My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

文科省天下り先の設計会社・教育施設研究所が、杉並区小中一貫校建設の地質調査報告書を改ざん――甘い基準でボーリングを手抜き、高層なのに中低層と偽る

情報提供
ReportsIMG_J20170207115425.jpg
6階建ての建物は文科省指針では「高層」にあたるはずなのに、「中低層」と事実とことなる解釈をしたボーリング調査報告書を作成、杉並区に提出した株式会社教育施設研究所(東京都中央区)。取締役の岡誠一氏は指針を作成した文科省文教施設企画部に在籍していた。
 文部科学省文教施設企画部の役人が天下っている設計会社「教育施設研究所」が、杉並区から競争入札なしの随意契約で受注した小中一貫校建設工事における実施設計で、地質調査報告書を改ざんしていたことがわかった。文科省指針で6階建ては「高層」にもかかわらず、「中低層」と偽ることで、高層物件に必要な深い地層までのボーリングを行わない手抜き調査とし、利益を上げていたとみられる。地質調査の虚偽が発覚したことから、それに基づき同社が行った校舎の詳細設計にも手抜きや虚偽が疑われるが、住民の請求に対して杉並区は、設計図の公開を拒否。設計見直しも行わないという。計画では最上階にプールを設置するため、専門家は「水は基礎にかかる重さが均等とならず、杭の下にある柔らかい粘土層の影響で建物が傾く危険がある」と指摘、子どもの安全が犠牲になりかねない。政治家・役人・業者の「利権ファースト」で国民の安全と税金が犠牲になる構図は、1千億円単位でドブに捨てられた豊洲への市場移転と同じだ。
Digest
  • 「少子化」の合唱とともに浮上した「一貫校化」
  • 文科省技官OBが取締役をする設計会社
  • 重大矛盾発見
  • 「ただの誤り」と設計会社を擁護する杉並区
  • 取材に応じない教育施設研究所
  • 疑惑のボーリング
  • 落札率99・3%で地元業者が受注の不自然
※疑惑の報告書、文科省建築設計指針はダウンロード可(20メガ)

「少子化」の合唱とともに浮上した「一貫校化」

6階建て高層建物を建てる予定の高円寺中学校敷地

総工費約80億円をかけて、杉並区高円寺の小学校2校を廃校にして6階建て「小中一貫校」をつくる計画(高円寺第4、第8小学校を廃校にして高円寺中学校と統合)は、少子化を背景として2013年に方針がきまり、2014~2016年で地質調査や設計が行われ、今年(2017年)着工、2019年度に開校する予定になっている。入札・契約はすでに終わり、2017年1月28日、住民の反対を押し切って測量作業がはじまった。

本体工事については現在、都の建築確認申請がなされており、許可待ちになっている。

問題となっている文科省天下り先は、株式会社教育施設研究所という民間会社。取締役の岡誠一氏は、文部科学省からの天下りで、元文教施設企画部技術参事官だった人物である。

同社は2015年に基本設計を、2016年に実施設計を、杉並区(田中良区長)から受注。設計にともなう地質調査の報告で、6階建ては文科省指針で「高層」に該当するにもかかわらず、「(5階以下の)中低層」だとして、基礎杭の深度を不当に甘く見積もっていた。

取材に対して杉並区の担当課は欠陥を認めながらも「誤っただけ。設計には問題はない」などと「研究所」を擁護し、工事は予定通り進めるという。だが、文科省から同社に天下った役人は技官であり、まさに問題の指針をつくった当の部署の出身であることから、「誤る」はずもなく、基礎工事費を切り詰めて予算内に収めるため、または利益を上げるために、安全性を過小に見積もる工作が官業一体でなされた可能性が濃厚、と考えざるを得ない。

文科省技官OBが取締役をする設計会社

敷地の大半をつかって6階建ての校舎にするという「一貫校化」は、校庭が極端に狭くなる、教室に日が当たらなくなるといった学校環境の悪化をもたらす、そもそも本当に子どもが今以上に減っていくのか――。これが、計画が浮上して以来、多くの地域住民が計画に反対してきた主な理由だった。

ところが、住民が調査を進めるなかで、さらに重大な問題が発覚した。「小中一貫校」の矛盾を追及してきた住民のひとりが、設計会社が行ったボーリング(地質)調査報告書に、重大な改ざんを見つけたのだ。

より詳しくみていこう。同社は2015年10月、入札で「高円寺小中一貫校」の基本設計を受注。そして翌2016年2月に実施設計(詳しい設計図)を随意契約で区から受注した。実施設計の費用は約1億4000万円。そのなかにはボーリング調査の費用290万円が含まれていた。

通常は設計とボーリングは別々に発注する。ボーリング調査の結果を踏まえて、設計を行う。だが今回は、設計会社自らボーリングを行っている。この点からして筆者は不自然さを覚えるのだが、重大な「誤り」は、この追加ボーリングに関する報告書のなかで見つかった。

 問題の箇所は、2016年10月に作成された報告書の、「29頁」とページが打たれた部分。基礎工法に関する「考察」のくだりだ

この先は会員限定です。

会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。

  • ・本文文字数:残り4,894字/全文6,292字

少子化によって学校の統廃合が必要だという理屈で立案された高円寺小中一貫校だが、いつの間にか6階建てで校庭もきわめて狭い巨大な校舎の計画になった。必要性に疑問が指摘されている。日当たりの悪い校舎や校庭、通学の危険や排気ガス公害など、子どもの教育環境が悪化するだけでなく、周辺住宅が広範囲に日陰になるという悪影響も出ている。

本体工事を受注した白石建設・渡辺建設・目時建設・矢島建設のJV(企業共同体)。「杉並区と話し合いをしているところだ。着工を待ってほしい」と訴える周辺住民と、対峙する業者。白石建設の幹部社員(部長=手を出している男性)は、筆者のカメラをわしづかみにするなど乱暴な行動に出た(1月30日午前9時ごろ、東京都杉並区の高円寺中学校付近)。

「高層」を「中低層」と誤って書かれた問題のボーリング調査報告書(株式会社教育施設研究所作成)。

文部科学省文教施設企画部が作成した建築設計指針。同部の技官をしていた岡誠一氏は、退職後独立行政法人に再就職、そのご(株)教育施設研究所の取締役になっている。

現在の4階建ての校舎を解体して敷地の大半をつかった6階建ての巨大校舎に変わろうとしている杉並区立高円寺中学校。新校舎になれば校庭は周囲百数十メートルしかない狭さになり、かつ一日中日陰になる。周囲の樹木もほとんどが伐採される計画だ。最近になって区は子どもが増えるという試算を出しており、廃校=一貫校化の動機そのものに大きな疑問が出ている。

公式SNSはこちら

はてなブックマークコメント

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報

本文:全約6200字のうち約4700字が
会員登録をご希望の方はここでご登録下さい

新着のお知らせをメールで受けたい方はここでご登録下さい(無料)