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幸福度データ、全面不開示→全面開示に 独自の規定と解釈で「役所に都合のいい情報公開」

情報提供
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不開示決定通知書。実は、不開示理由には、法的根拠が存在しなかった。
 前回記事で、内閣府が実施した「幸福度調査」のデータを雇用形態別に調べた結果、「幸福度」トップは公務員だったことを報告した。使用したデータは情報公開法を使って合法的に入手したものだが、内閣府は当初、全面不開示の決定を出していた。決定取り消しを求める審査請求を出すと態度を一変させ、180度変更して「全面開示」に切り替えた。法の解釈を変え、行政側に都合のいいように運用されていると批判される現行の情報公開制度だが、まさにその実例が今回のケース。役人の裁量によって非公開に出来るのでは意味がない。個別規定や解釈よりも情報公開法が上位にあることを法制化すべきである。

前回記事:一番幸せなのは公務員 内閣府「幸福度調査」結果、雇用形態別で

 平成21年度国民生活選好度調査(通称「幸福度調査」)の集計用データを公開するよう内閣府に開示請求したのは今年5月13日。全面不開示の決定は6月16日付けで出された。不開示になった理由は、「調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」(情報公開法第5条第6号)に該当するためという。

 実際のデータを見れば分かるように、データは有効回答2900人全員の回答を表計算ソフトに打ち込み、集計用にまとめたものだ。選択肢の番号にマルをつける回答方式のため、データには数字が並んでいるだけ。1人1行で計2900行あり、個人の特定につながる情報は一切含まれていない。

 不開示決定通知書で、以下のように理由が説明されている。

 同データは特定の個人が識別できないような措置が施されたものであるとはいえ、個体別の情報が記載されている点においては、上記のような措置が講じられないまま開示されることになれば、被調査者と調査実施者との間の信頼関係が損なわれ、今後の調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、情報公開法第5条第6号の不開示情報に該当すると解されるため、本請求に対してはこれを不開示とするものである。

 「上記のような措置」というのは、内閣府が独自に定めた集計用データの提供規程を遵守することを言う。不開示理由の前段では次のように書かれている。

 今回請求対象となっている、「平成21年度国民生活選好度調査」集計用データについては、(1)使用目的が行政上の目的または学術的研究であること、(2)使用申請者または使用申請者が属する機関が集計を行うこと、(3)集計用データをそのまま公表しないこと、また集計した結果を公表する場合は、個々の調査対象に関する事項が漏れないように措置されていること、が遵守される場合には、所定の規程にもとづいてこれを承認することとしているものである。

 情報公開法では不開示だが、別の手続きならば提供できるということだ。つまり、必要事項を伝えて「研究目的として使用し提供規程を遵守します」と申請して承認されれば、データは提供される。

 内閣府は2つの間違いをしていた。1つは「情報公開法第5条第6号の不開示情報に該当すると解される」という箇所、もう1つは「所定の規程にもとづいてこれを承認する」という箇所だ。

◇無理な条文解釈 情報公開法の考えを無視

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実際に開示されたデータの中身の一部。内閣府は当初、この程度のデータを不開示にしていた。
 まず1つ目の「情報公開法第5条第6号」だが、条文では開示しなくても構わない場合を次のように定めている。

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任意でデータ提供できるとした独自規定。ほとんどの人は対象外になる。

変更決定通知書。全面不開示から全面開示に変更になった。

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