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電波特定財源の闇 検討会の委員20人中10人が「利益相反」

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「公正中立な総務省研究が必要だ」と発言した野島俊雄北大教授(上)と多氣昌首都大学東京教授(下)。どちらもNTTドコモから資金提供を受ける利益相反者
 事業仕分けの結果が反映されていないと改善通告された、総務省の電波の安全性調査事業。検討会委員の1人野島俊雄氏は2004年~08年に毎年NTTドコモから100万円以上の寄付金を受け取ったうえ、04年にはさらに500万円の研究費を受け取っている。その他でも委員20名中、多氣昌生、今井田克己、宇川義一ら、実に10名が過去に電波産業会の委託研究を請け負っていたことが判明した。事業仕分けに反対して公正中立な研究が必要と主張しても、このような「電波が安全であることによって儲かる人たち」がメンバーという実態では、中立の信頼は得られない。利権化した“電波特定財源”を総務省から予算を引き剥がして一般財源化し、厚労省など他省庁で仕切り直すべきだ。
Digest
  • 事業仕分けで「改善通告」
  • 業界団体代表委員が公正中立を主張
  • 厚労省では50万円以上の企業資金供与で審議参加に制限
  • 野島委員にNTTドコモから500万円の資金供与
  • 検討会委員20名中10名が過去に電波産業会の研究に関与
  • 「利益相反?調べてみないと分かりません」総務省
  • 「NTTドコモ委託の研究を総務省研究として発表」

事業仕分けで「改善通告」

11月15日から始まる事業仕分け第3弾(後半)では、過去に廃止または全面的見直しと判定されたにも関わらず、仕分けをないがしろにし事業継続の概算要求をしてきた事業についての再仕分けが行われる。

11月9日の行政刷新会議では再仕分け対象として110事業を決定した。さらに再仕分けは行わないものの、見直しが不十分な90事業については「改善通告」を出すことを決めた。

総務省の電波の安全性に関する調査事業についても、予算25%減の9億円の概算要求では見直しが不十分だ、として「改善通告」が出された。

業界団体代表委員が公正中立を主張

そうした事業仕分けの判定に対して、10月8日に開催された総務省電波環境課の第5回「生体電磁環境に関する検討会」では、委員から批判的意見が続出した。

「安全性の研究については公正中立性の問題から、民間まかせではなく国がやらなければならない」という意見が複数の委員から出される中、口が滑ったのか北海道大学教授の野島俊雄委員が突然、事業の公正中立性を揺るがす発言を始めた。

 「私は、電波産業会というところにおりましてそこの委員長を務めております。産業界でも電波の安全性については業界の責任として20年近く研究してきていますが、一般の人たちからはどうしてもビジネス側にスタンスをおいているんじゃないかと見られてしまう。私も元NTTにいました。私の心は当然中立のつもりですが、『あんた給料もらっているじゃないか』と言われてしまう。私たち業界は業界として研究を進めますが、やはり中立性の議論をした時に十分な反論ができない。だから中立な機関として総務省が研究を行なうのが必要なんです」

傍聴席でこの発言を聞いて、筆者は自分の耳を疑ってしまった。

電波産業会とは「電波利用の一層の飛躍的な発展を図るために」主要な電気通信事業者、放送事業者、通信機器メーカーが会員となっている社団法人で、立派な業界団体だ。

業界団体からの参考人など外部の人間の発言ではない、委員自身が業界団体代表だと平気で発言したのだ。野島氏は自分が業界団体に属しているため第三者から中立だと見られないことは正しく認識している。しかしそんな自分が参加することで総務省研究の中立性への信頼が薄れることについては全く意識にない様子だ。

事業仕分けによる廃止または全面的見直しという判定に対抗して、総務省中立公正な研究の必要性をアピールしたいのであれば、申し訳ないがある一定程度業界と利害関係のある人は排除するといったルールを作らないと信頼は得られないだろう。

厚労省では50万円以上の企業資金供与で審議参加に制限

本来中立公正であるべき政府の審議会などの委員が、関連する企業や業界団体と利害関係を持っているためその中立性が疑われるような事態を「利益相反」という。

厚生労働省では医薬品の審議会に対してすでに利益相反を管理するためのルールを実施している。きっかけは2007年に問題になったインフルエンザの治療薬タミフルの服用による子どもの異常行動だった

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図1野島俊雄委員が2004年と05年に受け取った受託研究費と共同研究費の一覧

図2電波産業会の受託研究者一覧と図3現在の検討会員名簿との比較

過去の生体電磁環境研究推進委員会第10回会議議事録抄の一部

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