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ケータイ・スマホ使用や基地局近くの学校通いで、子どもの認知機能悪化の研究増加――2020年5Gスタートで電磁波ばく露リスク急増へ

情報提供
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学校周辺の携帯基地局からの電磁波で生徒全体の認知機能が低下していた。これは、米国「American Journal of Men's Health」掲載の論文に掲載された写真。
 携帯電話(スマホ)が送受信する電磁波によって、短期間のばく露であっても、子どもの脳に悪影響が出るという研究結果が近年、増えている。今年(2019年)発表された研究では、学校近くの中継基地局の影響で、その学校の生徒全体の認知機能テストのスコアが低下していた。2018年の研究では、わずか1年間のばく露だけでも、右耳で携帯電話を使う場合に、特に右脳の機能に影響が出ていた。また、胎児期の発達時期に電磁波を浴びると、発達障害の一つである注意欠如・多動性障害(ADHD)のリスクが増えることも、デンマーク・韓国・オランダ・ノルウェイ・スペイン5か国の総数83,884人を対象とした調査によって、2017年に再確認されている。近年、日米で子どもの発達障害が増加中というデータがあり、その原因の一つが電磁波である可能性を示している。2020年から商用の本格導入が始まる第5世代移動通信技術(5G)によって、街中には携帯基地局が激増し、家の中でもあらゆる家電やセンサーがネットに接続され、子どもの電磁波ばく露は急増が見込まれる。各家庭で、子どもの脳を守るためにできる方法を最後にまとめたので、気になるかたは実践してほしい。
Digest
  • 学校近くに中継基地局で生徒の認知機能低下
  • 右耳で使うと右脳に影響、左耳では左脳に影響
  • 世界最大規模の調査でも発達障害のリスク上昇 
  • 5G導入でばく露激増の危険
  • 子どもの脳を守るためにできること

携帯電話やスマホの電磁波の危険性として、従来から注目されてきたのは、長期間の使用による脳腫瘍のリスクの上昇だった。WHOの専門機関である国際がん研究機関(IARC)は、脳腫瘍リスクを示す研究を根拠に「ヒトに発がんの可能性がある(2B)」と評価している。

それに加えて近年、1年間程度の短期間の使用でも、子どもの脳の働きに悪い影響を与えることを示す研究が、続々と示されている。

学校近くに中継基地局で生徒の認知機能低下

学校の近くに立つ中継基地局の電磁波によって、学校全体の生徒たちの認知機能が悪化することを示す研究が、アメリカの「American Journal of Men's Health」の2019年1-2月号に発表された。同誌は健康の分野に関する論文を掲載する査読付き学術誌である。

サウジアラビアのサウード国王大学のグループの研究だ。

その内容は、近隣に中継基地局のある学校を二つ選び、先ず両方の学校の教室の電磁波の強さを測定。教室の中央と両端の3か所を2回測定して平均値をとった。学校1の教室の電磁波が2.010μW/cm2に対して、学校2は10.021μW/cm2と5倍程度の開きがあった。

生徒たちは、1日6時間、週5日間、その電磁波を浴び続けていることになる。

身長や体重や、社会経済的状態などに偏りが出ないように配慮し、それぞれの学校から150名ずつ、参加者を募った。病歴や、自宅の近くに中継基地局がないこと、自宅の寝室にWIFIルーターなどが設置されていないことなどをチェックした結果、最終的な参加者は、学校1から124名、学校2からは93名になった。

ケンブリッジ大学が開発した、タブレットを使った子どもの認知機能テスト2種類を実施した。テストは、視覚刺激への反応の速さと正確さを測るテスト(Motor screening test)、短期間のワーキングメモリーの機能を調べるテスト(Spatial Working memory test)。

そのいずれのテストでも、電磁波が強い学校2の生徒のスコアは、学校1の生徒のスコアより、統計的に有意な差がでた。

上記研究は、ばく露と影響を同時に見る横断研究で、脳の機能に影響を与える他の因子の考慮が十分とは言えない限界はある。

単体の研究としては問題が残るが、下記のように、従来より、携帯電話の電磁波が子どもの脳の認知機能へ影響を与えるという研究がもともと存在しており、それを中継基地局の電磁波でも確認したという点が評価されるべきであろう。

学校の電磁波による被害といえば、2012年に福岡の大宰府東小学校で、約100m離れた中継基地局の影響で生徒たちが体のだるさ、喉の痛み、喘息などの症状を訴えて問題になったことがある。

その時、九州大学の吉冨邦明教授が小学校の中の電磁波を測定した値は、最大で3.76μW/cm2で、今回のサウジアラビアの2つの学校に相当する値となっている

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研究の結果を示す図(筆者作成)。携帯電話を使う側、つまり電磁波が一番吸収される側の脳の機能が低下する。

デンマーク、韓国、オランダ、ノルウェー、スペインの5か国追跡調査の

特別支援教育の児童数の増加。文科省資料より

第5世代移動通信システム(5G)の特徴(総務省資料より)

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読者コメント

とみん2020/04/16 23:00
植田武智2020/01/24 10:08会員
とみん2020/01/09 00:38
とみん2019/12/31 00:44
hopper2019/12/03 23:01
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