→大島てる CAVEAT EMPTOR

事故物件は現場で確認する

新宿の駅周辺など都市部は刺殺や飛び降り自殺が多く、住宅地は火災による死亡が目立つ。

　大島さんに話を聞いたのは１０月１４日。報道各社はこの日、今年６月に神奈川県横浜市の海上でバラバラ死体が見つかった事件について、前日に逮捕された３人が、千葉県船橋市内のホテルで死体を切断したという警察発表を伝えていた。

──たとえばこの事件の場合ならば、「船橋市内のホテルで遺体を切断した」という内容です。事故物件マップには、ホテル名や部屋番号まで載せるわけですが、どうやって特定するのでしょうか。

　裁判を傍聴すれば分かります。この事件は絶対に起訴されるでしょうから、検察官が朗読する起訴状の中の公訴事実の部分を聞けば分かります。検察官がウソを言うことはあるでしょうけど、弁護人が争わなければ真実でしょう。私自身が傍聴に行くこともあれば、アルバイトに行ってもらうこともあります。（※千葉県は現在、調査対象外）

当然、現地で聞き込みをして裏付けをすれば分かることもあります。これは簡単な部類に入ります。

難しいのは、自殺です。事件性がないと裁判にはならないし、焼死（火災）のように外から見て分かるものでもない。硫化水素自殺の場合は臭いで分かることがありますが、それ以外の自殺だと難しい。

　自殺物件については、最近の報道などでうちのウェブサイトを知った人からの情報提供が増えていて、それをもとに独自取材を進めることができるようにもなってきました。

──部屋番号まで出ているのが特徴ですが、マンションなどの場合、現場に行く前に分かっているのですか？

　新聞は7紙とっていますが、部屋番号は通常、出ていません。多くは、現場で確認します。火事でしたら現場に行けばすぐに分かりますし、硫化水素も臭いで分かります。あるいは、部屋の前に花が添えられていたり、血痕が残っていたり、その部屋の周りに警官やマスコミがいっぱいいて、近寄れなかったり。

私自身が近隣の人と思われて質問を受けることも多いです。そういうときの世間話で、部屋番号などいろいろと参考になることを言ってもらえることもあります。

　先日、中川昭一元財務・金融相が亡くなったときは現地に行ったのですが、家の周りは野次馬がものすごく多かったですね。

　現地を見るだけでなく、住人に聞き込みもします。ですが、マンションの場合は、全体で箝口令のようなものが出ていることもあります。そういうときは聞き込みをしても分からないことが多い。「救急車は来ていたが、死んでいるとは思わなかった」と言われたり、マスコミも来ていないことも多いです。

　隣の部屋の人に聞き込みをすると、隣なのに取材されたことがないという人も、いっぱいいます。「この件で聞きにきたのは、あなたが初めて」と言われることもよくありますし、なかには「誰かが来たら言いたかった」と言ってくれる人もいます。

神奈川県横浜市中区のマンション。１枚目の写真でカメラのモニターに写っている物件。画像のぼかしは筆者による。

　つい先日写真を撮ってきた、この横浜市中区のマンション（右記）の場合、私には部屋番号が分かりました。どこの新聞社も、部屋番号までは報じていませんでしたが。

──どうのようにして確認できたのですか？