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読売新聞、暴力団まがいの人物と結託し販売店の統合推進 司法はNO

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2005年12月9日、第18回口頭弁論での尋問より
 販売店主・真村氏が、読売新聞による不当な契約解除に対し、販売店としての地位確認を求めていた事件で、9月22日、福岡地裁久留米支部は、原告側の訴えを認め、地位を確認する一審判決を下した。販売店が新聞社に勝訴したのは史上初めて。裁判のなかで明らかになったのは、読売新聞社と暴力団関係者との深いつながりであった。
Digest
  • 脱サラして店主になる
  • 「押し紙」の発生
  • 入れ墨をした有力店主
  • 暴力事件の前歴
  • 優越的地位を利用する読売
  • 読者一覧表の提出拒否
  • 「ひとがいいから店主には向いていない」
  • 新聞販売網の再編問題
  • 架空の配達地区を設定する
  • 一歩前進した裁判所の判断
  • 沼沢メモ 「自由増減」の意味

この事件は、当時、「福岡連合読売会」の会長を務める三井(仮名)氏が、読売の支援をバックにして久留米市など筑後地区にある販売店の経営権を次々と奪い取ろうとしたもの。そのための最初のプロセスは、ターゲットに選んだ販売店と、読売の商契約を解除させることだった。そのうえで、自分が経営権を握ろうとしたのである。

三井氏に代わって契約解除の役割を担ったのが、読売・西部本社である。読売はそのための理由をあれこれとこね上げた。裁判では、読売が示した商契約の解除理由に正当性があるかどうか、が争われた。

事件の発端は、2001年5月17日にさかのぼる。この日、福岡県八女郡広川町にある「YC広川」に、読売の担当員が姿を現した。

 YC広川の真村久三店主(訴訟の原告・下記写真)によると、
担当員は、 「なんでわたしが来なければならんとやろうか」

と、奇妙なことを呟きながら店に入ってきたという。真村氏が回想する。

「上司から嫌な役割を命じられていたから、こんな言葉を吐いたのでしようね」

用件は、配達区域の分割を、真村氏に通告することだった。

当時、YC広川は約1,500部の新聞を配達していた。担当は、このうち約500部分に相当する配達地区を一旦、読売に返上してほしいと言うのだった。真村氏が事情を突っ込んで尋ねてみると、この配達地区をYC広川に隣接する地区のYCに譲渡する予定があるらしいことが分かった。

読売は裁判の場で、それを否定したが、真村氏はそんなふうに考えたのである。というのも、このYC販売店は、福岡連合読売会の三井会長の弟が経営しているからだ。

脱サラして店主になる

真村氏が新聞業界に入ったのは1988年9月だった。かねてから自分で事業を営みたいと考えていたので、自動車教習所の教官を退職し、800万円の開業資金を準備してYC広川の経営権を手に入れた。

 ところが開業の手続きをしている段階から、不可解なことが次々と持ちあがったという。

「当初は開業資金が800万円という話でしたが、実際は1,200万円を超えてしまったんです。また、開業してすぐに西部流通という会社から、『拡張促進材料費用』の名目で170万円の請求を受けました。さらに、ファックスや電話機などを一方的に取り替えられてしまったのです」

 この業者の態度もおかしかったという。
 「嬉しそうに笑っていました。お宅で50台を超したと言ってね」
しかし、一旦、漕ぎ出した船であるから引き返すわけにはいかなかった。

「押し紙」の発生

販売店経営を始めてすぐに、真村氏は予想もしない問題に遭遇した。真村氏が前任者から引き継いだ新聞は、1520部。ところが購読契約が切れる読者が多くて、1年余りで約400部も配達部数が減ってしまったのである。しかし、読売からの送り部数は、変わらなかった。その結果、「押し紙」が急増したのである。

そこで真村氏は営業に1,000万円の資金を投入した。営業専門の従業員も雇った。独自のユニフォームも作った。普通、新聞拡販は配達や集金の合間をぬっておこなうか、またはセールス団の力を借りるのだが、真村氏は独自の方法を取ったのである。

その結果、最高時には1,700部までに部数をのばした。「押し紙」もほとんど無くなった。まさに才覚のたまものだった。

読売も、真村氏の手腕を高く評価していたようだ。真村氏が店を改築した際には、ロッカーを贈っている。部数至上主義の読売であるから、成績の優秀な店主を優遇しても不思議はなかった。

入れ墨をした有力店主

しかし、有力店主の三井氏が読売の力を借りて、久留米市など筑後地区にあるYC販売店を次々と私物化し始めると状況が変わった。

三井氏は闇社会との関係も噂されている人物である。新聞ビジネスに関しては、福岡県内だけではなくて、佐賀県でも販売店を経営しているほか、折込チラシの代理店やセールス団の経営にまで手を広げていた。

このうちセールス団については、本人の陳述書によると、「1995年ころ、読売二十日会というセールス団」を発足させた。現在は、ヒューマンコーポレーションに変更している。「二十日会」という名称は、山口組系の暴力団として知られている。

 2005年12月9日、第18回口頭弁論で証人に立った三井氏は、原告側弁護士から、
 「東京で関東二十日会係の暴力団に所属した事はありませんか」

と、尋問された。原告側が、事前にその情報を入手したうえでの質問だった。

  これに対して、被告弁護士が、
 「異義があります。本件とは関係ありません」

と、遮る場面もあった。

この尋問では、三井氏自身が、入れ墨をし、指を落としていることを認めている(右上文書参照)。これらは暴力団関係者に特徴的であり、堅気の人物ではない。読売新聞は、こうした人物を販売店団体の会長に据え、暴力を含めた圧力によって、販売店政策を推し進めているのだ。

ちなみにこの尋問を傍聴するために、黒服を着た男たちが続々と法廷に詰めかけた。そして三井氏の尋問が終了すると、男たちは一斉に起立して拍手を送った。あわてた被告側弁護士が、「出ていけ!」というかのように、黒服たちに顎で合図したという。

暴力事件の前歴

三井氏の黒い前歴が、真村氏ら筑後地区の販売店主たちに恐怖感を与えていたことは間違いない。事実、三井氏は真村氏に対して暴力を振るった前歴があった。1996年の夏のことだった。

読売から経営の才覚をかわれた真村氏が、新しいセールス団を組織するという噂を三井氏が聞きつけたことが原因のようだ。三井氏は自分の息のかかった店主たちを引き連れて、外車でYC広川へ押しかけて来たのである。

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三井氏らによって行われた暴力行為の詳細
 三井氏は2番目に店の中に入ると、
 「あんたはどげん思うとっと」
 と、言って真村氏を4、5発殴った。それから缶を床にたたきつけ、電話機などを次々とひっくり返し始めた。まったく訳が分からない真村氏は、

「おちつかんですか」

と、三井氏を制した。それから数分後に、やはり三井氏から呼び出された読売の担当員が到着した。三井氏はこの担当員の襟首を掴み上げると、真村氏を解任するように迫ったのである。

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読売担当者と三井氏との金銭の貸し借り、真村氏に対する暴行事件などが裁判所の判断として事実認定された(判決文より)

裁判の中で、読売の担当員と三井氏の間で行われた金銭の貸し借りも明らかになった。三井氏が担当員のためにお金を工面していたのある。三井氏はこの担当員が筑後地区を担当することを希望した。そして、実際に人事異動が行われた。

こうして三井氏と担当員は、あうんの呼吸で一連の改廃騒動を起こして行ったのである。なお、三井氏は、2002年1月ころ、広域指定暴力団の本部がある地域も、自分の配達地区として譲り受けている。

優越的地位を利用する読売

真村氏は配達地区の分割要求を断り続けた。これに対して読売は、商契約を更新(1年満期)しない旨を真村氏に通知した。真村氏が言う。

「わたしは裁判所に地位保全の仮判決を申請しました。裁判所はわたしの訴えを認めてくれました。しかし、読売はなおも契約を解除するための方法をあれこれと持ち出してきました。たとえば、誓約書を突きつけられました」

 それには次のように記されていた。

「平成13年12月から平成14年の7月までの8ヶ月で110部を増紙。それができなければ、取引中止をされても異議は申しません」

8ヶ月で100部の増紙は、酷な要求だった。もちろん真村氏は捺印を断った。誓約書の約束が達成できなければ、契約解除の理由になるからだ。

次に読売は、YC広川を「死に店」扱いにすると宣告した。「死に店」とは、店を実質的に本社から絶縁の状態に置くことである。当然、営業活動などに必要な補助金は支給されなくなる。セールス団の派遣も受けられない。担当員の訪店もなくなる。新聞休刊日さえも教えてもらえなくなるのである。

読売は、自らの優越的な地位を利用して、このような方針を徹底したのである。

読者一覧表の提出拒否

 三井氏にターゲットにされ、読売が契約解除に乗り出した次の販売店は、YC久留米中央だった。荒木龍二店主が言う。

「8月31日の午前9時ぐらいでした。担当員とその上司がわたしの店にやってきました。店の中の椅子に腰を下ろすなり『読者一覧表』を出すように命じてきました。この時、わたしは自分の店もつぶされるのだと覚悟しました」

 『読者一覧表』は販売店にとって最も重要な書類だ。新聞社が販売店を廃業に追い込むときに、まず、手に入れようとする書類である。これさえあれば強引に店を改廃して新しい店を設け、そこから新聞を配達できるからだ。荒木氏は、
 「弁護士と相談した上で決めます」

と、返答した。

「われわれは弁護士と取り引きしているのではありません」

 その後、押し問答の末に、読売の担当員がきっぱりと宣告した。

「契約違反ですから、商契約を解除します」

読者一覧表の提出拒否を、商契約違反にこじつけたのである。

 荒木氏の店の近くに、仮設の販売店が設けられた。新聞はそこから配達されるようになり、荒木氏の店には卸されなくなってしまった。
そして、この仮設店を運営するために、各販売店に対して、人員を動員するように通知がなされた。後にこの販売店の店主には、三井氏が就任した。

 荒木氏が読者一覧表の提出を拒否したにもかかわらず、仮設店から、なぜ新聞を読者へ届けることが出来たのだろうか。荒木氏が推測する。

「半年ほど前にパソコンを管理している会社の社員がやってきて、『メニューを変えます』と言って、30分ぐらいパソコンをいじっていました。それから『コピーを持ち帰りますね』と言ったんです。この時、おそらく読者一覧表をコピーして持ち出したのではないかと思います」

しかし、半年のうちに読者も変わる。当然、新聞が届かなくなった読者もいた。苦情を受けたのは荒木氏だった。そこで荒木氏は、隣接する地区のYC久留米西から「押し紙」をわけてもらい、読者に届けたのである。YC久留米西の店主は、後に荒木氏に協力したという理由で、読売会(店主会)を除名された。

「ひとがいいから店主には向いていない」

さらに同じ久留米市にあるYC宮の陣も、三井氏のターゲットになった。宮の陣地区は、都市計画で人口が急増した地域である。それに伴って、YC宮の陣の部数も増えた。三井氏はここに目を付けたらしい。

YC宮の陣の松岡進店主を解任するために読売がこじつけた理由は、「ひとがいいから店主には向いていない」というおかしなものだった。

3人の店主は2002年9月に、福岡地裁久留米支部に地位保全の裁判を提起した。そして法廷で読売が示した契約解除の理由に正当性があるかどうかが、検証されたのである。

新聞販売網の再編問題

さて、読売と三井氏のコンビは一体、何をもくろんで次々と販売店を狙ったのだろうか。わたしは、事件の背景に新聞社が必要に迫られている新聞販売網の再編問題があるのではないか、と考えている。読売は公称とはいえ1,000万部の発行部数にまでこぎつけた新聞社である。報道内容はともかく、新聞ビジネスに関しては、他社の先を走っている。

販売網の再編に迫られているのは、政府の規制緩和策の中で、いずれ再販制度の撤廃が避けられなくなるからだ。たとえ再販制度が堅持できても、インターネットの普及により、新聞離れが急速に進み、販売店の経営が苦しくなってくる。その結果、新聞の宅配制度が危機に立たされることは疑いない。

その時に販売網が合理化されていなければ、新聞配達業務への参入を狙っている宅配会社に業務を奪われかねない。あるいは、郵政公社も新聞宅配に参入して、ライバルになるかも知れない。とすれば新聞社は、自社であらかじめ販売店の整理統合を完了して、対抗せざるを得ない。

スケールメリットを発揮する宅配会社に太刀打ちするには、

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地位確認を認めた判決文。文春などマスコミ企業御用達の喜田村洋一氏も被告側弁護士に名を連ねる。慰謝料、弁護士費用などその他の請求は棄却された

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販売維新の会2016/03/03 16:28
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田代裕治2009/05/17 21:19
田代裕治2009/05/17 21:11
田代裕治2009/05/17 21:08
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