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「半年病欠委員に140万円」の杉並区選管に裏金疑惑 「過払い報酬を職員が返済」の奇奇怪怪

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根本元選管委員の「過払い報酬」を本人に代わって職員が払ったと「告白」した根本信司杉並区選挙管理委員会事務局長の陳述書。乙18号証として裁判に提出された。
 半年病欠した選管委員に140万円の報酬を払ったことで区民の顰蹙を買っている杉並区選挙管理委員会に「裏金」疑惑が浮上した。問題の選管委員が2010年10月25日に退職した際、日割にすべき10月分の報酬を満額で支給、その後、払いすぎた約4万7千円について、本人に代わって職員が払っていた(区に返納した)ことが係争中の住民訴訟で発覚したのだ。「委員の依頼で職員がカネを預かり、代わりに払った」と杉並区は説明するが、それを裏付ける物証はなく、不自然きわまりない。「裏金」で肩代わりがなされ、4万7千円が委員のヤミ手当になった疑いが濃厚だ。
Digest
  • 半年病休の選管委員に払った金額とは
  • 「職員が代払いした」ことの重大さ
  • 本橋氏の領収書を杉並区が持っている不思議
  • 会計規則に違反して集金?
  • 区内出張の手続きもされていない?

半年病休の選管委員に払った金額とは

 半年病欠した杉並区選挙管理委員・本橋文将氏(自民党区議OB、2010年10月25日で退任)に、月額24万2千円の報酬を払い続けた事件については「半年病休の選管委員に公金140万プレゼント、杉並区監査委員もお墨つき 区民は返還訴訟へ」で 報告したとおりである。やらずボッタクリを許すまじと、筆者ら区民有志は昨年5月、本橋氏の病欠中に払われた報酬約140万円の返還を求めて東京地裁に住民訴訟を起こした。

予想だにしていなかった事態が発覚したのは今年5月中旬、第5回口頭弁論を数日後に控えた日のことだった。杉並区から送られてきた書面に、「乙18号証」という杉並区選管事務局長・根本信司氏の陳述書があった。そこにこんなことが書かれていたのだ。

乙1号証及び乙2号証の原本を提出当時被告が所持していたのは、かかる納入について、事務局職員が本橋元委員から依頼を受け、納入通知書と納入金を預かり、銀行(杉並区役所内のみずほ銀行出張所)において納付を代行後、これらを同委員に返却するのを失念したまま所持していたためと聞いています。

簡単にいえば、本橋氏の区に対する借金を職員が本人に代わって払ったということである。筆者をはじめ原告団は驚いた。そしてひとつの言葉が脳裏に浮かんだ。「裏金」である。杉並区の選挙管理委員会は裏金を持っているのではないか。そう疑うにいたったのだ。理由については後で述べたい。

裁判はこの「裏金」疑惑を暴く格好の機会だった。争点を拡張してなんとか俎上に乗せたかった。

しかし、争点の拡張を裁判官が認めるかどうかは自信がなかった。提訴から1年を経て審理は相当尽くされている。勤務実態の有無に争点は絞られていた。「勤務実態が皆無だから報酬を払うのは違法だ」という原告の主張に対し、被告・杉並区は「自己研鑽・自己啓発に励んだ」と言い張った。ならばと本橋氏のカルテを開示する手続きをとって、検証した。結果は予想どおりであった。2度にわたる脳の大手術、感染症、意識レベルの低下、寝たきりで車イスに乗り移ることすら困難な状態。本橋委員はとても自己研鑽どころではない重病だったことがはっきりした。

 誰がどうみても勤務実態はゼロだった。だから報酬支給は完全に違法ということになる。結審がそこまで見えていた。

だが、それを、いまごろになって争点を広げるのである。どれだけの時間と手間がかかるかわからない。裁判官の心証を害する心配があった。

だが、やはり争点を広げて審理の継続を求めることにした。ここで追及をやめれば真相は永遠に闇に葬られてしまうだろう。裁判の勝ち負けよりも、真相究明に興味があった。

 陳述書であらたにわかったのは、「過払い報酬」の4万6839円を返したのが本橋氏本人ではなかった、という事実である。本人のカネを職員が預かったとは言っている。しかし証拠はない。

 〈本橋氏はカネを返していない〉

そういう新たな前提にたって、裁判を仕切り直すことにした。

ふたを開けてみれば心配には及ばなかった。5月23日の法廷で、八木一洋裁判長は原告の要求を受け入れ、慎重に審理を行うよう、訴訟指揮をとった。次回期日は9月5日。新事実がわかり次第報告していくことにしたい。

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昨年7月の第1回口頭弁論で杉並区が証拠提出した本橋元選管委員名義の領収書(上2枚)。本橋氏が区に返還したことを立証するためだと説明していた(下)が、じつは職員の手で払われていた。

「職員が代払いした」ことの重大さ

さて、根本陳述書が意味するところを順を追って説明しよう

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本橋元選管委員に代わって職員が払った「現場」のみずほ銀行杉並区役所派出所。本橋氏の依頼で自宅を職員が訪問し、カネと納付書を預かった、と杉並区側は説明するが不自然な事実が続出している。

1985年から32ヶ月にわたって病欠した磯部潤一氏の欠勤状況を表にした選管作成の資料。昨年10月に出したもの(左)は昭和58年~61年の部分が抜け落ちており、磯部氏の欠勤期間は9ヶ月だと読める内容だった。右は原告の指摘を受けた後の今年5月に再提出した資料。32ヶ月の欠勤が記載されている。

本橋元委員の自宅に集金に行ったと選管事務局長は説明するが、外出に必要な出張届は作られていなかった。庁舎勤務の職員が勤務時間中に無断で外出することはできない。また、集金に必要な「金銭出納員」も配置されていなかった。写真は昼休みに外出して弁当を買って戻る杉並区職員。

本橋元委員の自宅に掲げられた石原伸晃衆議院議員の看板。本橋氏は自民党区議のOBである。病気で欠勤中に衆議院議員選と区長選、区議補選が行われた。投票用紙を同時に2枚配るなどの不手際がなされた結果、無効票が8万票を越すという前代未聞の失態を招いた(杉並区)。

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三宅勝久2012/06/08 19:22会員
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