Ba:普通の企業
(仕事4.0、生活3.3、対価2.6)
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巨額を投じ、急激な人材採用とM&Aによって、社員数を592人(2011年)→1730人(2012年)→2582人(2013年=いずれも6月末、連結)と、2年で4.4倍に激増させたグリー。その、リスクを極限までとって超短期で急成長を目指した姿勢はグリード(強欲)そのもの。まさにベンチャーの鏡とも言え、賞賛に値するが、勝てば官軍、負ければ賊軍。市場の読みを誤り、経営資源を投じる方向を間違った結果“賊軍”と化したグリーの敗戦処理は、厳しさを増している。人材流出が進むなか、復活の可能性も、パスドラのような「一発当たり待ち」と絶望的だ。田中良和社長は、どこで間違えたのか。“グリー崩壊”の現場を報告する。
【Digest】
◇来年から“ボーナスなし”
◇年俸8%カットも続出
◇3か月で50人辞めた
◇未払い残業代200万円超も
◇アヤシい人事部、ウラでやっちゃう体質
◇給与水準でもDeNAに負ける
◇会社の近くに住めば家賃半額補助
◇ネイティブ一発待ちに賭けている状態
◇チャレンジングな仕事が次々リストラされ…
◇出身はカーニー、ベイン、BCG、アクセン…
◇「田中さんは何が言いたかったんだろう」
◇開発者はコンソールゲーム出身が少ない
◇コロプラ創業者は、元グリー社員
◇ユルい開発本部、イエスマン求める総合職
◇開発本部は「サークル」、バックオフィスが「会社」
◇幹部が「ヤマー」で社員の質問に答える
◇できるだけD社より「後出しじゃんけん」体質
◇来年から“ボーナスなし”
成長が止まり、減収減益決算となった2013年6月期。最終利益は前期比53%減と半減し、固定費を削減しなければ来期の赤字転落も見えてきてしまった。なかでも先行投資で急膨張させた人件費の削減は、急務となった。
業績悪化が決定的となった6月、グリー社内では、来年(2014年1月)から変更となる人事報酬制度についての社員向け説明会が行われていた。任意参加で5回ほど実施されたという。
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中途採用30代正社員の採用内定通知書。年俸は前職によってバラバラ。 |
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現在は、採用時に基準年俸が決まり(左記参照)、その基準年俸の1/14ずつを1カ月分として毎月支払い、6月と12月のボーナス月は1/14が固定ボーナスとしてプラス、さらに業績次第で、昨年までは1~2カ月分の追加ボーナスも出ていた(契約上は年俸の0~25%、2等分して6月と12月に支給)。
来年(2014年)1月からは、月の支払いを、基準年俸の1/14→1/12に変更し、夏冬の1カ月分固定ボーナスを廃止。これによって、仮に年俸基準が同額なら、単純な月の受け取り額は増え、若干の前倒し支給にはなる。制度上は、業績次第で引き続き追加ボーナスの支給(8月と2月)もありうるが、これは期待できないという。
「来年はボーナスが払われないんだな、というのが社内の共通認識です。人件費を削っている中での制度変更発表なので、そう受け取った人が多い。実際、今年6月の追加ボーナスは、出ていない人がほとんどだと思います」(社員)
◇年俸8%カットも続出
社員がそう受け取ったのは、アシスタント業務を行う派遣社員が軒並みカット(契約解除)されるなどリストラが進む空気の中、ちょうど同時期に始まった社員に対する急速な年俸カットの動きが、経営側から示されたからだった。
「6月に入った頃から、山岸さん(副社長)が社員集会などで『厳しくなります』という趣旨のメッセージは発していました。『今年の査定はメリハリをつける』『賞与を全員には出さない』…。でもその時は、その意味がよくわかっていませんでした」(社員)
多くの社員も、業績の悪化を受け、追加ボーナスがないことくらいは覚悟していた。ところが、それにとどまらなかった。6月中旬から始まった年俸改訂の面談で、ダウン提示が相次いだのだ。従来の人事制度のもとで、早々に年俸カットが断行されたのである。
「うちは、ごく標準的な目標管理制度で、S-A-B-C-Dの5段階くらいの査定なのですが、Dがつく人が少なくとも15~20%はいて、この人たちが最大8%のダウン提示を受け、逆にアップするのは、据え置いたら確実に辞めるであろう必要な人と、最も年俸が低い新卒入社の新人くらい。昇給分をまるまる回避してますから、総人件費は確実に減ります」(社員)
今まで年俸が下がることがほぼありえなかった同社において、会社全体でまんべんなく下げているというから、そのギャップは大きかった。面談で各自にフィードバックは行われたが、業績悪化と言えども、まだ赤字ではない。見通しを誤ったのは、経営側の判断ミスによるもの。個人にCやDをつける理由は、どう説明しようが、こじつけになる。
◇3か月で50人辞めた
その結果、離職率は当然のように上がった。「私の知る範囲だけでも、6~8月の3か月間の離職者は少なくとも50人。今年の4月までは、辞める人がすごく少ない会社でしたが、8%ダウンの人は、半年後に再度、ダウン提示されてもおかしくない」(社員)
こうしてみると、来年1月からの新人事制度の狙いは、年俸ダウンの人であっても、月々の手取り給与が減らず生活に支障が出にくいようにする配慮、と考えられる。年俸800万円なら現在、月57万円。年俸8%減となっても、来年の月額給与は61万円だ(ボーナス分が丸々なくなるわけだが…)。
現在のところ、希望退職の募集は発表されていない。特に「対DeNA」を常に気にしてきた同社にとって、イメージダウンを避けたい事情もあるだろうが、指名解雇的に、辞めてほしい社員にだけ年俸ダウン提示を続けてジリジリと追い込み、自発的に辞めていくのを待つ方針のようだ。一気に人員を膨張させた数年前の決断に比べ、生ぬるいし、潔くもない。
「8%下げても、まだ転職市場での相場より高い人もいますから、士気は下がってもダラダラ辞めない人は多いはずです。国内でも、撤退した中国・英国でやったように、手切れ金を積んで辞めて貰ったり、広く希望退職を募ったほうが、固定費削減を断行するには、すっきりしていいでしょう」(社員)
◇未払い残業代200万円超も
こうした人事・人材面での 「グリー崩壊」の序章は、昨年から始まっていた。2012年の秋、グリーに労働基準監督署の立ち入り検査が入り、同社の裁量労働制について、問題点が指摘されたのである.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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グリーのキャリアパスと報酬水準 |
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グリーの現場組織(概要) |
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意思決定カルチャーなど |
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評価詳細&根拠 |
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