報酬水準と内訳イメージ図
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前章までで、自身の置かれている、また、置かれるであろう立場(4つのエリア)は分かったはずだ。本章では、それぞれのエリアが10年後にどうなっているのか、その方向性を示したうえで、どうやって10年後に生き残って行くべきかを、おおまかな機能(開発、営業、管理)ごとに提示する。
【Digest】
◇重力の世界から抜け出せ
◇会社の看板で稼ぐ「ジャパンプレミアム」
◇ブリッジができるか
◇モノづくり技術者も考え方は同じ
◇半導体、電池、太陽光パネルの行く末
◇重力の世界から抜け出せ
「重力の世界」の住人になってしまうと、生活保護水準に張り付くことを覚悟しなければならない。だが、すでに生活保護者数は205万人を超え(厚生労働省発表、2011年7月)、戦後の混乱期(1951年度=月平均204万6646人)を上回り、過去最高を更新している。
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生き残る方向性 |
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しかも、史上最高の1千兆円超(2011年度末残高で1024兆1047億円=財務省発表)という借金まみれな国の財政事情と、少子高齢化で毎年1兆円ずつ社会保障関係費(年金、医療、介護などの一般会計予算計上分)の支出が増えている事実から考えると、支給水準は切り下げに向かうほかない。憲法で最低限度の生活が保証されていても、ない袖は振れないので、「最低限度」の基準が下がっていくのである。
現在、たとえば東京都港区で小学生と中学生の子供がいる資産ゼロの人が生活保護を受けると、19万円強の生活保護費を支給されているが、「年金支給額のほうが少ない」といった逆転問題もあって、水準は切り下がる見通しだ。月18万以下、年200万円弱が相場になっていくだろう。
年200万円は世界的に見るとかなり高いが、これは日本国憲法という法律によって守られるという「規制プレミアム」(④)だ。以下の図で示すとおり、「重力の世界」の職業は、日本人メリット(⑤)がほとんどなく、基本的に正社員として雇う必要もない職業ばかりなので、会社の看板(③)に守られることもない。したがって社内向けのスキル(②)が給料に反映されることもない。
ポータブルスキル(①)も付加価値を出しにくい。たとえばタクシードライバーは、どんなにドライビングテクニックに優れ接客が優れていても、競合相手との差別化が難しい。レジ打ちの名手であっても、時給はほとんど上がらない。
自分が「重力の世界」にいることに気づいたら、すぐに抜け出すことを考えねばならない。既に住宅を所有し子供も独立した人が、50代以降に「生活の張り」を求めて余生を過ごす場所としては悪くはないが、40代以下の人が参入しようと考えているなら、思いとどまるべきだ。
では、どこに抜け出すのか。まず、自分の能力に全く自信がないならば、公務員など規制業種を目指すべきだ。公務員は、規制プレミアム(④)と日本人スキル(⑤)によって収入の大半を確保できる。ギリシャのように公務員の雇用保障が剥奪される可能性もあるが、それでも絶対的な稼ぐ能力に欠ける場合は、民間よりも生き残れる確率が高い。私の友人は民間企業3社を経て国家公務員Ⅱ種に社会人採用で転職したが、その厚遇ぶりに驚き、「自分の子供がデキが悪かったら絶対に公務員になるよう仕向ける」と力説している。
真面目に努力すれば報われた戦後の古き良き時代は終わり、能力の低い人はどんなに頑張っても「重力の法則」に勝てないという“身も蓋もない”時代になりつつあるので、ここはドライに自分の能力を判定する必要がある。世界銀行の統計では、世界70億人のうち、貧困人口が既に10億人を超えている。グローバルでむき出しの競争をして下位7分の1に入らない自信があるかどうか、だ。
公務員は、ジャパンプレミアムとグローカルの双方にまたがっているが、現業部門にあたるジャパンプレミアムのほうが試験はとおりやすい。
公務員が嫌な場合、リスクは上がるが、他の公益規制業種を検討すべきだ。これはたとえば、JRやガス会社である。東電における原発のような爆弾は抱えていないので、規制プレミアム(④)を享受し続けられる可能性は高い。JR東日本の社会人採用で入社した30代社員(プロフェッショナル職=現業部門)を取材したことがあるが、「給料は高くも低くもないですが、有休は全部消化できるし、65歳まで(=60歳からの5年間はエルダー社員として再雇用される)安定して勤められるのがいい」と満足していた。
◇会社の看板で稼ぐ「ジャパンプレミアム」
公益規制業種を除くと、重力の世界からの逃避先としては、.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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