My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

医薬品にも使えぬ危険成分を6年も食品に分類 ミス認めぬ厚労省

情報提供
ReportsIMG_I1184990891509.JPG
7月10日にはじまった「健康食品」の安全性確保に関する検討会。
 健康食品に使ってもよい成分を定めたリストに、医薬品にすら使えない危険成分・アリストロキア酸を含む生薬が、2001年より分類されていたことが分かった。市民団体「食の安全監視市民委員会」や筆者の再三の指摘にも、担当者が逃げ回り、たらい回し(ササジマ→フクダ→クマウチ)にする。このようないい加減な管理体制では、国民の健康被害を予防することなど無理であろう。
Digest
  • 医薬品より危険な有害成分を食品に分類
  • 市民団体の指摘に、厚生労働省再三にわたる回答延期
  • アリストロキア酸の有害性は漢方薬専門家の間では常識
  • 4月、異例の食品成分から医薬品成分への見直し
  • また変わった担当者、無責任体制の象徴
 ミートホープの食肉偽造、中国産食品の汚染と、食の安全を脅かす事件が多発している。健康食品に関しても、厚生労働省は7月10日、 安全性確保に関する検討会を立ち上げた。

しかし、このたび厚労省との一連の対応を経験し、そもそも現在の制度と組織カルチャーには、本気で国民の健康を守ろうという気合がまったく欠けていると思わざるを得ない。責任者である医薬品食品局監視指導・麻薬対策課の村上課長は、人命にかかわる我々の指摘に真摯に対応しないならば、さっさと役人を辞めていただきたい。

本題に入る前に、少しだけ現在の健康食品の安全性に関する制度をおさらいさせてほしい。

健康食品による被害事例で最も深刻なものは、医薬品にしか使えない成分が、違法に使われている場合だ。中国製のダイエットカプセルなどに多く、肥満治療薬や下剤などが入っていた例があり、死亡例も起きている。医薬品にしか使えない成分が使われていることが判明すると、その健康食品は食品ではなく「違法医薬品」という取り扱いになり、即回収、販売禁止などの措置がとられる。

そこで、ある成分が医薬品にしか使えないか、食品成分として使っても良いかについては、厚生労働省が定める「食薬区分」での成分リストで分類されている。有害性の高い成分は医薬品にしかつかえないリスト(医リスト)に分類され、比較的安全性の高いものについては食品に使っても良い成分(効能効果をうたわない限り医薬品とみなさない成分)のリスト(非医リスト)に分類される。

この食薬区分のリストについては、不定期だが数年に1回くらいの割合で見直しが行われており、健康食品業界にとっては死活問題として注目されている。近年サプリメントとして大ヒットしたコエンザイムQ10やα-リポ酸が健康食品として販売できるようになったのも、この食薬区分の見直しで、医薬品成分だったものが食品に使っても良い成分に再分類されたからだ

医薬品より危険な有害成分を食品に分類

しかし実は、漢方薬に使われる生薬について、危険性が高いため医薬品にすら使えない有害な部位が、食品に分類されている例があった。サイシン(細辛)という生薬の一種で、日本では漢方薬として根の部分が使われてきている。というのも葉や茎の地上に出ている部分には、人の腎臓に障害を起こすアリストロキア酸という成分を含んでいるからだ。

基本的な医薬品の製造方法を定めた日本薬局方でも、サイシンは、根および根茎しか使えないと規定されている。

ReportsIMG_H1184987254951.jpg
食薬区分でのサイシンの分類の変化

一方、「食薬区分」のリストでは、2007年3月まで、葉・茎などの地上部が食品として分類されていたのである。(図1)

著者がこの問題を知ったのは、2003年に出した「危ない健康食品から身を守る本」の取材のため、東京大学薬学部名誉教授の齋藤洋氏から聞いたのがきっかけだ。

齋藤氏によればサイシンの問題は、食薬区分の審議がいかにいい加減に行われたかのよい例だという。

「生薬の専門家なんか誰も入っていない。アリストロキア酸の危険性は薬学部での教科書にすら載っている常識的な問題。私が気づいた段階で、数年前から指摘しているのに、一向に訂正しようとしない」

齋藤氏は、厚生労働省が2003年に開いた「一般用医薬品としての生薬製剤(西洋ハーブを含む)の審査のあり方に関する検討会」の座長も務められた。この検討会は、ヨーロッパで伝統的に医薬品として使われてきているハーブ成分について、日本でも医薬品として許可することを検討するものだった。

 しかし、第一回目の会議で、現在生薬や西洋ハーブが、医薬品ではなく、健康食品に使われて健康被害が多発していることを問題視する発言が続出。厚生労働省の意向に反したためか、会議は二回目以降は開かれず、そのままほったらかしの状態になっている。

市民団体の指摘に、厚生労働省再三にわたる回答延期

著者も理事会のメンバーとして参加している食の安全・監視市民委員会では、代表の神山美智子弁護士らと共に、2006年10月17日に厚生労働省を訪問し、食薬区分を含めた健康食品による被害防止の制度について説明を受けた。

そこでの担当者が、医薬品食品局監視指導・麻薬対策課薬事監視第2係長の笹島さんだった。

話は多岐にわたったが、その中でサイシンについて以下のような議論を交わした。

植田「食薬区分のリストの中で、根や根茎といった部分が専ら医薬品の成分に入っているのは良いんですが、有害性からみたらより危険な葉や茎といった地上部が、なぜか食品にも使える成分リストの方に入っているんですよ。これっておかしくありませんか?」

笹島さん「個別の成分については、専門じゃないもので・・・」

植田「個別の成分を、食薬区分でどのように区分するかを評価するときに、どれだけきちんとやっているのかということについて疑惑がでてくるんですけれども」

笹島さん「改めて調べてご回答します」

植田「このケースを含めて、一体どのような人たちがどのような審議を経て、食薬区分を決めているのかということが公開されていないことが問題だと思うのですが」

笹島さん「誤解を受けるかもしれませんが、このリストというのは別に食品のリストを作っているわけではなくて、食品に含まれていても直ちに医薬品とは判断しませんよというものであるわけです。よく誤解されることが多いんですけれど、この非医薬品リストに掲載されているということで、食品として安全と誤解される方が多いんですけれど、けっしてそういうリストではないということはご理解いただきたいのですけれども」

神山弁護士「でも、非医薬品リストに掲載された成分については、食品に使っても、直ちに薬事法違反にはならない、と判断され、健康食品に使われているわけでしょ」

笹島さん「そうですね。効能効果を標ぼうしない限りですが」

ReportsIMG_G1185014193663.jpg
2007年1月12日に医薬食品局長あてに出した質問状
神山弁護士「法律上では、医薬品以外は食品なのですから、今の法律では、医薬品から外すよといえば、即食品になるわけです。それを食品としての安全性を確認したわけではないという説明は、ちょっと詭弁に聞こえますね」

 その後、サイシンの取り扱いについて一向に返事がないため、2007年1月12日に下記の様な再質問状をだした。(右記参照)

そこで、なぜ、より危険な部位が食品に使える非医リストに分類されてしまったのかの理由を質問した。

その後、2,3月には食の安全監視委員会の事務局からの、再三の問い合わせを行ったが、笹島さんは「今忙しいので返事は少し待ってほしい」と繰り返すばかりで、らちが明かない状態が続いた。

アリストロキア酸の有害性は漢方薬専門家の間では常識

その間、サイシンなど一部生薬に含まれるアリストロキア酸の危険性について調べてみると、厚生労働省自身が、医薬品としての品質の問題として何度も注意勧告を出していることが分かった。

生薬に含まれるアリストロキア酸による被害事例は、1993年から報告されている。

1993年には、ベルギーで肥満治療のため漢方薬が投与された患者で、腎機能障害が多発し、「中国製ハーブ腎症」と名づけられた。また、日本でも97年に関西地方で、漢方薬が原因とした同様の腎臓障害が多発。学会発表までされている。

ReportsIMG_J1185014197165.jpg
読売新聞2004年4月10日付

このケースは、医薬品の輸入販売会社を相手取った損害賠償訴訟まで発展し、2004年に名古屋地方裁判所で、メーカーに対して製造物責任法(PL法)上の欠陥が有ったと認め3336万円の支払を命じた。医薬品の製造物責任が認められた全国初のケースだ

この先は会員限定です。

会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。

  • ・本文文字数:残り2,997字/全文6,212字
公式SNSはこちら

はてなブックマークコメント

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

反オーガニック教2008/02/01 02:51
南 哲2008/02/01 02:51
南 哲2008/02/01 02:51
えーと2008/02/01 02:51
南 哲2008/02/01 02:51
それを言ったら2008/02/01 02:51
南 哲2008/02/01 02:51
実質的に2008/02/01 02:51
バケガク2008/02/01 02:51
2008/02/01 02:51
医食同源2008/02/01 02:51
※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報

「07年3月まで、有害な根・根茎部分が食品に分類されていた」とあるのは間違いでした。 07年3月まで食品に分類されていたのは「葉・茎などの地上部」です。お詫びして訂正いたします(7月23日)
本文:全約6,900字のうち約3,200字が
会員登録をご希望の方は ここでご登録下さい

新着のお知らせをメールで受けたい方は ここでご登録下さい (無料)