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キャッシュレス化・電子決済手数料「7円」「0.1%」…理想的なオランダ、銀行利益優先で国民の利便性と国家の生産性が犠牲になる日本
入口で「NO CASH CARDS ONLY」をわかりやすく信号表示するオーガニックスーパー『marqt』

 欧州のキャッシュレス決済は北ほど進んでおり、北欧3国のほか英国やエストニアが知られる。近年はオランダが急速に進んでいると聞き、10月半ば、現地を訪れた。普及のポイントは加盟店側が負担する手数料にあり、1決済あたり5セント(約7円)だったり、決済額の0.1%だったりと、コストとして無視できる水準であることが分かった。日本では最低でも2~3%なので、獰猛なプレイヤーたちが1円単位の熾烈な価格競争を繰り広げる外食・小売業の低い利益率を考えたら導入が進む理由はなく、絶対に普及しない。2000年に開始したJデビットはジリ貧で仮死状態。傘下にクレジット会社を持つ銀行利益第一主義で、外食・小売の利益を圧迫し、消費者の利便性と経済生産性が犠牲になる構図は、バブル崩壊後に長引いた不良債権処理問題に似ており、「失われる30年・成長できない日本」の病巣を象徴しているのだった。

【Digest】
◇非接触式、加盟店手数料は金額にかかわらず「5.5セント」
◇支払いサイクルはデビットが翌朝入金、クレジットも翌週 
◇非接触デビットで手数料1%未満が最低条件か
◇負け組Jデビットは仮死状態「クレジット会社の収入守りたい」
◇銀行とクレジット会社の「クロスオーナーシップ」問題
◇日高屋、サイゼリヤ、一風堂…大手チェーンも導入できない
◇国策でJデビットかQR決済を低手数料でやらせるしかない
◇銀行QR決済は、適正な手数料となるよう監視が必要

◇非接触式、加盟店手数料は金額にかかわらず「5.5セント」
 「HIER ALLEEN PINNEN」(ここではPIN=デビットのみ)
 「ONLY PIN&credit card NO CASH」
 「NO CASH PIN OR CREDITCARD ONLY」

上から『Vegan Junk Food Bar』『Men Impossible』『Kounosuke』『marqt』。いずれも現金お断りをお客に伝えている。
 オランダでは、普通に街を歩いていて「NO CASH」をうたう店に出会う。それも近年、新規オープンしたクールな店、若者向けの店に多い。冒頭写真はオランダで18店あるオーガニック系スーパー『marqt』。店舗数を拡大中のファストフードバーガー店『Vegan Junk Food Bar』も現金お断りで、注文時に決済が必要だから、手持ちが現金しかない人は門前払いを食らう。食後払いのレストランでも、ネットの予約ページで予め『PIN only』と明示されていたりする。もはや現金主義者は、ファストフードもレストランもスーパーも、利用しにくくなりつつある。

オランダのデビットつき銀行カード(PIN)。この左下の電波マークが非接触式を示す。
 PINというのはオランダではデビット(口座即時引落し)払いを指し、日本のSUICAやEDYのように非接触式が普及し、かざすだけで一瞬にして決済が完了するという、超生産性の高いパーフェクトな決済手段だ。25ユーロ以上の決済に限り4桁の暗証番号(PIN code)を打ち込む必要があることからPINと呼ばれ、クレジットカード(こちらもPINは求められるのに…)とは区別して呼ばれる。PIN=「物理的な銀行キャッシュカードと一体化したデビットカード」である。PINが圧倒的に国民の間で普及し、既にデビット決済が全体の6割。最近ではスマホアプリ版も一部で始まっているそうだ。

 デビットオンリーの店に対し、筆者は当初、以下のような疑問を持っていた。

①店側にとって、機会損失(現金で払いたい客を逃す、売り損じ)はないのか?

②カード決済では店側に手数料もかかる(コスト増)。売上を減らしてコストが増えるのでは、踏んだり蹴ったりでは?

③ファストフードやスーパーはともかく、レストランでは食事を終えたあとの支払い段階になって、トラブルにならないのか。スウェーデンでは「現金を受け取らない」ことが合法化され、店側が正当に現金を拒否できるようになった、と報道されている。つまり、現金しか持たずにレストランで食べて払えなければ食い逃げ(犯罪)だ。オランダでは?

 現地で和食店を営む日本人経営者に話を聞いたところ、謎はあっさり氷解した。アムステルダムで、ラーメン店に1年間勤務しつつ、自身の店の開業準備を行い、2017年10月に『Men Impossible』を開業して1年になる石田敦士氏(40)も、支払いはデビットオンリー、を開業当初から掲げていた。

これは筆者が入った中東系の飲食店で使っていた偽札チェッカー。50ユーロ札はもれなく通していた。
「手数料が、タダみたいに安いので負担感はありません。私の契約では、決済1回あたり5.5セント(約7円)。客単価が25ユーロ強なので、手数料率に直すと0.2%とか。夫婦で50ユーロなら、0.1%。ほぼ気にならないコストです。PINは、オランダ人なら、ほぼ全員が持っていると言ってよいくらいなので問題ありません。開業前に働いていた店では現金支払い可でしたが、偽札が見つかったことがある、と聞きました。だからNO CASHを掲げることに、特に迷いはありませんでした。とはいえ結局、1日に1~2組くらいは現金でも受け取っています(※最終的にはキャッシュも可としているためトラブルにはならない)」

 この店側の手数料の安さは、日本の常識で考えると、驚きである。石田氏の場合、詳細は、以下の通りだという(※利用する決済会社や契約プランで異なる)。

▼導入コスト
 ・端末購入費:770ユーロ

▼ランニングコスト
 ▽PIN
 ・端末使用料:月1.95ユーロ
 ・手数料:1支払あたり5.5セント(=約7円)

 ▽クレジットカード
 ・月額課金:2.5ユーロ
 ・手数料:決済金額×1.4パーセント

 5.5セント(7円)にも驚くが、クレジットのほうも1.4%と、日本の3分の1程度だ。支払い方法は、ざっくり言うと、PIN:8割、クレジット:1割、キャッシュ1割、といったイメージで、PIN以外は国外からの観光客の利用が半数超を占めるという。8割がデビットとあって、ほとんど決済手数料に負担感はない。

 別の和食店経営者にも確認のため聞いたが、その店も「PINオンリー」をうたっており、デビット決済のみ。ただ、やはりそれでも現金で、という客も15%くらいいてキャッシュでも受け取っており、55%がデビット、30%がクレジット、といった割合だという。

 「自分の契約では、デビットの手数料は決済額の0.1%、つまり1000円につき1円なので、ほぼ気にしなくてよい額です。プラス固定費として、年間の決済端末使用料を150ユーロ払っています。別途、(決済端末を通さない)チップの現金収入が1日70~80ユーロありますしね…」(30代日本人経営者)

◇支払いサイクルはデビットが翌朝入金、クレジットも翌週
オランダでもっともよく見かけたPIN&クレジット兼用の決済端末。デビットは非接触式対応でかざすだけ。
 2人とも、零細飲食店を新規で開業した際の契約内容だ。大手チェーンなどのボリュームディスカウントも受けていない。それでも、1回7円だったり、0.1%なのである。

 石田氏の契約では、単価が100ユーロでも5.5セントの手数料なので、その場合は0.055%。ほぼ無料に近い決済インフラだ。

 しかも、オランダのデビット決済は、非接触式でかざすだけで瞬間的に終わる。店員に触らせないから、スキミングの犯罪リスクもなく、実にスピーティーで合理的。カードを盗まれたり、紛失したら、スマホからすぐに止められる。実にクールだ。そして、既にほとんどの店で利用可能。

石田氏の店に貼られているキャッシュレス表示
 こうなると、国民がこのカードを持たない理由が1つもない。オランダ経済の生産性向上、消費者の利便性向上の効果は計り知れない。賢い国である。

 スマホ決済はバッテリー切れで使えなくなるが、物理的なカードには電源が不要だから、その心配もしなくてよい。現時点で、理想的で合理的な、究極の決済手段といえる。

(未来の究極形は、手ぶらのまま、生体認証決済=虹彩・指や手の静脈・顔認証等で支払う、である)

石田氏のお客さんが持っていたカードホルダー
 「うちのお客さんは、財布は持っていなくて、薄いカードホルダーから、ピっとデビットカードを出して決済する人が多いです。このデビットカード(PIN)の維持費は、個人だと月2~3ユーロの固定費を払えば、EU域内の振込手数料は、他行宛ても含め、全て無料。これは10万円でも100万円でも、無料で振込めます。これは僕が口座を持っているABNアムロ銀行だけの話ではなくて他行も同じ。おそらくEU域内への振込に手数料がかかると思っているヨーロッパ人はいないと思います。他行のATMを使う場合も含め、キャッシュを引き出す手数料も、全て無料です」(石田氏)

 日本よりも圧倒的に低コストで、金融インフラが優れている。店側としては、手数料が安い代わりに、何か不便なことはあるのだろうか。

 「店の経営で使用する銀行のビジネスアカウント(個人事業主向け口座)のほうは、固定費が月10~20ユーロ(日本の法人口座とほぼ同じ)と少し上がりますが、振込手数料やATMからの出金手数料が全て無料なのは個人口座と同じです。支払いサイクルは、決済会社からの入金が、僕が契約しているところだと、PINの売上は翌営業日の朝に入金され、クレジット決済分は当該週分が翌週の水曜に入金されます」(同)

 不便さや割高感を感じたことは特にないという。

 欧州の銀行は、月額の維持費さえ払えば振込みも引き出しも無料で使い放題、という「定額制」に特徴があるようだ。日本のように、「このATMは他行だから手数料が高い」といった、くだらない銀行の垣根がない。

 実にクールな金融インフラができている。他行のATMから1千円引き出すだけで216円の手数料をとられたり、他行宛の振込手数料が3万円以上で432円もとられる日本とは、大違いである。クレジット決済にしても、たとえばMyNewsJapanで10月に決済した売上が入金されるのは2か月後(12月20日)だから、2か月分の運転資金の融資を受ける必要がある(翌週水曜なら不要だ)。日本の金融インフラ(いわゆる『全銀システム』)が、いかに割高で銀行(とNTTデータはじめITベンダー)ばかりが肥え太るものとなっているか、がよくわかる。

◇非接触デビットで手数料1%未満が最低条件か
 話は、単純だった。日本でキャッシュレス決済が普及しない原因は、「決済手数料が店側からみて気にならないほど安い、非接触式のデビット払い(カード/アプリ/QRコード)が存在しないから」。キャッシュレス化が進むか否かは、すべてこれで説明できる.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。



0.3%にとどまる日本のデビット決済比率。全体でもキャッシュレス決済は20%

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アダム・スミスは『 国富論』  05:54 11/12 2018
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アダム・スミスは『 国富論』(1776)で18 世紀末のオランダ について、こう書いている。「オランダの 労働賃金は英国より高いといわれて いる。そしてオランダ人は、ほかのヨーロッパ のどこよりも低いマージンで貿易を行っていることはよく知られている」(紺野登、幸せな小国オランダの智慧、PHP研究所) →現代のデビット決済手数料0.1%に通じるものがあるな、と思った。経済繁栄の基本ですね。