“命が担保”との批判を浴びる中、大手サラ金各社は「サラ金保険」を続々とやめた。これまで自殺率を聞いても回答を拒否してきた各社は、金融庁が今年になって発表した“サラ金死”を疑われかねない調査結果に慌てた模様だが、金融庁資料には肝心の自殺者数や顧客数に対する自殺率は出てこない。やむを得ず推定で試算したところ、アコム、アイフル、武富士だけで年間2,000人前後が自殺している可能性が浮かび上がった。顧客10万人あたりの自殺者は100人に迫り、全国平均の2~4倍と高い水準だ。
【Digest】
◇自殺数はサラ金各社ともに「公表していない」と回答拒否
◇金融庁の発表資料からもわからない自殺率
◇サラ金死に迫るフローチャート
◇サラ金大手の死因判明分中の自殺の割合は20~30%台
◇信用しがたいプロミスの死因判明率100%
◇貸付残高100万円当たりの保険料は月300円強
◇年間顧客死亡数アコム9,000人超(推定)
◇アコム、アイフル、武富士で年間2,000人前後が自殺か
◇100人超/10万人、全国平均2~4倍以上のサラ金顧客自殺率
◇サラ金顧客層(20歳~59歳)の全国比でも超高率
◇サラ金保険中止は“サラ金死”を隠すため?
「
“命が担保”を一番引き受けたのは明治安田生命」にて伝えたが、消費者信用団体生命保険(サラ金保険)がいいか悪いかということより、筆者の関心は「自殺の実態」にあった。金融庁は「これ以上の調査は難しい」と幕引きモード。今回は「サラ金死」の実態に迫る。
◇自殺数はサラ金各社ともに「公表していない」と回答拒否
生保各社の約款には、共通して次のように書かれている。
第14条(請求手続)
【1】保険金の支払事由が生じたときには、保険契約者また保険金受取人はすみやかに当会社に通知してください。
【2】保険金受取人は、当会社に次の書類を提出して保険金を請求してください。
(1)死亡保険金
1・死亡保険金支払い請求書
2・被保険者についての医師の死亡診断書または死体検案書
3・被保険者の死亡事実の記載のある住民票
4・被保険者の過去一定期間の債務の状況を示す書類
(略)
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約款にはさらに「1年以内の自殺」「戦争その他の変乱」の場合には保険金は支払われないとある。
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(上)アイフルが自殺した顧客の遺族に送った「死体検案書依頼書」 (下)保険金目的で行方不明者の死亡者を探すため、武富士が役所に送った住民票請求書
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保険請求の際に、死亡診断書なり死体検案書で死因を確認しているということだから、サラ金会社と保険会社は死因を把握しているはずだ。特に自殺については確認する必要がある。
先に述べたとおり、保険の記録を調べれば自殺者が何人いたのかがわかる仕組みなのだ。筆者は昨年来、サラ金各社にたずねてきた。
--顧客の死亡者数、自殺者数を教えてほしい。
反応は芳しくなかった。
■プロミス
「弊社におきましては、対外的に開示しておりません、申し訳ございませんが、今回は回答を差し控えさせて頂きます」(2006年4月6日)
■アコム
「公表している数値ではありませんのでご容赦下さい」「死亡原因については統計をとっておりません」(2006年4月10日)
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「顧客の死亡者数、自殺数」の問い合わせに対しての回答。2006年4月は回答拒否だった。上から、プロミス、アコム、武富士。
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■武富士
「三宅勝久氏ならびに『週刊金曜日』とは、現在係争中のため、回答は差し控えさせていただきます」(2006年6月14日)
■アイフル
「公表していない情報なのでお答えできない。生保会社との信頼関係がある。(非開示は)生保側からの依頼ではない。当事者(顧客)に関しては、必要な情報は提供している」(2006年4月13日、電話回答)。
公表していないから公表しないと、理由にならない理由で大手各社とも口をつぐむばかりである。
今年春の金融庁「貸金業制度等に関する懇談会」では、アコムの木下盛好社長に直接尋ねたこともある。
--木下社長、保険に関して、死亡者や自殺の件数は公表されないんですか?
木下「公表する必要はないでしょう」
--そうですか?
木下「そうですよ」
軽くいなされてしまった。
◇金融庁の発表資料からもわからない自殺率
途方に暮れていたところへ現れた手がかりが、金融庁が今年6月から10月にかけて明らかにしたサラ金保険の調査結果である。
「お客さま」に対しては傲慢なサラ金会社も、監督官庁には弱い。何を聞いても無視されていたサラ金が、当局の問い合わせには慌てて回答しているわけだ。想像するだけで愉快である。
金融庁もやればできるじゃないか。たのもしい気もするが、よく考えればこれまでサラ金がすき放題の横暴をしてこられたのは金融庁の「監督」が甘かったためだ。金融庁が武富士をしっかり処分していれば、筆者が武富士から不当に訴えられることもなかっただろう。
調査結果は表をご覧いただくとして、重要なのはこの数字の読み方だ。
自殺者は何人いるのか。
自殺率はいくらか。
目を凝らして発表資料を見渡したが、期待していた肝心な数字がどこにもない。
データはすべて延べ数や割合、あるいは、5社または17社分を合わせた保険の総支払件数。顧客ひとりが何件ものサラ金で借り入れしていることを考えれば、これだけでははっきりしない。つまり、実数として何人の顧客が死亡して保険の対象となったのか、何人の顧客が自殺したのかがつかめない。
--せめて大手各社の死亡者数くらいだせないんですか。
金融庁に期待をこめて問い合わせてみたところ「これ以上の調査は難しい」と、つれない。
仕方がないので、あるだけの情報を使って推定計算を試みることにした。
◇サラ金死に迫るフローチャート
目指す結論は、各社ごとの自殺者数と顧客10万人当たりの自殺率だ。
計算は、次のフローチャートにそって行なう。
A 死亡原因のなかで自殺が占める割合を出す
↓
B 貸付残高100万円当たりの保険料を推計
↓
C 貸付残高100万円当たりの受け取り保険金額を推計
↓
D 各社ごとの支払保険料・保険金受け取り額を推計
↓
E 各社ごとの死亡者数を推計
↓
F 各社ごとの自殺者数を推計
↓
G 顧客10万人あたりの自殺率を推計
高校のときに統計の勉強をもう少し真面目にしていれば、もっと緻密な計算ができただろうが、筆者の実力ではこの程度が精一杯である。よりすばらしい分析方法があれば、ぜひご教授いただきたい。
さっそく計算に入る。
フローチャートのA、死因に占める自殺者の割合だ。
10月6日に金融庁が発表した調査結果によると、大手5社であわせて平成18年3月期に3万9,732件、金額にして228億円の死亡保険金が支払われたという。
うち死因が判明しているのが1万7,928件。さらにこの中で自殺は3476件だから、死因判明分の中で自殺の割合は、5社あわせて
3,476÷17,928=19.38%
約19.3%ということになる。
◇サラ金大手「死因判明分中の自殺割合」は20~30%台
ここで不思議なのが死因の判明率だ。3万9,732人の死亡者のうち、死因が分かっているのは半分の1万7,928件しかないという。
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金融庁調査結果関連資料
上から、
■6月の参議院で公開された死因調査の省略状況。武富士の回答はウソだったことが判明。プロミスも後の回答と矛盾している。
■大手5社の運用実績(10月発表の調査結果)
■17社の運用実績(同上)
■大手5社の実名データ(同上)

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死体検案書か死亡診断書を添付していれば、100%わかるはずではないか。
筆者はいぶかしく思った。もしや、死体検案書や診断書に「死因不詳」と書かれているものがたくさんあるのだろうか。いや、死因不詳なら変死=事件になってしまう。殺人の被害者とか、司法解剖して死因を追及することになる。
サラ金にはそんなに事件が多いのか? 死亡者の2人に1人が事件の被害者? まさか。
死因判明率がわずか半数という理由がわからず、筆者はのっけから頭を抱えた。
生保会社に問い合わせたところ、あっさりとこう言われた。
「実は省略も可能という項目がありまして…」
あらためて約款をよくみると、確かにこのようなくだりがある。
「第14条の3 当会社は、前項の書類以外の書類の提出を求め、または前項の書類の一部の省略を認めることがあります」
金融庁のヒアリングに対してもサラ金各社は、「少額の場合など一部で検案書や診断書の取得を省略している」と答えている。
借金苦の自殺でも金銭トラブルから殺されても、調べなくてもいいわけだ。生保側もそれでいいとしている。
約款というのは都合よくできている。
『しんぶん赤旗』以外、大手マスコミは報じていないが、大手5社それぞれの社名入りデータは次に示すとおりだ。
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