オズボーン論文より。機械化する際のボトルネックとなるタスクと必要な能力要素。つまり、人間にしかできない仕事の要素を説明している部分。
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労働力人口の減少と人手がかかる高齢化が同時進行するため、テクノロジー(IT、AI、ロボティクス…)を活用した自動化を急速に進めなければ社会が回らなくなるのが、2020年以降の日本だ。機械と競合する分野の仕事は、急速に人間から機械に代替され、人間は別の業務や別の職種に吸収されていく。たとえば「検針員」という仕事は、東京電力が2020年までに全戸にスマートメーターを設置することで、人間の手から離れ、通信で自動的にデータを取得する方式に移行。明治時代から150年近く続いた電気の「検針員」という職業が、丸ごと消滅に向かう。ガスや水道の検針も同じ道を歩むことになる。
【Digest】
1.創造ワーク
2.感情ワーク
3.信用ワーク
4.手先ワーク
5.ボディワーク
それでは、人間にしかできない仕事とは何か。この分野で有名な
オズボーン論文※では、以下3つを仮説として提示し、これをもとに分析を進めている。
①Perception and manipulation tasks(認識と手動操作が必要なタスク)
非構造化作業環境に関連するタスクで、家事労働の大半がこれに該当する。「1日に何千回も繰り返される、1つのタスクに関する無数の小さなバリエーションに対して、ロボットの仕事は信頼できない」。
②Creative intelligence tasks(創造的知性が必要なタスク)
コンセプト、詩、作曲、科学理論、調理レシピ、ジョークなどを創り出す作業。「コンピュータに絶妙な冗談を言わせるためには、人間に匹敵する豊富な知識を持つデータベースとベンチマーク手法が必要」。「人間の創造性の根底にある心理的プロセスを特定するのは困難」としている。
③Social intelligence tasks(社会的知性が必要なタスク)
交渉、説得、介護など、幅広い業務において重要となるのが、人間の社会的知性である。「人間の自然な感情のリアルタイム認識は依然として困難な問題であり、そのような入力に知的に反応する能力は、さらに困難である」。なぜなら、「人間が持っている常識の情報が多く、それを明確にするのが困難」だからだとしている。
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そのうえで、この3つは、「O*NET」(米国の職業データベース)上に記された能力変数でいうと、どれに該当するのかを定義した(※O*NETとは、日本に類似の仕組みがないためイメージしにくいが、職業を分類したうえで各職業に必要な能力を定義したものである)。それぞれ以下の通りで、能力変数は計9つである。
①認識と手動操作が必要なタスク=「Finger Dexterity(指の器用さ)」「Manual Dexterity(手先の器用さ)」、「Cramped Work Space,Awkward Positions(窮屈な作業スペース、厄介な位置)」
②創造的知性が必要なタスク=「Originality(独創性)」「Fine Arts(すばらしい芸術)」
③社会的知性が必要なタスク=「Social Perceptiveness(社会的知覚)」「Negotiation(交渉)」「Persuasion(説得)」「Assisting and Caring for Others(他者を助け気づかう)」
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この9つの変数が、自動化におけるボトルネックであると定義し、あとは機械学習の研究者たちがワークショップを開き、主要な70職種について自動化可能か否かを印象論で決め、ボトルネック要素の含有度合いをパラメーターとして、900以上の職種全体に拡大推計したものが、オズボーン論文だ。
驚いたのは、なんと現場の働き手と全く接触することなく、その職種に対する研究者の頭の中のイメージだけで決めつけ、それを官製データベースと突き合わせて、机上でひたすら計算を重ねていることだ。頭でっかちな学者らしい手法である。現場取材に基づくボトムアップを徹底した私の手法とは正反対だ.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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『変なホテル』宿泊者の書き込み |
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2007年1月9日の基調講演でiPhoneを発表するジョブズ |
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自走するオレンジ色のロボット「ドライブ」が、黄色い商品棚を持ち上げ、作業員の前まで運び、自動で戻っていく (アマゾンプレスリリースより) |
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