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禁煙タクシーは3.5%だけ やる気ない全乗連・新倉会長はヘビースモーカー

情報提供
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都内で見かけた禁煙タクシー
 大分市に続いて、5月から名古屋のタクシーが全面禁煙になる。タバコ1本で車内の粉塵濃度は厚労省法定基準の12倍となり、間接喫煙を受けることもあって、個人タクシードライバーの死因トップは断トツで肺がん。乗客も「臭害」に悩まされる。わずか3.5%にとどまっている禁煙タクシー率を向上させるべく今月3日、「タクシー全面禁煙をめざす会」は、全国乗用自動車連合会に全面禁煙化の申し入れを行った。だが組織トップの新倉会長はヘビースモーカーで改善に消極的。国際常識違反の現状は改善しそうにない。

◇5月から名古屋のタクシーは全面禁煙
 名古屋タクシー協会(森博一会長)は、5月1日から名古屋地区内の全てのタクシーを全面禁煙にすることになりました。(「毎日新聞」「読売新聞」2007年3月9日)。

 対象は101社の6,994台と個人タクシー1,056台(2007年1月末現在)の計8,050台が対象となっています(ジャンボ、ハイヤー、患者輸送限定車を除く)。

 歴史的な大会の冒頭で森会長は「高齢者や女性、通院療養の方々など、利用者からのタバコの臭いについて苦情や改善要求に応えるものです。全国の業界や利用者からも注目されており、しっかりと取り組んでいきたい」と挨拶し、さらに大会決議を山田森夫情報環境推進委員長が読み上げ満場の拍手で承認されました。

 この日の大会で注目されたのは、タバコの有害性について二人の専門家の講演(中京大学体育学部の家田重晴教授「喫煙の健康被害について」、愛知学院大学歯学部の稲垣幸司助教授「受動喫煙の健康被害とタバコ対策について」)があったことです。

◇大分は全車両禁煙、神奈川も禁煙化の提案
 今回の名古屋タクシー協会の取り組みのように、協会全体で禁煙に取り組むのは、(社)大分市タクシー協会加盟の全車両の禁煙実施に続き2例目で、政令指定都市などの大都市圏では初めての画期的なものとなりました。

 日本のほぼ中心の大都市である名古屋でタクシーの全面禁煙化が実現することは、実に大きなインパクトで、各地にこの動きが広がっていくと思います。すでに2005年4月から全面禁煙を導入している大分市でも、漢会長が次のような見解を示し注目を集めました。

 これは『東京スポーツ』のインタビューに答えているもので、「大分県下の約3,000台のうち9割が禁煙となっている。利用者アップが大きな広がりの一因です。これまでタバコの臭いがイヤで他の交通機関を利用していた人がかなりいて、こうした人たちが戻ってきた。逆に喫煙者は、バスや電車でも吸えないことに変わりはないから、我慢して乗車している。その結果利用者が増えた」

 「禁煙タクシーへの苦情やトラブルは、協会で引き受けている。しかし苦情などは全くなく、逆にお褒めの言葉を頂いている。タクシー車内での禁煙が常識になる日もそう遠くないのではないか」などと、私たち運動に取り組んでいる者にとっては、実に嬉しいコメントが紹介されていました。

 名古屋の動きに続き、神奈川県タクシー協会でも、2月21日の定例役員会で県内全域の法人タクシー全車禁煙化が提案されました。この日、経営委員会の太田宏委員長は、趣旨説明で、「公共交通機関を自負するものとして世論に姿勢を示したい」と述べ、さらに大野精一会長が「公的スペースでの禁煙化の広がりは後戻りできない」と指摘し、「枝葉末節の議論はあろうが、一気か成でないと進まない」と、前向きな対応を要望しました。

 そして、翌3月20日の役員会では「各支部長に議論の内容を聞いたところ、おおむね県協会で決めた禁煙車導入について、協力体制をとる」ことが話し合われました。

 名古屋に続き神奈川県でも全車禁煙となれば、この流れは全国各地に波及するのではないかと思われます。
 
◇1本で厚労省の法定基準の12倍、2本で24倍、3本31倍
 タクシー車内は本当に狭い密室空間です。職場や公共の場所で“過渡的に”「分煙」として受動喫煙の被害を緩和しようとする対策がとられてきましたが、タクシーでは「分煙」というわけには参りません。

 アメリカ、カナダ、オーストラリア、台湾、シンガポール、フランス、イギリス、北 欧各国、香港(吸ったら5,000ドルの罰金)など多くの国々でタクシーは全面的に 「禁煙」(無煙)という環境が常識です。

日本の場合、国も、経営者も、労働組合も、「職場」という視点が極めて薄弱で、「『利用客サービス』=客は何をやっても、運転者はそれに逆らってはならない」という指導・監督が長年にわたって行なわれていて、「先進国」の中で日本だけがいつまでもタバコについて甘い姿勢をとっている現状は、実に情けないことと言わざるを得ません。

 現在、日本におけるタクシーの総数は27万余台となっていますが、そのうち禁煙車はわずかに8,403台で、全体の3.55%という信じられないほどの少数にとどまっており、毎日、受動喫煙によって運転者と利用者の健康が阻害されています。

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(上)「禁煙タクシー情報」。禁煙タクシーは8403台で3.55%。

(下)「タクシー車内のタバコ煙(粉じん濃度)」。中田ゆり(東京大学大学院医学系研究科)氏による『実際の乗務における受動喫煙調査』(2005年5月27日)。
 この数字は、「禁煙タクシー事情」(2006年3月31日、平田信夫作成)によります(右記画像参照)。その後、各地で禁煙タクシーが増加しているので、台数と比率は、多少は高くなっているとは考えられます。

 タクシー内の喫煙による乗務員の健康被害について、東京大学大学院医学系研究科(当時)の中田ゆり氏が、実際に粉塵計をもって調査した結果が出ています。図は、「タクシー車内のタバコ煙(粉じん濃度)」。中田ゆり氏による『実際の乗務における受動喫煙調査』(2005年5月27日)です。

 タバコ1本で、車内の浮遊粉塵濃度は、厚生労働省の法定基準(職場などの環境衛生の基準となっている「ビル管理法」によって定められている数値。1立方メートル当たり0.15mg以下が望ましいとなっている)の12倍(1.80mg/m3)になり、その値は1時間以上元に戻りません。また、2本では24倍、3本では31倍にもなるのです。窓を5cmほど開けて吸った場合でも、粉塵濃度は法定基準の9倍に上昇し、30分間元に戻りません。

 また、この調査で、運転していた安井幸一氏(個人タクシー事業者、「タクシー全面禁煙をめざす会」代表)の呼気からは、運転前には検出されなかった一酸化炭素が検出されています。

◇ドライバーの肺がんリスクは断トツに高い
 2002年1年間の個人タクシー運転手の死因の第1位は肺がん(12%)でした(個人タクシー協会の調査)。タクシー運転者の喫煙率は、会社によって多少の違いはありますが、おおむね60%前後と、かなりの高さを示しています。しかも40代~70代と相当高齢であり、他の職業の人や一般人と比べても高くなっています。

 2005年の厚生労働省調査では、全人口でみた場合の男性の死因も確かに肺がんですが、男性の肺がん死亡者は45,189人で、全死亡者584,970人に占める比率は7.7%(がん全体では33.6%)ですから、やはり個人タクシーの運転手は、直接・間接喫煙の影響を受けているといえるでしょう。

 また、肺がんだけではなく、「タバコ病」の典型と言われる心臓疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、胃潰瘍など、直接喫煙・受動喫煙の被害は、想像を絶するものがあるのではないでしょうか。

 全国個人タクシー協会がまとめた2005年度の共済給付状況によれば、死亡原因のトップは肺がんで46名となっていました。次いで胃がん、肝臓がん、膵臓がん、大腸がんなどが続き、心筋梗塞、心不全などの心臓病も上位でした。

◇トップがヘビースモーカーのタクシー協会
 東京では、約400社(34,000台)が加盟する団体である「東京乗用旅客自動車協会」(東旅協)が、数年前から「タクシーアドバイザー会議」などを設け、タクシーサービスのあり方をめぐって都民から公募した委員(毎年100名ずつ)の意見を聞く機会を作ってきました。

 私も4年ほど前に応募し、アドバイザーになりましたので、会議のたびに「禁煙タクシー導入」について力説しました。

 しかし、残念ながら、東旅協の新倉尚文会長(全国乗用自動車連合会の会長でもある)は、かなりのヘビースモーカーで、私の提案は一顧だにされませんでした。その後も毎年、何人かの禁煙運動関係者がアドバイザーとなって、会議の都度「禁煙タクシー」を訴え続けていますが、ほとんど無視されたまま現在に至っています。

 この新倉会長は、タクシー専門紙の記者の方によると、公的な会議の場(総会等)で、なんと議長席でタバコ片手に議事を進め

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「タクシー全面禁煙化」のお願い。東京乗用旅客自動車協会(東旅協)の専務理事・藤崎幸郎氏(3月29日)、全国乗用自動車連合会(全乗連)の理事長・伊藤隆氏(4月3日)に行なった申し入れ書。

「禁煙タクシー」に賛同する、浅利慶太(演出家)、サンプラザ中野(歌手)、ピーター・バラカンなど著名人のコメント。

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防波堤2008/02/01 02:51
喫煙車もあれば2008/02/01 02:51
麻薬中毒養成国家2008/02/01 02:51
霊界仕事人2008/02/01 02:51
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■たばこ問題情報センター(代表 渡辺文学)

 たばこ問題情報センターでは、タバコ問題のセミナー、講習会、学習会など、いつでもタクシー会社や関係者・団体の要望に応える準備をしています。

 WHO(世界保健機関)では、1970年代から『予防可能な最大の疫病=タバコ病』と位置づけて、喫煙・受動喫煙の害の根絶を目指して、勧告を重ねています。今年、2007年は「Smoke-Free Environments」(タバコの煙のない環境を)というスローガンを掲げており、もちろんタクシーも含まれていることはいうまでもありません。

 全国27万台のタクシー車内からタバコの煙が消える日を目指して、私たちの取り組みをご注目願えれば幸いです。