ヘルシアの安全性について、花王から返事が来た。具体的な証拠は一切示さず、各種安全性試験を実施しているから安全、トクホに認められているから安全、と繰り返すだけだった。花王は2003年にも、カテキンの発ガン促進作用を指摘する研究に対し、自ら検証せず勝手に安全宣言。販売後に重大な副作用が見つかる例は医薬品でさえあるため被害事例の公開は重要なはずだが、積極的に公開するカナダなどに対し、日本では企業利益を優先して隠す体質があるのが問題だ。
【Digest】
◇ダイエット効果の試験で、なぜ安全確認できるのか
◇海外では、肝臓障害を示唆するデータも
◇高濃度カテキンの発ガン性は灰色のまま
◇花王は勝手に安全宣言
◇カテキンの光と陰
◇被害事例を公表するカナダ、隠す日本
ヘルシアの肝臓への影響について、花王からようやく回答がきた。それを紹介する前に、少しだけ、
前回のおさらいをする。
| ヘルシアの有効成分である高濃度カテキンのサプリメントを飲んだ人に、カナダ、フランス、スペインで肝臓障害が報告されている。中には肝臓移植を必要とするほど重症な例もある。フランスとスペインは、問題となった商品の販売停止を決定していた。一方日本では、ヘルシアの安全性を審議した厚生労働省は、審議の記録すら残していないことが判明。メーカーの花王に質問したところ、「文書で回答する」と言われ、4日間、待った。 |
|
花王からの回答
 |
|
具体的な質問内容としては、同じ成分である高濃度カテキンとの関連が疑われる海外での肝臓障害の事例を指摘したうえで、「花王はその事例を知っているのか」また、「肝臓への安全性は、どのように確認しているのか」であった。
4日待たされて送られてきた回答が、右のファクスである。
「弊社では、『ヘルシア緑茶・ヘルシアウォーター』につきましては、使用されている原料および製品の各種安全性試験を実施し肝臓への影響を含めて問題の無いことを確認しております。特定保健用食品の申請の際には、食経験も踏まえて安全性の評価を受けており、問題の無いことが確認されています。今後とも花王製品のご愛用よろしくお願いいたします。」
読者の皆さんは、この文面を読んでどのような印象をもたれるだろう。
確かにトクホは、他のいいかげんな健康食品に比べると様々な安全性の試験が課されているが、完全に安全と言い切れるわけではない。
具体的な被害事例を知って不安を感じた消費者に対し、なんの具体的な根拠も示さず、「自分たちでいろいろな試験をしているから安全、またトクホとして国の評価をうけたから安全」では、あまりに一方的ではないか。
あるべき回答としては、
1)肝障害の事例を知っていたのであれば、具体的な試験結果を示して、これこれこういう試験をしているから安全だと判断できる
2)海外での肝障害を知らなかったのあれば、これから確認する
と言うべきだろう。
花王の対応は、トクホという制度にあぐらをかいているように見える。トクホだから安全と主張するのでは無く、安全だと判断する具体的根拠を示すべきだ。
◇ダイエット効果の試験で、なぜ安全確認できるのか
花王が自分から説明責任を果たさないので、具体的にどのような試験をしたのか、調べてみた。花王のホームページを再度探してみたところ、「高濃度茶カテキンの安全性に関するご質問」というF&Qのページを発見した。
そこでは、安全性の根拠として
(1)茶カテキンは緑茶に最も多く含まれている成分で、緑茶は1000年以上も昔から愛飲されてきた飲み物であり、非常に長い食経験があります。(2)これまで実施された高濃度茶カテキンのヒト臨床試験においても、被験者の血液および身体上の検査項目に問題は認められていないことが確認されています。Tsuchida T., Itakura H.,Nakamura H.,Prog.Med.,22,2189-2003,2002
とあった。
(1)の食経験については、もっともなご意見だが、普通の茶飲料の5倍も増やしたら、通常のお茶とは別あつかいすべきだろう。
現に昨年5月、納豆や豆腐に含まれる大豆イソフラボンについては、トクホなど健康食品に濃縮させて使う上での上限値を、食品安全委員会が審議して決定している。食経験があるといっても、何らかの効能を期待させて量を増やした場合には、上限なく安全とはいえないということだ。至極真っ当な考え方だと思う。
だから(2)が重要になる。ここではヒトの臨床試験で安全性を確認したといい、根拠となる論文の出典まで書いてある。だったら、ファクスでの回答でも、せめてこの出典ぐらい書いてくれよ、といいたくなる。
ということで、この論文を入手してみた。簡単な解説が花王のヘルスケアレポートというニュースにも掲載されている。
しかし、だ。この論文のタイトルは「カテキン類の長期摂取によるヒトの体脂肪低減作用」。主に脂肪や体重が減少するという有効性を調べた論文だ。私たちが知りたい肝臓への影響については、確かに血液検査で、肝臓への影響を調べる検査値に異常がないことを調べてある。しかし摂取期間は3ヶ月だけであった。
|
ヘルシアで減った体重は、飲むのを止めると戻る。 ●がヘルシアを飲んだグループ。○は普通のお茶(カテキン126mg)を飲んだグループ
出典:大阪府薬雑誌Vol.57,No.1(2006)

|
|
ちょっと興味深いのは、この調査によればヘルシアを飲んだグループは、3ヶ月で体重が1.69kg減っている。しかし飲むのを止めて3ヶ月経つと元の体重に戻ってしまった。
飲むのを止めるともとに戻るのであれば、下がった体重を維持するためには一生飲み続けなければならないことになる。
そうなると、3ヶ月間だけで異常が観察されないからといって、安全とはいえないのではないか。
こんなことを書くと、だったら何ヶ月までやれというのだ、2年も3年も飲み続ける臨床試験など非現実的だ、というコメントをいただきそうだ。確かにそれも一理ある。
だからこそ、トクホとして許可され販売が開始された後でも、飲んだ人たちに有害な影響が起きていないかのモニターが重要になる。
◇海外では、肝臓障害を示唆するデータも
また、影響を受けやすい人や受けにくい人がいる可能性も考えられる。
実際に、2002年にフランスで行われたダイエット効果を確かめた臨床試験では、70人の被験者中1人に、血液検査で肝臓への異常が見られた例が報告されている。(Gloro R et.al,"Fluminant hepatitis during self-medication with hydroalcoholic extract of green tea",European Journal of Gastroenterology & Hepatolology 2005 Vol.17 No.10)
海外での被害事例は、特に影響を受けやすい敏感な人であった可能性も考えられる。こうした場合、事前の臨床試験で見つけるのが難しいかもしれない。
だからこそ再度、市販後のモニターが重要になる。トクホで認められたから安全だ言い切ることは危険だ。
花王には、やはりもう一度きちんと質問しなおすしかない。電話での回答を嫌がられているので、今回は再度書面で質問を送ることにした。
(1)海外での茶カテキンサプリメントとの関連が疑われる肝臓障害の事例は、日本でヘルシアがトクホに認められた2003年に報告されているが、花王はそのことを知っていたのか?
(2)花王がおこなった臨床試験で、血液検査で肝臓機能を調べる検査値が上がった例は1件も無いのか?
(3)また、ヘルシアを飲んだ消費者から、肝臓障害が起きたという報告は受けていないか?
◇カテキンの発ガン促進作用は灰色のまま カテキンについては、トクホの審査の段階でも発ガン促進作用の疑いが指摘されていたと、前回報告した。この具体的根拠となっているのが、国立医薬品食品衛生研究所病理部長の広瀬雅雄氏の研究と、三重大学医学部の川西正祐教授(当時)の研究だ。
広瀬氏たちの研究では、発ガン物質を投与してガンになり易くしたラットに、餌に混ぜて茶カテキンを食べさせたところ、茶カテキンを混ぜない餌を与えたグループと比較して、大腸ガンになりやすくなったというもの。(Cancer lett.2001 Jul 10;168(1):23-9)
また、川西教授たちの研究は、人間の細胞を使った実験で、ガンの原因となるDNAの損傷が確認されたというものだ。(Biochem Pharmacol. 2003 Nov 1;66(9):1769-78 他)
◇花王は勝手に安全宣言
この川西教授たちの研究は、2003年9月26日の読売新聞に掲載された。その報道に対して、花王は、自社ホームページで以下のようなコメントを出して安全宣言をしている。
日本癌学会で発表されたカテキン濃度は、「ヘルシア緑茶」を飲用した場合のヒトにおけるカテキンの血中濃度の1000倍以上であることを確認しています。
「ヘルシア緑茶」は、特定保健用食品の申請の際に各種の安全性試験データを提出しています。食経験も踏まえて安全性の評価を受けており、問題のないことが確認されています。
以上のことから、これまでどおり安心して「ヘルシア緑茶」をご飲用ください。
花王はなぜか、日本癌学会での発表だけを問題として、カテキンの血中濃度は1000倍といっているが、川西教授たちの別の実験では、ヘルシアの20倍の濃度でもDNA損傷が確認されているという。
そもそも、細胞実験の条件と実際に人が飲む場合の条件を比較して、文句をいうのはあまり科学的だとはいえない。細胞実験などでは、先ず極端に高濃度にして影響があるかどうかを確認するのが一般的だからだ。
だからこの研究について重要なことは、京都大学農学部の大東肇教授が指摘するように「カテキン類には本質的にDNA障害作用があることを示した点で注目される」(『環境と健康』19巻1号2006.03).....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
|
抗酸化物質は、酸化促進物質にもなる。
出典:「医学のあゆみ」Vol.208 No.8 2004.2.21

|
|
