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『大東建託の内幕』の出版を中止せよ――大東建託から版元に内容証明届く “訴訟ちらつかせて批判封じ”作戦も、逆効果か

情報提供
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『大東建託の内幕』の出版差し止めと回収、今後出版しない旨の誓約書の提出を求めて大東建託が出版元の同時代社に送った内容証明郵便(2018年12月12日付)。具体的にどの記述に問題があるのかはいっさい書かれていない。また筆者やMNJに対しては大東建託は何も苦情を言ってきていない。
 MyNewsJapan連載を書籍化した『大東建託の内幕“アパート経営商法”の闇を追う』(同時代社)は、ことし6月の出版後1週間で初刷1,500部を完売、以後増刷を重ね、12月現在で1万4,000部が全国に流通し、この種のノンフィクション本としては大反響となった。筆者の元には、同書を読んだ顧客や社員・元社員らからの悲鳴が連日届いており、新聞・テレビが長年黙殺してきた「大東建託商法」の問題の深刻さを雄弁に物語っている。こうした状況のなか、2018年12月12日、大東建託から出版元・同時代社に内容証明郵便が送りつけられた。出版は名誉毀損であるから、中止・回収し、今後発行しない旨の誓約書を出せ――というのだ。同書を契機とした批判の高まりを無視できなくなり、名誉毀損訴訟による“恫喝”を企てているものと思われる。むろん筆者も出版社も「出版中止要請」に応じるつもりはない。不当な言論弾圧には断固として戦う決意を互いに確認し、「有事」を想定して警戒態勢に入った。
Digest
  • 内容証明郵便とどく
  • 「だまされた」と嘆く東北のオーナー 
  • 農協の役員から紹介された
  • 「手残り25万円と確かに説明した」
  • 「10万円たらずしか残らない!」
  • 「悔やみながら亡くなった父」
  • 「しっかり書いてください」

内容証明郵便とどく

2018年12月12日、拙著『大東建託の内幕“アパート経営商法”の闇を追う』の出版元である同時代社の代理人弁護士(瑞慶山茂・小園恵介両弁護士)に宛てて大東建託から、同社代理人の浅井隆・岡本陽介両弁護士名で内容証明郵便がとどいた。内容は、いささかぶしつけで高圧的だ。

(前略)当社としては、貴社の上記書籍は、当社の名誉を毀損し、業務妨害行為であると判断しております。

よって、上記書籍の発行を差止め、今後発行しない通告致します。

 12月末日までに上記書籍の発行を止め、流通した上記書籍を回収し、今後発行しない旨の誓約書を提出して下さい。

『大東建託の内幕』をめぐっては、大東建託から同時代社に対して出版直前の5月~6月にも出版差し止めを求める配達証明郵便が送られているが(※)、出版後の「警告」は今回がはじめてである。

【大東建託、批判本出版に「民事刑事にわたり」法的措置ちらつかせ著者と版元を恫喝――続々と発覚する違法残業、さらに5支店で】参照

「名誉毀損」「業務妨害」と言うからには、具体的に「ここが嘘だ」という指摘があってしかるべきだ。いったい、何頁のどの記述が問題だというのか。筆者は大東建託の手紙をくまなく見た。しかし、2枚からなる手紙のどこにも、具体的な指摘はない。根拠を示さないまま出版を中止・回収し、さらには、今後出版しないとの「誓約書」まで出せというのだ。上場企業や弁護士のすることか、とあきれてしまう。

興味深いのは、著作内容にもっとも責任を負っている筆者自身に対しては、何も苦情の類を言ってきていない点だ。本書のもとになった原稿を掲載しているMyNewsJapanについても同様だ。クレームゼロ。筆者は大東建託の言い分を聞こうと、たびたび質問をしてきたが、ここ数年間は完全無視が続いている。

記事を書いた張本人には何も言わない一方で、『大東建託の内幕』の版元だけを「名誉毀損」だなどと難じている。言動・行動に一貫性がない。奇妙な態度である。

『大東建託の内幕』の内容については、筆者は自信を持っている。出版により大東建託が多々、深刻な問題を抱えている実態が、さらに浮き彫りになり、本書の指摘の正しさをますます証明している。社員や元社員、顧客から続々と情報提供が寄せられているのだ。「よく書いてくれた」「もっとひどい話がある」といった反応ばかりである。内容に虚偽がある、といった指摘は皆無だ。

大東建託の「内容証明」は、いわゆる「批判封じ」を狙った名誉毀損訴訟の準備とみていいだろう。仮に提訴すれば、批判を封じる効果が得られるどころか、逆に問題がさらに噴出し、大東建託は回復しがたいダメージを受けることになると筆者は推測している。それだけ、問題が潜在しているように思う。

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『大東建託の内幕』の新聞広告を見て筆者に連絡してきてくれたAさん。「大東建託と銀行にだまされた」と嘆く。

「だまされた」と嘆く東北のオーナー 

さて本稿では、筆者のもとに連日届いている多くの悲鳴のなかから、債務の返済困難に陥った、あるオーナーの事例を報告したい。

東北地方の高齢の女性(70歳代)から連絡をもらったのは、秋口のことだった。

『大東建託の内幕』の新聞広告を見て、本を買って読んだ。たいへん共感した。自身も大東建託に苦しめられているという。

「大東建託と銀行にだまされた。ぜひ話を聞いてほしい」――。電話口で、女性は嘆いた。小春日和の某日、筆者は浅草駅から特急列車に乗り、彼女の自宅に向かった

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亡くなった父が「病気の子どものために」と約20年前に水田をつぶして建てた大東建託のアパートの前に立つAさん。契約時の説明とは裏腹に新築当初から採算が厳しく、やがて収支が赤字になった挙句に、大東建託が一括借り上げを解約、銀行の債務が払えなくなってしまった。弁護士に相談して解決策をさぐっている。

銀行への返済はAさんらの肩に重くのしかかった。家賃を下げられて収支が悪くなり、生活資金を補填して払っていたが、とうとう一括借り上げを解消され、入居者も出て行って支払いがまったくできなくなった。返済を猶予してもらっているが、競売にかけられるのではないかと不安な日々を送っている(写真は銀行に対する返済猶予の申し込み書類)。

Aさん一家の「アパート経営」20年の苦しい歴史が記録された預金通帳。

築20年を前に大東建託は一括借り上げを解約した。Aさんが資金不足で外壁の修繕ができなかったことを理由とした。解約の後、消去された「大東建託」の文字。

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sarutoru2018/12/26 02:21

>出版は名誉毀損であるから、中止・回収し、今後発行しない旨の誓約書を出せ――という

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読者コメント

読者2021/10/27 21:25
JPX4002019/05/14 02:03会員
書籍読者2019/04/13 21:40会員
書籍読者2019/03/15 01:14会員
かおかお2019/03/01 09:02
宮崎 幸助2019/02/28 08:00
書籍読者2019/02/16 16:54会員
元社員2019/01/24 20:08会員
読んでませんが2018/12/25 19:47
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記者からの追加情報

文中「上野駅」とあるのは「浅草駅」の誤りでした。お詫びして訂正します。三宅勝久 (2018年12月25日、本文訂正済み)
本文:全約6700字のうち約5200字が
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