「押し紙」を否定する根拠はいったい何なのか。なぜ1千万部の部数を有していながら、紙上で『週刊新潮』の報道を検証せずに高額訴訟を吹っかけるのか。当事者である黒薮氏が報告する。
【Digest】
◇部数至上主義と「押し紙」
◇「押し紙」は一切存在しない?
◇「残紙」という揚げ足取り
◇「押し紙」率50%のYCも
◇編集部による調査報道
◇コンテナ型のトラックも活躍
◇読売はみずから実配部数の公表を
読売新聞社(東京・大阪・西部の3社)が1年前に新潮社とわたしに対して起こした名誉毀損裁判は、新しい段階に入る。まもなく2人の編集者とわたしの筆による計3通の陳述書が提出され、早ければ秋にも証拠調べが行われる見通しだ。
この裁判は『週刊新潮』(09年6月11日)に掲載されたわたしの署名記事「『新聞業界』最大のタブー『押し紙』を斬る!」に対して、読売が総額で約5500万円の支払いと、謝罪広告の掲載を求めたものである。読売が作文した謝罪広告の全文は、はからずも読売の主張を的確に表している。
ただ、広告文そのものはだらだとして、簡潔さに欠けた箸にも棒にもかからない駄文である。「その発行する『週刊新潮』」といったおかしな表現も見受けられる。
このような文章に司法をバックに署名を求めること自体、言論表現の自由に対する挑戦にほかならない。
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黒薮哲哉は、貴社らが発行する「読売新聞」のうち約30~40%は「押し紙」であって、実際には読者に配達されず、これによって貴社らは年間約360億円もの不正な収入を得たものであり、これ以外にも広告収入を不正に取得したとの記述を含む記事を執筆し、
新潮社は、この記事を、その発行する『週刊新潮』2009年6月11日号に「『新聞業界』最大のタブー『押し紙』を斬る!」との見出しで掲載しましたが、同記事中で述べられた上記記述は全く事実の裏づけのないものであり、この記述は明らかに誤りでした。
上記のような誤まった記事を掲載し、貴社らの名誉を棄損したことについては、誠に申し訳ありません。
ここに上記記事を取り消すとともに、貴社らに対して喪心よりお詫び申し上げます。
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裁判所に提出した「押し紙」(読売は、「残紙」と呼んでいる)の証拠。読売の販売会社ユースの店舗・YC三鷹西部から、「押し紙」を回収する場面。コンテナ型のトラックが使用され、新聞は公衆の目にはふれない。 |
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みずからを「高い倫理を保持すると共に、社会的にも高い評価を得ている」(訴状より)と自負しているがゆえに、「押し紙」報道が許せなかったようだ。渡邉恒雄主筆がメディアから政界フィクサーの汚名を着せられても、提訴しない読売であるが、「押し紙」問題を指摘されると、たちまち激しいリアクションを起こす。それだけ気にかかるテーマなのだろう。
ちなみにこの裁判読売側の代理人を務めているのは、自由人権協会・代表理事で「人権派」の
喜田村洋一弁護士
ら2名である。喜田村氏は、司法命令を踏み倒すなど読売の言動が論議を呼んでいる真村事件
でも、読売の代理人を務めている。もちろん読売に「押し紙」は、存在しないと主張してきた。
「押し紙」を全面否定する読売の論理とは、どのようなものなのだろうか?
(参考:真村裁判の
福岡高裁判決の全文。
読売による優越的地位の濫用を認定している。)
◇部数至上主義と「押し紙」
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「北田資料」が示す読売新聞鶴舞直売所の「押し紙」の実態。1977年~81年。 |
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北田資料を取り上げた国会質問。1982年3月。 |
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