ヘルシア緑茶
普通の緑茶飲料の5倍のカテキン(540mg)を含む。カナダで同量程度のカテキン量を6ヶ月服用した女性に肝臓障害が報告された。
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エコナに次ぐ花王の目玉商品であるヘルシア緑茶。今月(2007年1月)、その有効成分である高濃度茶カテキンが原因と疑われる肝臓障害がカナダで報告された。実はフランス、スペインでも12件の肝臓障害が報告されており、販売禁止措置もとられている。だが日本でトクホに許可した厚労省は、審議の議事録さえ十分に取らない杜撰な審査しかしていないことも判明した。もし飲むのなら、肝臓検査の数値に注意したほうが良い。
【Digest】
◇肝臓移植まで必要とした高濃度茶カテキンの被害
◇フランス、スペインでは発売中止になっていた
◇トクホの審議でも発ガン促進が示唆されていた
◇「議事録なんかとっていません」厚生労働省
◇花王「ファクスで回答します」
偽装のデパート「発掘!あるある大事典2」を、単独スポンサーとして支援し続けてきた花王。スポンサー降板にあたり、「広告主として常日ごろ、信頼性のある番組作りを要望していただけに、極めて遺憾です」と
コメントしたらしい。
しかし、花王という会社は、そもそも自社製品の安全試験のデータも隠そうとする会社だ。この件については昨年8月にmynewsjapanで報告したとおり。
納豆は少々食べ過ぎても、痩せないだけで病気になることは無い。一方、特定成分を濃縮した健康食品は、一歩間違うと病気になってしまう。どちらが重大な問題かは考えるまでもないだろう。
カテキンは、もともと普通のお茶にも含まれている成分だ。そういう意味では私たちが長い間食べてきた安全な食品素材だといえる。
ただヘルシアの場合、それを通常の緑茶飲料の5倍にまで増やしている。また体脂肪を減らせるという効能をうたっているため、まじめな消費者は律儀に毎日飲み続けてしまう。その結果、通常の食生活では摂取できない量を長期にわたり摂ってしまうことになるのだ。
◇肝臓移植まで必要とした高濃度茶カテキンの被害
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カナダの副作用報告
出典:Canadian Adverse Reaction Newsletter,January 2007;17(1)
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このほど発覚した、ヘルシアと同程度の量のカテキン(600mg)が入ったサプリメントを6ヶ月とり続けて肝臓障害を起こしたカナダの女性のケースは、次のようなものだ。
「42歳の女性が、黄疸と腹部の痛みを訴え入院。肝機能検査の結果は異常な値を示した。入院後も患者の状態は悪化し、錯乱と脳症を起こして入院後9日目で昏睡状態になった。検査の結果、中毒性肝炎と診断され入院17日目に肝臓移植が行われた。患者は入院6ヶ月前から、カフェインを抜いた緑茶から抽出したカテキンのサプリメントを1日6カプセル(カテキン量で600mg)飲んでいた。このサプリメントは体重減少用に使用されており、カナダでの販売は認められていない」
カナダの厚生労働省にあたる「ヘルスカナダ」の医薬品・健康食品の副作用ニュース2007年1月号に掲載されたものだ。
この記事は日本では、
国立健康・栄養研究所のホームページ「健康食品の安全性・有効性情報」で1月17日に掲載された。
◇フランス、スペインでは発売中止になっていた
他に同様の被害事例は起きていないか調べてみると、フランスとスペインで1999年から2003年の間に13件の副作用が報告されていることが分かった。ほとんどのケースは軽い症状ですみ、問題と疑われる商品の摂取をやめると改善した。しかし1件だけは症状は改善せず、肝臓移植まで行なったのだという。原因として疑われたのは、フランスのアルコファーマ社のExoliseという緑茶抽出物のカプセル錠だ。
このような健康被害の場合、確かに原因の特定は難しい。他にも色々な要因が想定されるためだ。カナダ、フランス、スペインのケースでも、高濃度茶カテキンが原因だと断定されたわけではない。しかし摂取をやめると改善したことで、その関連性が疑われる。
フランス、スペインでは、サプリではなく一般用医薬品として販売されていたため、肝臓移植まで必要とするような重症例を重視して、2003年7月に販売禁止措置が取られた。
◇トクホの審議でも発ガン促進が示唆されていた
では、日本では大丈夫なのか?
現在、高濃度茶カテキンを利用したサプリメントや飲料は、一般食品として販売されている。特に花王のヘルシア緑茶、ヘルシアウォーターは、「体脂肪が気になる方に」という効能書きで特定保健用食品としても認められている健康食品だ。
ヘルシア緑茶がトクホとして認められたのは2003年3月。食品安全委員会が設立されたのは同年7月なので、ヘルシア緑茶については、厚生労働省が有効性も安全性もまとめて審議していた。そこで厚生労働省が安全性についてどのように審議したのかを調べてみた。
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発ガンプロモーションを示唆する議事録
H14年10月24日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会会議事録の一部
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ヘルシア緑茶を審議した議事録見ると、
「調査会の段階で、カテキンの発ガンのプロモーションという話があって、それこそ医薬品食品衛生研究所でやられたペーパーがでてきてちょっと問題になって、その辺はどうなんだということで回答を求めて、この中で多分、第1部あたりのところに全然問題ないという文献を一応そろえてきているんですね」
という発言がでてくる。
ヘルシアの有効成分のカテキンに発ガンプロモーションの疑いが指摘されていたのだ。しかし議事録のなかで発ガンプロモーションという言葉が出てくるのはここだけ。その後、どのように審議されて問題がないと判断されたのか、全然分からない。
実は、厚生労働省のトクホの審査は2段階になっている。上記の「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会」という長ったらしい調査部会の下に、更に「新開発食品評価調査会」という会があって、実質的な審査はそこで行われているのだ。
ではその調査会でどのような審議がされたのか?厚生労働省のホームページには議事要旨というメモ程度のものしか公開されておらず、そこでは発ガン性という言葉は出てこない。
もっと詳しい議事録と会議資料について、情報公開の申請をしてみた。
すると担当部局の医薬食品局食品安全部基準審査課新開発食品保健対策室調査総務係というまたまた大変長ったらしい肩書きの森さんという人へ連絡しろと言われた。
◇「議事録なんかとっていません」厚生労働省
--ヘルシア緑茶の審議が行なわれた会議の議事録と会議資料の開示をお願いしたいのですが。
「えーとですね。調査会については特に議事録は取っておりませんので、議事要旨という形でホームページにお出ししておりますが」
--議事要旨は見たんですが、あまりにも情報が少なすぎて、もっと詳しいものがないかと思ったんですが。
「それは無いですね。一字一句記録したようなものは取っていないので。(上位の)調査部会の方は議事録を取っているんですけど、調査会の方はメモしかないんですよ。またヘルシアとかだと何年になるんでしょうかね」
--平成14年ですね。
「そのくらいの時期のものになると、もう不存在とお答えするしかないですけれども・・・」
--何年間以上保存しておく、というルールが決まっているんですか?
「行政文書の場合など、たとえば決済文書などはそれぞれ決まっているんですが、特に調査会の議事自体は.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
