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「タイで不法就労を強要された」 中途採用の現役社員が証言する100円ショップ・ダイソーのブラックな内情

情報提供
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ダイソーに幹部社員として採用されながら、海外不法就労を強要され適応障害を発症した山中さん。
 メガバンク勤務や有名企業の海外法人社長などの経験を買われて、2011年4月にタイ現地法人の「最高責任者」としてダイソーに採用された山中孝治さん(仮名・52歳)。だが入社後、“ダイソーのカルチャーを学ぶ研修”と称して課されたのは、週6日・1日11時間超の肉体労働だった。さらに、タイの100%子会社に赴任後は、「コンプライアンスを改善したい」と宣言したことが仇となり、「海外研修費」名目で私的な宴会費用を落とすなど、本体から独立して現法の経理を仕切っていた現地2トップ(顧問と取締役)と対立。重要な仕事から遠ざけられ、就労ビザなしでの不法就労を無理強いされた。「違反が発覚すれば逮捕され、もう一生タイでは働けなくなる…」。恐怖に苛まれた末に適応障害となり、現在は自宅療養中の山中さんに、社員の仕事人生を平気で踏みにじるダイソーの内情を聞いた。
Digest
  • 「ブラック企業だなんて、ただの甘えだと思っていた」
  • 「ダイソーのカルチャーを学べ」と肉体労働研修
  • 「コンプライアンス改善」の宣言が仇に
  • 短期観光ビザでの不法就労を強制
  • 脱税も強要
  • 労災、「日本でないから」対象にならず

「ブラック企業だなんて、ただの甘えだと思っていた」


工場管理責任者(世界最大級のプラスチック工場)

世界最大規模、最新の成形機を揃えたプラスチック工場の責任者を募集。

タイでの勤務になります。自社製品工場の運営および全体のマネジメントをお任せします。

大手寝具会社で事業本部長を勤めていた山中孝治さん(仮名・52歳)は2010年の10月頃、上記文面で始まる匿名の求人情報に応募した。

その当時こそ日本国内での業務を任されていた山中さんだが、大学卒業後に入行したメガバンクではバンコク留学と管理職としての勤務を経験。その後転職した2社(上述寝具会社と流通大手)でも海外法人の副社長や社長を歴任しており、「会社員人生の最後に、もう一度海外で経営職として働きたい」との思いから、ライフサイズという転職エージェント会社に登録していたのである。

この非公開求人の主は、広島県東広島市に本社を置く大創産業(以下、ダイソー。矢野博丈代表取締役社長)だった。「ザ・ダイソー」を国内2680店、海外658店(28カ国)展開(いずれも2012年時点)する、言わずと知れた100円ショップチェーン業界の覇者だ(国内シェアは約6割)。非上場の地方発グローバル企業の代表的存在である。

2007年にタイのアマタシティ工業団地にプラスチック工場を運営する現地法人「ダイソー・サイアム・インターナショナル(DSI)」を設立した同社では、その頃、DSIの総責任者を任せられる人物を探していたのである。

ダイソー幹部たちとの数回にわたる面談では、「非常に好印象を受けた」という山中さんは、間もなくダイソーからDSIの最高責任者として勤務するよう要請され、翌2011年4月1日に入社する。

だが実はこの時点で、山中さんの友人からは心配する声も挙がっていた。2013年5月現在、グーグルで「ダイソー」を検索すると関連ワードに「ダイソー ブラック」と表示され、「2ちゃんねる」の匿名情報などを元に作成された「ブラック企業偏差値ランキング」でもダイソーはトップクラスの“高偏差値企業”で、当時からウェブ上ではネガティブ情報が数多く見られたからだ。だが当時の山中さんは、そうした忠告に耳を貸さなかった。

「『ブラック企業』という言葉があることは知ってはいましたが、その頃の私は、そんなのはただの甘えだと思っていました。銀行員時代も月100時間のサービス残業は当たり前でしたし、寝具メーカーの支社長も激務でしたが、好きな仕事に打ち込める喜びに比べれば、さしたる苦痛ではなかったからです。だからダイソーに関するネガティブな話も、『俺には関係ない』とその時は思っていました」

「ましてや、ダイソーの大原貴光取締役・アジア事業部長(筆者註=以下、肩書は全て当時のもの)からは、『ぜひ一緒に、素晴らしいダイソーを作って行きましょう。入社の暁には、過去の経験を色々とご指導ください』、また香取周次顧問からも『若い大原を助けてくれ』と言われていたので、感激こそすれ、疑う余地はなかったのです」

「ダイソーのカルチャーを学べ」と肉体労働研修

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内定通知書。ここに「採用後の処遇」として明記されている見込み概算年収よりも、実際の支給額は65万円少なかった。その点も契約違反だとして裁判で訴える意向。入社前の口約束では、これとは別に、子ども2人のタイでの教育費用として月6万円×12ヶ月分の年72万円の手当も支給されることになっていた。

しかし入社後に山中さんが知ったダイソーの実態は、それまでの彼がイメージする「大変な会社」の範疇をはるかに超えて、法律違反がまかり通る会社だった。実際、山中さんは後に、広島中央労基署から「不法就労の強要」「雇用条件に関する契約違反」「長時間労働」の3点について事実認定を受けることになる。

不信を抱かせる要素は、山中さんいわく「思えば最初からあった」。ダイソーは内定通知書(左記参照)こそ送ってきたが、山中さんが正式な雇用契約を結びたいと申し出ても無視。労働時間や賃金、勤務場所や従事すべき業務など、労働基準法が「絶対的明示事項」と定める内容を示してこなかったのである。

さらに山中さんが入社後、「就業規則を見せてほしい」と願い出ると、同社の小川金也総務部長は、「ダイソーに就業規則はない」と返答してきた。

山中さんが、「会社が就業規則を作成し、従業員の求めに応じていつでも見られるようにすることは労働基準法で義務付けられているはずです」と指摘すると、内藤雅義常務は、「自分も見たことはない」と返した上、「君は異常に細かいな。このままではダイソーのカラーに合わない。まずはダイソーのカルチャーを学びなさい」と突っぱねたという。

「ダイソーのカルチャー」を学ぶため、山中さんに課せられた“研修”。それは東広島市にあるダイソー本社での倉庫作業だった。すでに50歳を過ぎ、海外法人の責任者として採用したはずの山中さんに対し、同社はコンテナでの商品荷受け、荷降ろし、箱詰め、発送業務などの肉体労働を、20~30代のパート社員たちと同じように行うよう命じてきたのである。

そしてこの研修は、「午前8時30分から午後10時まで」というダイソー正社員の“社内定時”に基づき行われた。ダイソーでは表向きの所定労働時間は午前8時30分から午後5時45分までの8時間15分(休憩1時間15分)で、休日は隔週休2日制。だが内藤常務はこれを、「単なる建前」と断言した

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ダイソーで売られていた、「MADEINTHAILAND」のカゴ。

山中さんをうつ病(適応障害)と診断した、バンコクの病院の診断書

山中さんに不法入国・不法就労を強要し、タイへの納税義務を不正に果たさなかった疑いも持たれているダイソー・香取周次顧問(写真は広島市東区の香取会計事務所のサイトより)

広島中央労基署の調査結果復命書。山中さんがうつ病を発症した場所が日本ではないとの理由で労災を認めなかった一方で、不法就労や長時間残業の事実は認めている。

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gulugulu2013/05/20 17:21

コンプライアンスを改善したい宣言→困る人(々)がいて、その人(々)に潰されたって事なんだろう。

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読者コメント

rasp2016/12/25 05:00
労働者の声22013/06/20 00:56
daruma2013/06/09 14:57
syokunin2013/05/21 19:29
元保険の窓口社員2013/05/21 12:52
労働者の声2013/05/20 22:22
zako2013/05/20 08:48
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