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「半年病欠の選管委員に140万円支給は違法」杉並区完全敗訴も血税使って悪あがきの控訴 日額阻止狙い区長会圧力か 

情報提供
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選管事務局から控訴の報告を受ける選挙管理委員。押村貞子(右奥)・河野庄次郎(右手前)・青木實委員長(左奥)の各氏。手前背中側右から2人目は井山利秋事務局長。織田宏子職務代理は欠席していた(下)。私用だと事務局は説明した。
 半年病欠した杉並区選挙管理委員の本橋文将氏(元自民党区議・非常勤)に対する月額報酬計約140万円の満額支給は違法だとして筆者ら区民有志が本人訴訟で起こした住民訴訟で、東京地裁(八木一洋裁判長)は10月16日、支給は地方自治法違反で無効だとして返還請求を命じる住民完全勝訴を言い渡した。判決が翻る余地は微塵もなく、まともな区政であれば、かねて高額すぎるとの批判が絶えなかった月額報酬を見直して、日額制導入を検討するはずだ。ところが杉並区・田中良区長(2010年当選)は、判決を不服として控訴。税金をドブに捨てるに等しい無駄な控訴をした裏事情として、日額制移行への動きを警戒して控訴するよう、東京23区の区長会が圧力をかけた、との噂も聞こえてきた。(「半年欠勤した選管委員に140万円支給は違法」住民完全勝訴判決はPDFダウンロード可)
Digest
  • 杉並区長は140万円を請求せよ
  • 控訴の余地ない判決理由
  • 「生活給」とはなにか
  • 条例と「ただし書き」
  • 議会の裁量権を逸脱している
  • 「自己研鑽・自己啓発に励んだ」と苦しい弁明
  • 選管事務局長のお粗末な証言
  • 「新聞読んだ」と「選挙報告聞いた」で140万円
  • 無謀な控訴の背景に区長会の圧力か
  • 控訴審も住民勝訴間違いなし

杉並区長は140万円を請求せよ

10月16日、東京地裁522号法廷。筆者ら原告の杉並区民4人(1人は欠席)は原告席についた。向かい側の被告・杉並区長側には誰も座っていない。やがて3人の裁判官が姿を現して法壇に座り、中央の八木一洋裁判長が判決を言い渡した。

主文―

1、 被告は本橋文将に対し、140万5161円の支払いを請求せよ。

 2、 被告が本橋文将に140万5161円の不当利得返還の請求をすることを怠る事実が違法であることを確認する。・・・

原告・住民側の完全勝訴だった。予想どおりの判決。筆者ら原告は傍聴席の支援者とともに手を取り合って喜んだ。

主文にある本橋文将氏とは杉並区の元区議会議員で選挙監理委員(非常勤)だった人物である。選管委員当時の2010年5月、突発の脳出血で病院に救急搬送され、以後同年10月に委員を辞職するまで半年間にわたって入院した。病気になったこと自体は気の毒な話である。だが区のほうに問題があった。病気で欠勤を続けているにもかかわらず月額24万2000円の計6ヶ月分、140万円あまり(2010年10月分は25日分の日割り計算)の報酬を払ったのだ。

仕事をしていないのに24万円以上もの月額報酬を払うのはおかしいじゃないか――

筆者を含む多くの住民は素朴に疑問を感じた。そして「140万円を区に返還させよ」と住民監査請求を区監査委員に申し立てた。2011年2月のことである。監査の結果が出たのは東日本震災直後の4月、結果は棄却だった。条例どおり支給したのだから問題はないという理屈である。ますます疑問を深めた筆者らは、同年5月、住民訴訟を東京地裁に起こした。以来2年半の月日を経て審理は今年7月に結審、判決は前述のとおり住民の全面勝訴だった。

判決文は64ページにわたる長いものだ。まず、入院中の半年間(2010年5月~10月)について、本橋氏は選挙管理委員としての業務を一切行っていなかったと事実認定した。その上で、仕事をしていないにもかかわらず月額報酬を支給させた区の条例は地方自治法違反で無効だと判じた。

控訴の余地はない――判決理由を一読して筆者は思った。

判決文は「裁判所用語」で書かれていて難解である。そこで、わかりやすい言葉に“翻訳”しながら以下説明していきたい。なぜ控訴の余地なしと筆者が考えたのかが理解いただけるはずだ。

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あきらかに勤務実態がないにもかかかわらず月額報酬を支給するとした条例は違法であると判決は認定した。区議会内部に条例改正に向けた動きがはじまっている。11月4日に開催された判決報告会に出席した杉並区議会議員ら。右から新城せつ子・小松久子(都議)・横田政直・奥山妙子・市橋あや子・市来とも子―の各氏。上は参加した市民から寄せられた感想。控訴は非常識だとの批判が多数あった。

控訴の余地ない判決理由

判決理由の核心部分は次のようにはじまる。

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杉並区を相手どった訴訟は、実務的には23区事務組合の法務部が対応する。自己啓発・自己研さんをしたとの苦しい主張を繰り返していたが、審理の終盤になるとほとんど実質的な反論ができず、戦闘放棄に近い状態だった。だが控訴した。特別区長会から圧力があったとの噂も。

証人出廷した本橋正敏選管事務局長は、訴訟の内容がまったく理解できていなかった。もっとも基本的な知識であるはずの、非常勤行政委員の報酬には「生活給」としての要素がないという地方自治法203条の2第2項の趣旨について、「忘れた」と繰り返した。(尋問調書より)

選管委員の本橋文将氏が重病で入院しているという事実は半年間も伏せられていた。その間、欠員のままトリプル選挙(参院選・区長選・区議補選)が執行された。結果、投票用紙を2枚同時に配布するというずさんな選挙運営がなされ、数万票という前代未聞の大量の無効票を発生させ、選挙無効の申し立てがなされた。裁判報告会で大量無効票事件について報告する区民。

勤務の実態は皆無だったという原告の主張に対し、被告・杉並区側は「自己啓発・自己研さん」をしたのだと反論した。その実態は、新聞を読んだとの伝聞と、選挙報告を口頭でしたという2つの事実にすぎないことが、本橋正敏選管事務局長の尋問でわかった。傍聴人からは失笑が漏れた。(尋問調書より)

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三宅勝久2013/12/16 21:10会員
三宅勝久2013/12/10 21:24会員
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