未成年者の喫煙本数推計。JTは財務省の天下り先で、国もJTも現状把握すら拒んでいるのが実態だ。
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元モーニング娘。加護亜依(19)の“喫煙温泉旅行”で未成年の喫煙が話題になっている。「未成年の喫煙データはとっていない」と現状認識すら拒むJTや国に代わり、たばこ問題情報センターが、日本たばこ協会とJTが公表する喫煙率、総販売本数から試算したところ、未成年者喫煙本数は年間で約500億本、総販売本数の17・5%にも上ることが分かった。「無煙世代を育てる会」代表の平間敬文医師は「1箱500円にすれば解決する」と政策提言する。
【Digest】
◇加護ちゃん2度目の喫煙報道で芸能界引退へ
◇未成年喫煙の罰則、科料、罰金
◇成人男性喫煙率41・3%、成人女性喫煙率12・4%
◇未成年者喫煙の統計をとっていないJT
◇自販機でたばこを手軽に買えてしまう日本
◇たばこのパスポート「taspo」の個人情報はどこに?
◇未成年喫煙「1箱500円にすれば解決する」
◇加護ちゃん2度目の喫煙報道で芸能界引退へ
元モーニング娘。の加護亜依(19)の“喫煙温泉旅行”、さらに芸能界引退が話題になっている。
彼女の喫煙が発覚したのは、『週刊現代』(2007年3月26日発売、「謹慎『モー娘。』加護亜依“喫煙”温泉ラブラブ旅行」)だった(画像)。
昨年『FRIDAY』(2006年2月10日発売)で掲載された「加護亜依がレストランでたばこを吸っていた」では、食事をしながら喫煙する写真が撮影されていたが、今回の『週刊現代』では喫煙写真は掲載されていない。所属事務所アップフロントエージェンシーが本人に確認したところ、喫煙の事実を認めたため、事務所は「二度目ということもあり、復帰については断念する」とマスコミ各社にファクスで解雇を実名で報告した(3月26日)。
12歳でデビューし、モー娘。、ミニモニ。、W(ダブルユー)と、一時期は年収4000万円を稼いだとも言われ、夢を与えてきたアイドルだっただけに、未成年への影響力は大きい。
だが、喫煙“再犯”で、復帰の夢は断たれた。
◇未成年喫煙の罰則、科料、罰金
『週刊現代』やその後の報道によれば、温泉旅行に一緒に出かけた18歳年上の男性は、未成年の加護ちゃんに「吸うな」と指導するどころか、車内で一緒に吸っていたようだ。「東京に戻るまで二度もタバコを買ったほどのヘビースモーカー。運転中もひっきりなしに窓を開け、タバコの煙を外に出し、灰を捨てていた」(『週刊現代』)と記事にも出ていた。
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上:”喫煙温泉旅行”で芸能界引退となった元モーニング娘。の加護亜依(19)。『日刊スポーツ』3月27日付。
下:
喫煙を伝えた『週刊現代』(2007年3月26日発売)。
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1900年にできた未成年喫煙禁止法では、未成年がたばこを吸った場合、本人には罰則なし。刑事処分されない。
未成年者だと知りながら、喫煙をとめなかった親権者、その代わりの監督者に科料(1,000円以上1万円未満の金銭を払うことを求められる刑罰。刑法17条)が処せられる。刑罰の中では軽く、これも、1年間にあるかないかだといわれている。
また、未成年にたばこを販売した場合、販売者は50万円以下の罰金に処せられる。
ただし、この未成年喫煙禁止法は、未成年者の喫煙を禁止し、未成年者の喫煙目的での販売を禁止しているだけで、未成年者のたばこの所持や、喫煙以外に使用することを禁止していない。
日本ハムのダルビッシュ有投手も、2005年2月のキャンプ中、パチンコ店で喫煙している写真が写真週刊誌『フラッシュ』に掲載された。彼も未成年で高校生だったが、プロ野球選手であることを理由に、球団と学校側の判断で実名が公開された。無期限謹慎と謹慎中のボランティア活動を命じる処分が言い渡された。高校も停学処分後、1週間遅れで卒業した。
ダルビッシュ選手の場合も、前年2004年9月、喫煙写真が週刊誌に掲載され、高野連から厳重注意処分を受けている。2度目だったことも大きい。
加護ちゃん、ダルビッシュ選手の共通点は、一度メディアで報道された後、また喫煙してしまったことだ。”喫煙報道”が抑止力にはならなかった。
◇成人男性喫煙率41・3%、成人女性喫煙率12・4%
加護ちゃん、ダルビッシュ有選手のような未成年喫煙者はどれくらいいるのだろうか。
JTお客様相談センター(TEL03-5572-3336)に聞いた。
--未成年は、たばこをどれくらい吸っていますか?
「そういう統計はとっていないです」
--でも、未成年も吸っていますよね?
「そういう方はいると思いますが、こちらでそういった数は把握していないです。成人の喫煙率は出していますが・・」
JTの発表によると、2006年の成人男性喫煙者数は2,066万人(喫煙率41・3%)、成人女性喫煙者数は667万人(喫煙率12・4%)で喫煙者数は2,733万人。1日当たりの喫煙本数は、成人男性22・3本、女性16・3本である。
この昨年の調査方法は、全国の成人男女3万2000人を対象に実施し、58%にあたる約1万8600人から回答。その調査から喫煙人口を推計している。
年間の総販売本数は、日本たばこ協会が毎年出している。
◇未成年者喫煙の統計をとっていないJT
未成年が年間500億本くらいたばこを吸っているというデータがあることを伝えると、「そのデータは私どもで出しているものではないです」と、興味がないようだった。
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「たばこ販売本数と成人喫煙者数・喫煙本数から推定した未成年者の喫煙本数」(たばこ問題情報センター作成)。未成年の推定購買(喫煙)本数と総販売本数に占める率は1985年まで1桁だったが、民営化の翌年1986年以降10%を超え、2004年には過去最高の19・7%にも達している。
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「そのデータ」とは、
たばこ問題情報センター(代表:渡辺文学)が算出した数字「たばこ販売本数と成人喫煙者数・喫煙本数から推定した未成年者の喫煙本数」(1978~2005年、右表)である。
たばこ販売総数(日本たばこ協会発表)から、日本専売公社(~1985年)とJT(1986年~)が公表した喫煙率を基にして、成人男女の喫煙人数×1日喫煙本数×1年間(365日)を計算し、各年度の喫煙総本数を算出。そこから「未成年者の購買(喫煙)本数」を推計している。
2006年の総販売本数はまだ発表されていないので、最新となる2005年の数字を例にして「未成年者の喫煙本数」を推定してみる。
2005年総販売本数
2,852億本 |
喫煙 人口 |
1日喫煙本数 |
年間喫煙総本数
(×365) |
(1)成人男性 |
2,281万人 |
22・3本 |
1,857億本 |
(2)成人女性 |
739万人 |
16・0本 |
432億本 |
(1)と(2)合計 |
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2,289億本 |
(3)(時々喫煙者+在日外国人+外国人旅行者など)推定喫煙本数 |
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64億本
(たばこ問題情報センター推定) |
(1)と(2)と(3)合計 |
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2,353億本 |
●総販売本数2,852億本-成人1年分喫煙総本数2,289億本=563億本
この563億本のなかには、未成年が吸う分だけではなく、それほど多いとは思われないものの、「時々喫煙者」「日本在住外国人」「訪日外国人旅行者」の3者が購入して吸う分も含む。たばこ問題情報センターでは、この3者を2005年度で64億本と推定している。
【試算方法:日本在住外国人喫煙本数】
成人男性喫煙率45・8%、成人女性喫煙率13・8%から、平均29・8%。
1日男性喫煙本数22・3本、1日女性喫煙本数16・0本から、1日平均19・2本。
この日本人の数値を、日本在住の外国人にそのまま当てはめ、2005年の外国人登録者数は201万人(法務省入国管理局調べ)なので、喫煙者数は60万人。
成人男女の喫煙人数×1日喫煙本数×1年間(365日)=42億本
【試算方法:訪日外国人旅行者喫煙本数】
2005年の訪日外国人旅行者数は733万人(国土交通省調べ)、世界的に見て男性の喫煙率は、東アジアで高く北米やヨーロッパで低い。女性の喫煙率は、東アジアの方が低い。全世界の喫煙率は男性39.4%、女性16.0%(WHO
“Tobacco Atlas”2002)なので、平均27・7%。ここから旅行者の喫煙者数は203万人。
訪日外国人の平均滞在日数は8.0日(国際観光振興会調べ)とし、1日喫煙本数は統計的にもわからないので、日本の基準19・2本を当てはめてみる。
成人男女の喫煙人数×1日喫煙本数×8日=3億本
これに、もらいたばこなど「時々喫煙者」の本数を加え、64億本と多めに算定。
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たばこ問題情報センターでは、未成年が買っている=吸っていると仮定した。563億本-64億本=499億本 が、未成年者推定購買(喫煙)本数である。これは2005年の総販売本数2,852億本の17・5%にもなる。
「そういう統計はとっていないです」とJTは言ったが、未成年者の喫煙本数はJTが出している数値から推計できる数字である。JTならさらに詳細なデータが出せるはずだ。
未成年の購買率は、1986年に10%を超え、2004年19.7%とピークになっている。
また、2005年のたばこ税総額は、国と地方をあわせて2兆2353億円で、未成年が買った(吸った)と推定されるたばこ17・5%で計算すると、未成年者が3912億円の税収に貢献していることになる。
これらの数字を推計した渡辺文学氏は次のように言う。
「未成年者の喫煙については、厚生労働省、財務省、文部科学省、警察庁など国がきちんと調査すべきことです。
厚生労働省のたばこ対策予算は、年間たった5000万円しかありません。これでどんなたばこ対策ができるでしょうか。エイズには120~140億円の予算がついているのと比べると、いかに少ない額かわかります。
消費税が5%ですが、たとえば、国は未成年者が支払う3912億円(2005年分)の税収総額の5%である196億円を禁煙教育、喫煙防止教育、たばこ規制対策に充当すべきではないでしょうか。そうすれば、エイズ対策並の予算になり、未成年への対策も進みます」
◇自販機でたばこを手軽に買えてしまう日本
さらに、JTに対し、未成年喫煙者の体への影響と対策を聞いた。
--最近、加護ちゃんのケースなどありましたが、未成年がたばこを吸うのはからだにどんな影響があるんですか?
「未成年者の喫煙は
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たばこのパスポート「taspo(タスポ)」対応の成人識別自動販売機を紹介する広告。2008年から導入される。JTも、未成年者喫煙防止対策をすすめる対策としてこのタスポ導入をあげた。
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