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新聞業界は軽減税率「5%への引き下げ」求め政界工作していた!公明党は支持母体が23億円も軽減、国民負担は総額360億円に

情報提供
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新聞に対する軽減税率5%のスローガンをかかげた日販協(日本新聞販売協会)の会報『日販協月報』(2015年8月1日)。赤線は、筆者による。
 新聞に対する消費税の軽減税率適用が決まった。軽減される負担額、すなわち新聞を読まない国民が別途負担することになる額は、筆者試算で少なくとも360億円。このうち、最も熱心に取り組んできた公明党の支持母体(創価学会)が発行する『聖教新聞』は約23億円を免除される。ここに至る道筋をマスコミが報じなかったため急遽決定した印象があるが、水面下では新聞業界による自民・公明への政治献金と選挙支援によって綿密な政界工作が行われていた。しかも、運動の獲得目標は8%の軽減ではなく「5%への引き下げ」だった。政界工作の中心になったのは日販協(日本新聞販売協会)で、2014年度だけで約927万円を、高市早苗、丹羽雄哉、漆原良夫ら130名ほどの議員に献金。同年の衆院選では議員推薦も行った。新聞社が公権力に経営上の弱点や汚点を握られることでジャーナリズムが機能しなくなるのは自明だ。軽減税率適用に至るまでの、職業倫理を放棄して利権を貪った下劣な新聞業界の裏側を報告する。
Digest
  • 「新聞に消費税5%の軽減税率を!」
  • 2つのタイプの政界工作
  • 自民党新聞販売懇話会
  • 政治献金「セミナー参加費」
  • 選挙時の議員推薦も慣行化
  • 地方議会に対する工作
  • 再販問題から消費税問題へ
  • 「押し紙」という大汚点 
  • 「朝刊 発証数の推移」
  • 「押し紙」に消費税?
  • 聖教新聞の負担増
  • 「押し紙」問題の解決が先では

新聞に対する消費税の軽減税率の適用が決まった。対象は、週2日以上発行され、宅配されている一般紙、スポーツ紙、業界紙、政党機関紙である。公明党は、支持母体「創価学会」の日刊機関紙『聖教新聞』(公称550万部)の軽減税率を自ら決め、露骨に利益誘導した。

生鮮食料品と加工食品に対する軽減税率の適用についてはメディアで報じられてきたが、新聞についてはほとんど報じられなかったため、この決定を「寝耳に水」と感じた人も多いはずだ。新聞が議論の対象になっていることすら知らなかった人もいる。

「新聞に消費税5%の軽減税率を!」

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東京・内幸町の日本新聞協会が入るプレスセンター。新聞ジャーナリズムの本部である。

しかし、新聞関係者の間では軽減税率の問題は、自分たちの権益にかかわる重大問題として前々から対策が綿密に検討されてきた。対策とは、政界工作のことである。

しかも、驚くべきことに10%の消費税が導入される時期に、単にこの特別措置の適用を勝ち取るだけではなく、さらに税率を5%に引き下げさせるのが、新聞業界の到達目標となってきた。

実際、今年の7月に開かれた日販協(日本新聞販売協会、新聞販売店の同業組合)の通常総会でかかげられた4本のスローガンの中には、消費税に関する次のようなものがあった(冒頭画像参照)。

文字・活字文化の中軸である新聞に消費税5%の軽減税率を!

新聞業界の内部では、消費税8%の適用では不十分として、5%を前提に議論や政界工作が行われてきたのである。

最終的な決定は持ち越されているものの、書籍・雑誌に対する軽減税率適用のほうは、却下されるとの見方が有力だ。書籍・雑誌を主要商品とする出版業界も、読売新聞社の渡邉恒雄氏らの政界人脈に期待して新聞業界とは着かず離れずの共同歩調を取ってきたのだが、ここに来てはっきりと明暗が分かれた。

2つのタイプの政界工作

新聞業界が軽減税率の適用を目指して行ってきた政界工作は、一般的には、ほとんど知られていない。ジャーナリズム企業が、自分たちの権益を守るために取材対象である政治家と癒着する状況が一般常識としては想像しにくい上に、政界工作の実働部隊を、日本新聞協会ではなく、より知名度の低い「日販協」に置いているからである。

渡邉恒雄氏が巨大メディアが持つ影響力をバックに政界に介入していることは周知であるが、これに対して日販協は、資金面で、あるいは集票面で、政治家に直接的なメリットを提供する役割を担っている。

具体的にその実態に迫ってみよう。

自民党新聞販売懇話会

日販協は1954年に設立された。東京・日本橋にある本部のほか全国に支部を設けている。かつては、「押し紙」問題で新聞発行本社と対峙するなど、新聞業界の浄化に一定の役割を果たしていたが、政府による規制緩和策の中で、再版制度の是非が議論されるようになる1990年ごろから急激に新聞発行本社と共同歩調を取るようになった。そして1996年には、日販協政治連盟を設立して、はばかりなく政界工作に踏み出していく。

一方、日販協の受け皿になっている議員サイドの組織は、自民党新聞販売懇話会と公明党新聞問題議員懇話会である。自民・公明の両党が政界工作の主要な相手である。

このうち、自民党新聞販売懇話会の歴史は古い。1987年に元日経新聞の記者・中川秀直議員(すでに政界を引退)らによって設立され、その後、日本の政界のトップに駆けあがった政治家が続々とメンバーに加わった。首相のポストを得た政治家だけでも、羽田孜、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎の4氏がいる。他に石原慎太郎氏や小沢一郎氏、それにNHK出身の水野清氏の名前もある。

次に示すのは、1991年当時の会員リストである。

■自民党新聞販売懇話会のメンバー

このうち小渕恵三氏は、2000年5月、首相の座で急死した時期、自民党新聞販売懇話会の会長を務めていた。小渕内閣の下で、新聞ジャーナリズムの抵抗もなく、住民基本台帳法、新ガイドライン、通信傍受法、国旗・国家法など、現在の軍事大国化につながる法案が矢継ぎ早に成立している。この現象を作家の辺見庸氏は、「1999年問題」(『私たちはどのような時代に生きているか』角川書店)と命名した。

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元読売新聞記者で新聞販売懇話会の会長を務める丹羽雄哉議員。

現在の自民党新聞販売懇話会の会長は、読売新聞記者から政治家へ転職した丹羽雄哉議員である。メンバーも100名を超えていると思われる。

一方、公明党新聞問題議員懇話会の会長は、漆原良夫議員である。公明党への新聞関係者の急接近は、特にここ10年ぐらいの時期に活発化している。

政治献金「セミナー参加費」

現在公表されている最新の政治資金収支報告書(2015年11月公表の2014年度分)によると、日販協政治連盟は、927万円の政治献金を支出している。

まず、「セミナー参加費」として総計で236万円。支出先は、述べ17人の議員や政治団体。詳細は次の通りである。

政治家名金額年月日
漆原良夫(公明)400,000H26.1.20
中山泰秀(自民)60,000H26.2.17
丹羽雄哉(自民)600,000H26.3.18
自由民主党奈良県支部100,000H26.3.28
中川雅治(自民)60,000H26.4.4
清和政策研究会140,000H26.4.4
柴山昌彦100,000H26.4.18
清和政策研究会60,000H26.4.18
清和政策研究会100,000H26.5.9
中山泰秀(自民)60,000H26.6.10
高市早苗(自民)160,000H26.6.3
中川雅治(自民)60,000H26.7.3
中川雅治(自民)100,000H26.9.8
斉藤鉄夫(自民)120,000H26.11.4

とよた真由子(自民)60,000H26.11.10
公明党100,000H26.11.17
中川雅治(自民)80,000H26.12.11

■参考:エクセル資料

◇政治献金「寄付金」

一方、「寄付金」はなんと134名もの国会議員に贈られている。寄付額は、4件の例外(漆原良夫氏の15万円、丹羽雄哉氏の10万円、斎藤鉄夫氏の10万円、小田原きよし氏の6万円)を除いて、いずれも5万円。遊興の「おこずかい」程度の額だが、金額を総計すると691万円にもなる。

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寄付金を受けた134人の議員一覧

寄付金を受けた議員名は、右の資料に示した。また、次のPDF資料でも示した。

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「押し紙」は、販売店で一時保管され、秘密裏に回収される。

2014年度下期の新聞発行部数一覧(ABC部数)。詳細はPDFで新聞のセット版(朝刊・夕刊のペア)が激減していることが、夕刊の数値から読み取れる。赤線の部分。

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2015/12/28 10:57
 2015/12/27 10:52
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