在りし日の渋谷。遅れ気味といわれる再開発が進行中。
|
都心部のミニバブルや全体の市況回復で復活したかに見えた不動産業界。とはいえ昨秋から、サブプライムローンの影響で証券化による資金調達に陰りが見え、さらに金融商品取引法の施行(07年9月)で、投資家に対するリスクの説明や煩雑な手続きが義務として重くのしかかる。まさに転換期を迎えている不動産業界だが、実は財閥系を除けば個人の成果主義が徹底した世界だ。最前線では30才前後で年収1,800万円程度になる人も珍しくないという給与事情を追った。
【Digest】
◇年齢でだいたい年収が決まる財閥系
◇財閥系で仕切れるのは40過ぎから
◇若手なら倍増当たり前の外資IB報酬
◇30代で年俸1500~2500万が相場
◇プロ野球選手みたいな働き方
◇「新卒からファンド」は要注意
◇「力無い者は去るサバイバルの時代」
◇年齢でだいたい年収が決まる財閥系
不動産は、やはり財閥系が中心。三菱(三菱地所)、三井(三井不動産)、住友(住友不動産)、安田(東京建物)の4社である。文字通り財を築いた先代からの “親の遺産”をどう管理し、活用していくか、というところから始まっており、いずれも、もともとが「金持ち会社」である。
一般的に言われているのは、三菱地所が、親の遺産を守ることばかり考える“堅実な長男坊”タイプ。最大手の三井不動産は、“冒険家のやんちゃな次男坊”タイプ。
「キャバクラで一番カネを使うのは三井で、豪快でヤマっけがあり、商社みたいなところがある」(業界関係者)。安田系の東京建物は、末っ子的存在で、親のカネを使い果たす“放蕩息子”タイプといわれる。
業界の定説では、給料が一番高いのは三井、2番手が地所と東建、住友は4番手。財閥系は年功序列的な報酬体系で、ボーナスは会社全体の業績に連動する要素が強く、年齢でだいたいの年収が決まる。
|
ある社員(30歳前後)の給与。ほかに交際費として30万円ほど使う月もある。 |
|
最前線で働く不動産関係者が解説する。「私が在籍していたある財閥系は、2007年は好景気を反映してボーナス8ヶ月程度が出ており、20代後半で1000万円、40歳で1400~1500万円といったところ。雇用も安定しており、一生働くには本当にいい会社です。主要な不動産は東京一極集中なので、地方転勤も少ない」
◇財閥系で仕切れるのは40過ぎから
とはいえ、財閥系4社は、新卒にとっては狭き門だ。新卒では、一ケタ~最大手でも20人程度しか採らない。しかも、コネが多い。特に女性は、グループ会社の幹部の娘や、顧客企業の社長の息子などが入社するという。これはファンドでも同様で、コネで数百億の不動産を1つ動かせれば、それで生涯賃金を払ってもお釣りが来るため、合理的ではある。
財閥系は終身雇用とあって離職率も低いが、辞める人は外資にいくケースが多い。権限が幅広くなり、一時的な報酬も上がるからだ。
財閥系では業務を細分化し、組織として仕事を進めるのが一般的。たとえば開発でも業務棟と住宅棟に分かれたり、賃貸と運営が分かれたりする。さらに細分化された業務のなかで、実力主義というより年功序列的に役割が決まる。「若いうちはなかなか全体を仕切れず、40歳過ぎにならないと全体を仕切れない」(元財閥系社員)。
◇若手なら倍増当たり前の外資IB報酬
老舗の財閥系に対して、新興勢力として拡大中なのが、外資系証券会社のIB(投資銀行)部門だ。たとえば昨年春、モルガンスタンレーグループは、全日空(ANA)から、国内13のホテルを買収。ウエスティンホテルや品川三菱ビルなども買った。ゴールドマンは、老舗旅館やゴルフ場を大量に買収している。
外資IBに、それなりのポジションで入社するには実績が不可欠だが、入れれば、報酬水準は高い。実際にヘッドハンターから声が掛かっているという社員によれば、「VP(バイスプレジデント)で、基本年俸1800万円くらい。トップ層はGS、モルガン、メリルの外資3社で、第二層のなかでは、リーマンブラザーズ証券が報酬は高め」。入社後の昇格は難しいので、入るときのポジションが重要.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
|
インセンティブ。税金・年金の天引きだけで100万円近くに。別途、固定賞与(年300万円弱)や退職金積み立てが数百万円。 |
|
