朝日新聞社が自社の新聞に折り込んだチラシ。速報性のなさが新聞ばなれの原因にもなっている。
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新聞販売店の売上の半分を占めるのも当り前となっている「折込チラシ」収入。ところが最近、新聞の読者ばなれが進み、チラシが届かない世帯が増えたため、チラシを全戸配布するポスティング業者が台頭しつつある。そんななか、なんとポスティング業者の大半がチラシの自動折込機を入手できないという事態になっている。これは新規参入を恐れる新聞社の嫌がらせと見られるが、虚構の新聞経営が崩壊に至る末期の悪あがきといってよい。
【Digest】
◇新聞折込では全戸配布できない
◇ポスティング業者に対する参入妨害も発生
◇購読者は26/200世帯だけ
◇販売店の資本系列化で本体にも甚大な影響
◇岡山市におけるチラシの水増しの実態
◇「押し紙」が新聞社に仕打ちをする
◇新聞社と販売店によるチラシ詐欺の構図
◇だれも販売店主になりたがらない
◇折込チラシ配布者の交代が壊滅的打撃に
悪しき商慣行になっている折込チラシの水増し行為が、新聞社衰退の決定的な引き金になりそうだ。水増しされず確実に全戸に届くポスティング業者のほうに、折り込みチラシが流れ始めているからである。
◇新聞折込では全戸配布できない
チラシ配布には、新聞に折り込む方法と、ポスティング業者が全戸配布する方法がある。全国的な傾向としては、これまで主流だった新聞折込によるチラシ配布から、ポスティング業者によるチラシの全戸配布への切り替えが、ゆるやかなスピードで進んでいる。新聞の無読者が急増したために、新聞折込ではチラシが届かない世帯が増えた結果である。
たとえば東京都・北区では、広報誌の配布方法を、この4月を境に、新聞折込からポスティングに切り替えた。その理由を北区の広報係が説明する。
「新聞折込では広報紙が自宅に届かないという苦情が相次いだからです」
さらに、折込チラシの水増しが日常化して、それに広告主が気づきはじめていることも、新聞折込が不評になってきた要因である。かりに1000人しか読者がいないのに、1300人の読者がいると説明され、その枚数に応じたチラシ代金を請求されたら、広告主は穏やかではない。ましてコストの削減が口うるさく言われるこのごろの時勢である。
◇ポスティング業者に対する参入妨害も発生
新聞社は、競合となるポスティング業者の台頭を、極端に恐れている。東京・清瀬市に拠点を置く地域広告社の井前隆志氏が言う。
「わたしは、朝日新聞の販売店を経営していたのですが、強制廃業させられた後、ポスティングの仕事を立ち上げました。するとかつての担当員が様子をうかがいにやってきました。その直後、知り合いの販売店主から、抗議めいた電話がありました。警戒するあまり、わたしがポスティング業を始めたという情報が販売店へ流れたのでしょうね」
井前氏はポスティング業を軌道に乗せるまでに、意外な壁に突き当たった。
「チラシを束ねる機械を購入しようとしたところ、『もともと新聞社からの依頼で開発した機械なので、新聞販売店以外には販売出来ない規則になっている』と言われたのです」
どのメーカーに問い合わせても同じ答えが返ってきたという。
やむなく井前氏はインターネットのオークションを通じて、愛媛県の市民新聞の社主から機械を入手した。しかし、自分でメンテナンスはできない。そこでメーカーに依頼してみたが、やはり断られたという。
ポスティング業者の台頭が今後、新聞社の運命を左右しかねないだけに、新聞業界と機械メーカー各社の間に、何か密約があるのかも知れない。
井前氏によると、ポスティング業者の大半は機械を入手できずに、チラシの手折り作業を強いられているという。しかし、このようなことが延々と続くはずがない。自分の利益のためならどんな手段も選ばない体質。これこそが新聞を危機に陥れた要因に違いない。
◇購読者は26/200世帯だけ
ポスティング業者の台頭は必然だ。新聞を読まない世帯が増えているからである。
滋賀県の大津市にあるYC浜大津の店主・岸塚隆一さんが、新聞ばなれの深刻な実態について言う。
「先日、完成したばかりの200世帯の分譲マンションのロビーに机をひとつ置かせてもらって、販売店が共同で新聞の申し込みを受け付けたのですが、契約してくれた世帯は、たった26世帯でした」
新聞の内訳は、読売新聞が17件、朝日新聞が7件、京都新聞が2件だった。
「入居者の年齢層が若いということもありますが、あまりにも衝撃的です」
ある地方紙の販売店主も若者の新聞ばなれに危機感を募らせている。
「毎年、この時期に大学の新入生をターゲットにした拡販をやるのですが、数年前から成果はまったくあがらなくなりました。親が新聞を読まない世代になっていますから、子供の世代も読みません。こればかりは仕方がありませんね」
新聞ばなれの要因のひとつに情報伝達のスピードが遅いことがある。
新聞の速報性の限界が露呈されたのは、先の統一地方選挙の終盤だった。4月17日に長崎市長が襲撃され、深夜に死去した。翌日、新聞各紙はこの事件を第1面で報じたが、市長が心肺停止の重態であると報じたのである。
さらに4月23日の投票日には、朝日新聞大阪本社が速報性の限界をみずから示した。自社の新聞に次のようなチラシを折り込んだのだ。
読者の皆さまへ
朝日新聞をご愛読いただきありがとうございます。
4月22日(日)は、統一地方選の投開票日です。朝日新聞は、
より充実した紙面を読者の皆さまにお届けするため、選挙当日
は特別報道態勢を組みます。
4月23日(月)朝刊は、統一地方選報道のため、配達が、通
常より遅くなります。
ご迷惑をおかけして申しわけございませんが、よろしくお願い申
し上げます。
新聞だけが信頼できる情報の提供源だと勘違いしているのだ。苦笑するひとはいても、迷惑に感じる人はおそらくだれもいない。
「どこで」「だれが」「いつ」「なにをした」を伝えるだけの後追型の報道であれば、新聞に頼る必要はない。この事実こそが急激に新聞ばなれが進んでいる原因のひとつといえるだろう。
◇販売店の資本系列化で本体にも甚大な影響
上記で述べたようなスピードの遅さや世代交代等による読者の新聞ばなれに加え、新聞に折り込まれるチラシの市場をポスティング業者とネット広告に奪われ、新聞社の経営がどん詰まりになる公算は強い。
販売店が新聞社の販売会社へ組み込まれる流れのなかで、販売収入の減少が直接的に新聞社本体を直撃するからだ。
これまでは、販売店が赤字などを負担するなど「冷や飯」を食わされていたのだが、販売会社に再編されたならば、それもできなくなる。その時、編集部門の大幅なリストラも避けられない。
わたしが販売店の販売会社化と折込チラシの水増し詐欺という2つの観点から新聞社の危機をはっきりと見極めたのは、4月19日から21日にかけて岡山市で新聞販売の実態を取材した時だった。もともとこの取材を計画したのは、岡山市の一市民から、新聞各社が新聞に折り込むはずの地方自治体の広報紙を破棄しているので調べてほしい、との依頼を受けたことだった。
そのため当初の取材の目的は、広報類破棄の現場を捉えることだった。ところが取材を進めていくうちに、はからずも新聞社が衰退する典型的なシナリオに感づいた。その最大の鍵を握るのが、折込チラシだ。
◇岡山市におけるチラシの水増しの実態
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岡山市選挙管理委員会が編集した市議選の選挙公報。朝日、読売、毎日、産経、日経、山陽の各紙に折り込まれた。
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具体的に岡山市のケースに即して、まず、本当にチラシの水増し詐欺が行われているのかどうかを見てみよう。
岡山市ではチラシ配布の方法として、新聞にチラシを折り込む方法が主流だ。大半のチラシは、地元の山陽新聞、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、それに日経新聞に折り込まれて、新聞の購読世帯へ配布されている。
わたしが岡山市に到着した4月19日の各紙の朝刊には、岡山市議選の選挙公報が折り込まれた。はからずも折込チラシの水増しを調べる格好の機会に遭遇したのである。
まず、市庁舎の中にある選挙管理委員会に足を運び、職員から新聞折込に関する基本的な情報を入手した。
※新聞折込部数: 263、650部
※新聞折込を依頼した新聞: 山陽、朝日、読売、毎日、産経、日経
※折込手数料: 413万7000円
わたしは何を基準にして、折込部数を決めたのか職員に尋ねてみた。
「ABC部数に基づいています」
ABC部数とは、日本ABC協会が調査・発表する新聞の発行部数である。岡山市に限らず、大半の自治体は、チラシ(広報類)を新聞に折り込むとき、ABC部数を基準にして枚数を決める。
しかし、ABC部数のデータと岡山市が依頼した折込枚数を比較してみると、新聞折込の基本原則すら守られていないことが分かった。.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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筆者が岡山市の選挙管理委員会で入手した「広報連絡」。選挙公報の折込枚数は、ABC部数を約1万部も上回っている。
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山陽新聞社の販売会社の出入り口に積み上げられていた新聞。「押し紙」の公算が強い。
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