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秘密保護法で闇に葬られる重要事実が続々発覚――人質事件の文書、戦死想定の隊員家族連絡カード、総連元幹部宅狂言強盗、Nシステム…

情報提供
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原告本人尋問終了後の報告会で。左から原告代理人の堀敏明弁護士、原告・寺澤有、原告・林克明、代理人・山下幸夫弁護士。(6月3日、弁護士会館)
 中谷元防衛相は7月1日の衆院特別委等で、集団的自衛権行使を判断するための情報に特定秘密が含まれ、「情報源や具体的な数値は明示しない」と述べた。戦争開始判断のために秘密保護法が必要だと言ったも同然で、秘密保護法の危険性が改めて明らかになった。同法の違憲確認などを求め、フリーランス表現者43名が提起した訴訟の原告本人尋問が6月3日、東京地裁で実施され、衝撃的な内容が証言された。①「イスラム国」人質事件の文書開示請求で「文書不存在」、②警察寮隣の朝鮮総連元幹部宅への強盗事件が実は狂言で、10人逮捕されたが計画を主導した人物だけが逮捕を免れ消息不明、③安保法案閣議決定直後「何かあったとき」のために隊員家族連絡カードが自衛隊員に配布された、④「Nシステム情報を証拠として法廷に出すな」との警察庁の文書。これらが法廷で証言され、どれも秘密保護法によって闇に葬られそうになっていることがわかった。
Digest
  • 予想を覆す展開の裁判
  • 世界のジャーナリズムから批判される秘密保護法
  • 後藤健二氏殺害事件で政府高官らが威嚇発言
  • 「イスラム国」人質事件の文書が存在しない
  • 検証報告書は「一切国民に知らせない」という報告書
  • 自衛官の手引きにより自衛隊施設内を取材
  • 「隊員家族連絡カード」は戦死を想定している
  • 朝鮮総連元幹部宅の狂言強盗事件と警察
  • こつ然と消えたマツダという人物
  • 今市「女児殺害事件」と“Nシステム”の闇
  • 情報統制・言論報道統制・開戦のための秘密保護法
(※訴状、および寺澤&林の本人調書は、PDFダウンロード可)

予想を覆す展開の裁判

「秘密保護法(特定秘密保護法)は、日本国憲法が保障している取材・報道・表現の自由を奪い、国民の知る権利を奪う」として、フリーランス表現者43人(フリージャーナリスト、ルポライター、編集者、写真家、映画監督など)が2014年3月28日、東京地方裁判所に提訴した。私も原告の一人である。

秘密保護法は、行政庁の長が特定秘密を指定でき、権限を持つ第三者機関によるチェック機能がないため、政府側の独断でほぼ全てが決められる。情報を漏らす側と情報を取得する双方が罰せられ、最高で懲役10年。戦前の軍機保護法、国防保安法のような法律であり、すでに昨年12月に施行されている。

当初、秘密保護法に反対する人たちからも、この訴訟提起を疑問視する声もあった。なぜなら、違憲訴訟は簡単に門前払いにされるのが常。憲法判断を避け、秘密保護法で逮捕されて裁判になってから、はじめて憲法判断をしましょう、というのが日本の裁判所の実態だからである。

さらに、下手な判決を下されたら今後に悪影響を与える、と多くの人が心配した。

ところがフタを開けてみると、予想とは違っていた。この種の裁判では、仮に門前払いにならないとしても、口頭弁論では、書類のやりとりをして次回期日を決めて数分で終了し、傍聴人には何をやっているか全くわからない。

この訴訟では、原告が意見陳述し、代理人弁護士が提出した準備書面の要旨を口頭で説明したり、安倍晋三首相以下、法律成立に関わった主要人物を片端から証人申請するなど、積極的な展開になっている。

その背景には、東京地方裁判所で最大の103号法廷を毎回ほぼ満席の傍聴人が詰めかけて裁判を注視していることもある。そして原告本人尋問も認められ、6月3日の第6回口頭弁論で実施。裁判は、最大の山場を迎えた。

尋問を受けた原告は2人。初めに私(林克明)、次に寺澤有氏(ジャーナリスト)の番だった。この裁判における“一大決戦”の一部を再現するが、読みやすいように、速記録の文章を少し修正していることをお断りしておく。

世界のジャーナリズムから批判される秘密保護法

まず原告代理人の堀敏明弁護士が主尋問を行なった。

―――秘密保護法は、世界のジャーナリズムからどのように評価されているんでしょうか。

林  パリに本拠を置く国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」があります。毎年、世界の報道自由度ランキングを発表しておりまして、日本は2013年から今年にかけて53位から61位に順位を下げています。2012年は12番とかなり高かったのですが、急激に落ち込んでいます。

―――その理由は何ですか。

 林  原告団が問い合わせたところ、秘密保護法が施行されたのが61位に下がった理由だと説明されました。

―――この団体はその他どのような活動をしているのですか。

林  「100人の報道ヒーロー」を選んでいて、直近では、原告の一人である寺澤有さんが、日本人としてはただ一人選ばれており、その受賞理由が、まさに本訴訟を提起したことです。

―――国際的に秘密保護法が批判されている事例としては他に何かありますか。

林  公益社団法人・日本外国特派員協会が、今年初めて「報道の自由賞」を創設しました。元通産官僚の古賀茂明(注:原告団は古賀氏を証人申請している)さん、イスラム国に殺害されたジャーナリストの後藤健二さんが受賞されています。

―――「報道の自由賞」とは、どういう賞なんでしょうか。

林  日本外国特派員協会によりますと、安倍政権が発足してからメディアに対する圧力を強めていると。その際たるものが秘密保護法であり、これに抵抗するジャーナリストたちを日本外国特派員協会としては支援したい、そういう強い意図のもとに創設されたと説明を受けています。

後藤健二氏殺害事件で政府高官らが威嚇発言

―――(報道の自由賞の)受賞者である後藤健二さんの事件に関する真相、政府の対応などについて、少しは真相が解明されているのでしょうか。

林  殆どと言っていいほど、この事件は解明されていません。特に問題だと思ったのは、岸田外務大臣、安倍首相、菅官房長官らの重要人物が、この事件には特定秘密が含まれていると述べて、いまだにわかっていないわけです。

法廷では、あらかじめ提出した証拠書類に基づいて話が進められていたので傍聴人には詳しくわからなかったが、今年2月4日の衆院予算委員会で岸田外務大臣が、「特定秘密に該当する情報が含まれ得るものであると認識をしております

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内閣府に情報開示請求した結果、「行政文書不開示決定通知」が届いた。理由は、文書が「不存在」。秘密保護法施行でこのようなことが激増すると多くの人が指摘していたが、現実のものとなった。

外務省からの「行政文書不開示決定通知書」。文書そのものが存在しない「不存在」とさまざまな理由で「不開示」と二つに分けている。すべて不存在とした内閣府の決定と矛盾があるのではないか。

特定秘密をチェックする名目で衆議院に設置された「情報監視審査会」にかかわる事務局担当者への適性評価について情報を求めた。ゼロ回答であった。

秘密を取り扱う者を調べるための質問票(適性評価)。本人、配偶者、両親、子ども、親戚など、幅広い人の国籍や経済情勢、病歴などプライバシーを調査するものだ。28ページからなる質問票の一部。

公安警察が運用してきたといわれるNシステム(自動車ナンバー自動読み取り装置)の取り扱いを示した警察庁の文書。「本業務により判明した事項を、公判に証拠として提出してはならないものとする」と明記され、あたかも存在しないかのようにされている。

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読者コメント

林克明2015/09/01 10:40
林克明2015/08/05 12:11会員
正義の人2015/07/31 20:17
正義の人2015/07/31 20:12
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記者からの追加情報

第7回口頭弁論(結審となる可能性高い)
8月21日10:30、東京地裁101号法廷で。

傍聴券抽選などの情報は、原告団ブログ「秘密保護法、違憲確認・差し止め請求訴訟」で。


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