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近未来通信 元社員が語る詐欺の現場(3) 「騒いだ者勝ち」の実態

情報提供
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画像1:支店長の担当していた約200人の顧客リスト。報道後、「金を返せ!」と多発するクレームに対し、客の怒り具合に応じて、リストにA、○と記号をつけていく作業をさせられていた。Aは、口(くち)うるさく、怒り心頭で説得できそうにない、という客で、○は、なんとかトークで封じ込められるのではないか、という客。何も書いていないのは、クレームの全くない客。
 新聞で自転車操業をしていると報じられると、売上は激減し、クレームが殺到しました。そこで、クレームをつけた客にはリストにチェックを入れ、怒り具合に応じて還元金を配分し始めました。被害者は騒いだ者勝ちだったのです。社長は、あたかも被害者であるかのように「恐喝された」などと言い逃れをするばかりで、まともな反論すらできないまま詐欺の手口を拡大させていき、最後の最後まで被害を拡大させていきました。
Digest
  • 顧客の憤慨レベルに応じて配当
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画像2:サーバー営業部の2006年の7-9月四半期の契約額、入金額の記された内部資料。本社、支店を含めたサーバー営業部全体の契約額は、新聞報道の始まる前の8月分までは入金ベースで毎月コンスタントに15億円前後は稼いでいた。資料の一番下の合計の欄の、各月の入金の額に7月は22億8785万円、8月は14億8797万円とある。だが、報道後の9月は、一気に5億円2214万円にまで激減している。

顧客の憤慨レベルに応じて配当

読売新聞で「投資配当“自転車操業”」(8月29日)と報じられたのは決定的でした。報道前までは、本社、支店で毎月平均15億円前後、サーバーの売上金がコンスタントに入金されていましたが、報道直後から、売上は半減したのです。

ここに今年7-9月の四半期の契約額、入金額の記した内部資料があります。(画像2)本社と各支店を合わせた累計額を見ると、入金が7月22億8785万円、8月14億8797万円です。ところが、読売報道後の9月は5億2214万円にまで激減しているのがわかります。

ちょうどこの9月から、オーナーに毎月支払われる還元金にも変化が表れました。報道以前までなら、利回り約30%で支払われていたのですが、9月からは、資金繰りに窮したためか、突然、還元金が半額になったり、支払いが遅れる、といった事態が頻発したのです。

しかも、この還元金を支払う基準は、お客が怒れば怒るほど支払われるという仕組みだったのです。

各支店の顧客の数は支店長がダントツ多く、私の勤務先の支店長は約200名の顧客を抱えていました。平の営業マンクラスだと、大体、20人前後、主任クラスで40~60人、課長クラスで約100人といったところです。つまり、報道後のクレームの大半は、支店長や本社の部長、次長など幹部クラスのお客でした。

◇「騒いだもの勝ち」の実態
 私は、報道後、「金を返せ!」と多発するクレームに対し、お客の怒りの度合いによって、支店長の顧客リストにA、○と記号をつけていく作業をさせられていました。(画像1)この資料にある、Aは、口(くち)うるさく、怒り心頭で説得できそうにない、というお客です。○は、なんとか、トークで封じ込められるのではないか、という客。そして、何も書いていないのは、クレームの全くない、おとなしい客です。

 さらに、これ以外にSクラスのお客というのがいます。これは「オーナー対応シート」という書類に、状況をこと細かく記すことになっていて、シートには憤慨レベル1、2、3、4という項目までありました。具体的には、弁護士を使って対応すると言っているお客や、刑事事件にする、と言って激怒しているお客などが中心でした。内容証明通知書で契約金の 返還を要求するお客もいました。

こうして作成されたリストに応じて、お客への還元金の額は変わっていったのです。Aに対しては、それ以前まで支払っていた還元金の額の一部だけを支払うなどで対応し、○には、大幅な減額、何も無しのお客は、支払いの延期が大半でした。そして、Sクラスは、一時金として加盟金を返還するなどで対応し、Sクラスの中でも特に憤慨している、リストにある黒塗りのお客に対しては、契約金を全額返金していました。契約書に、解約しても支払った額は返ってこないと書かれているにもかかわらず返金していたのです。返金するときは、内緒にするよう、こっそりとお客に口止めしていました。

また、三年以上前に契約した人は大抵、投資した資金は回収できているので、契約から3~5年経っているお客に対しては、還元金は半分以下に激減させ、契約から6年以上経っているというお客には、還元金はほとんど無しにするという方針でした。

騒いだもの勝ちという感じでしたね。それに、すでに儲けている人は、たしかに文句もあまりありませんでした。

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画像6:1130万円の契約をした場合の、収支予測のシミュレーションの書かれた資料「スーパーネット中継局収支予測(国内局・8回線)」。赤字で記載されている累計収支予測にあるように、契約から利益を上げるまでに10ヶ月かかる。だが、その後はユーザーがMAXまで獲得されて収益が伸びて、1130万円の元を取るまでに2年で、その後は利益を上げ続ける。客には、元を取るまでに約3年かかり、収益は表の6、7割と説明し、実際、新聞報道の前までは、そのように還元金を支払っていた。
◇三年で元が取れる配当
 ここに「スーパーネット中継局収支予測(国内局・8回線)」というシミュレーションの資料があります。(画像6)これは契約1130万円の契約をした場合ですが、この表の下にある、「累計収支予測」が9月までは赤字になっています。サーバー購入後、利益を上げるまでに最低でも10ヶ月はかかるのです。これは、毎月ランニングコストが304,500円発生し、IP電話サービスのユーザーが増えていくまではマイナスで推移するためです。もちろん、全て架空の話ですが。

この表にあるように、ユーザーが順調に増えていくと、8ヶ月目にサーバー許容量であるマックスの285人に達し、10ヶ月目からは累計の収支がはじめて黒字に転じます。それ以後は、毎月802,480円の利益が出て、ちょうど2年目に累計の収支が1145万円になり、プラマイゼロとなり、それ以降は毎月80万円以上の利益を上げ続けるという仕組みです。

お客には、この表は回線獲得数が最大で、スピードも最速の状態になっているので、実際の還元金の額はこれの6、7割程度で、1千万円以上の元を取れるのは、大体三年目に入ってからになると、支店閉鎖の間際の最後の11月まで、そのように説明していました。オーナーへの還元金は、報道前までは、説明していた通りになっていました。

◇「特別枠がある」という手口
 このように、オーナーの利益は、よくても10ヶ月目からなのですが、実は、読売の報道の直前に、特別枠といって、契約直後から、利益が出る特別のサーバーを出す、という手口を盛んに使い始めたのです。

それは7月後半のことでした。オーストラリアのシドニー局に特別局というのがあると、本社から通達がきたのです。これは何かというと、中継局に予備のサーバーが三台置いてあり、シドニーの利用者がどんどん増えたため、予備のサーバーも稼動させている状態で、このサーバーは今すぐに収益が出るが、オーナーがついていない。それを販売することにした。ただし、7月末日までに振り込まれる方に限り販売する、というものでした。支払いまで残り10日しかありません。

一応、営業はしたものの、さすがにあと10日で支払うのは無理、というお客が多く、なかなか販売はできませんでした。すると本社は、今度は、「支払い期日は8月10日までで良い」と言い出したのです。8月10日は、オーナーへの還元金の支払い日と一致します。結局、2台、特別枠のサーバーを売ることができましたが、なぜ、還元金の日に合わせているのか、不思議でした。

8月10日には、お客のAさんから連絡があり「丸山君、いや、びっくりしたよ。18万円、こんなにすぐに入ってくるなんて。これでお金入ってくるの楽しくなるな。また次が出たら買うから。また特別枠があったら、教えて」と言われました。そのことを支店長に報告すると「特別枠というのは、そうそう簡単に出てくるわけではないんだ」と言っていました。

しかし、特別枠のサーバーというのは三台しかない、と当初いっていたにもかかわらず、同僚に聞いていくと「俺も特別枠で契約取れた」、「俺もやった」と次々に言うのです。私の知っているだけでも、全国で18台の契約が取れていました。

さらに、翌月に入り、新聞報道で支店の売上が減ったとき、支店長が「Aさんは特別枠だったら買うと言ってたよな。じゃあ…特別枠、とくべつに出してやるから」と言い出し

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画像7:8月29日付の読売新聞の「自転車操業」記事等に対する抗議文。訂正と謝罪を要求しているが、具体的にどこが事実誤認なのか一切触れおらず、まともに反論できていない。この抗議に対し読売新聞は、取材は事実に基づいたものと返答した。

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普通の人だって2008/02/01 02:50
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記者からの追加情報

この記事は、元社員への聞き取りに基づき、佐々木敬一が代筆した。

本文:全約7,700字のうち約3,800字が
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