左:「スーパードライ」
右:「一番搾り」
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本場・ドイツでは、原料が麦芽とホップ以外のものは、ビールではない。一方、日本は屑米、とうもろこし、コーンスターチなど様々な「副原料」の添加を許し、日本人好みの商品が続々、発売されてきた。さらに、マスコミが示し合わせたように「第3のビール」と持ち上げ販促協力する擬似飲料まで含めると、本場基準でビールと呼べるものは、ヱビス(サッポロ)、モルツ(サントリー)など数えるほどしかなく、数量ベースでは、なんと全体の5%程度しかないことが分かった。
◇米・コーン・スターチが定番副原料
ビールの銘柄別シェアは、高い順に「スーパードライ」「一番搾り」「ラガー」「黒ラベル」。居酒屋などでビールを頼むと、これらしか選択肢がないことも多い。この4大銘柄には共通点がある。ともに、麦芽とホップのほかに、米・コーン(とうもろこし)・スターチ(澱粉)の3種類が添加されているのだ。
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「まじりっけなし」をウリにする一番搾り(キリンWEBサイトより)
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しかし、キリン一番搾りは「まじりっけなしのうまさ」と売り出し、アサヒスーパードライは「本物のうまさ」と宣伝してきたのはご存知のとおり。何を持ってまじりっけがないと言い、何を持って本物だというのか。
私は2年ほど前、単行本『この酒が飲みたい』(コモンズ)の編集を進めるなかで、ビールの原料について専門家に話を聞いた。
ドイツでは、1516年4月23日以来、ずっと原料は麦芽とホップを守り続けている。バイエルン地方で「ビールは、大麦麦芽・ホップ・水のみを原料とする」と定め、1556年にはそれに「酵母」が加えられた。
その後ドイツ全域で1906年に「ドイツ純粋令」が出された。EC統合時に「他国に対する非関税障壁である」と問題となり1987年に効力を失ったが、ドイツ国内では今でも、この法律を守ったビール造りが続けられている。
ノルウェーも、ドイツバイエルン地方の影響を強く受け、現在も麦芽100%ビール。ギリシアもドイツの影響を受けて最近まで「純粋令」があった。ベルギーでは、ドイツやチェコのように良質なホップがとれなかったため、ハーブ、スパイス、フルーツを使用した醸造法が発達した。
香辛料、果実、香草ではなく、ビールにこんなに多くの副原料を許しているのは、日本くらいと言われている。だが、それが主流となり、日本では街中で、こういった副原料入りビールしか選べないことが多い。本物を飲めないのだ。
逆に考えれば分かりやすい。米を原料とした日本伝統の飲み物である日本酒が、日本酒という名称のまま、ドイツ国内で澱粉やコーン、麦芽入りで、「本物」「まじりっけなし」との触れ込みで売られているようなものだ。(注1)
◇日本独自の定義
日本には「純粋令」のような酒造法はなく、ビールは税制でしか管理されていない。酒税法の第3条第7号で、ビールは、次のように定められている。
(1)麦芽、ホップ、及び水を原料として発酵させたもの。
(2)その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの。ただし、その重量の合計が麦芽の重量の10分の5を超えないものに限る。
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つまり、「麦芽・ホップ比率」が3分の2以上入っていれば、残りの3分の1以下までならば「政令で定める物品」を使用してもよく、これを超えて使うと、「発泡酒」扱いになる。政令で定める物品とは、「米、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、でんぷん、糖類又は大蔵省令で定める苦味料若しくは着色料」となっており、業界では「副原料」と呼ばれる。
もともとビールは日本古来の飲み物ではないため、本来の原料である麦芽とホップも、ほぼ100%を海外に依存している。アサヒ、キリン、サッポロ、サントリー各社に、原料がその「麦芽とホップ」だけの国産ビールの銘柄を聞くと、下記の通りであった。
■キリン:「チルドビール」(4銘柄)、「ハートランド」
■アサヒ:「スーパーモルト」(8月中旬に製造中止)、「プライムタイム」(6月新発売)
■サッポロ:「ヱビスビール」、「ヱビス〈黒〉」、「畑から百三十年」(8月30日から期間限定販売)
■サントリー:「モルツ」、「ザ・プレミアムモルツ」
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◇ビール内でシェア1割、全体では5.4%だけ
販売数量は、.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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2006年上半期の主要銘柄販売数量(酒販ニュース7月21日号より)
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