最高裁、法務省、日弁連が共同で出した裁判員制度の新聞広告。経費のもとをたどれば税金である。
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ABC部数の不透明さが言われて久しいが、そのデータを未だ鵜呑みにして税金で紙面広告を出稿しているのが、内閣府や博物館といった公的機関だ。政府広報の紙面広告だけで、年間8億円の税金が欺取されている試算もある。具体的にどのような機関が新聞社の広告詐欺被害を受けている可能性があるのか、読売新聞西部本社をモデルに検証すると、裁判所など意外な役所名も浮上してきた。
【Digest】
◇読売が紙面で“税金もっとよこせ”
◇「押し紙」4割のYCが続出
◇政府広報で税金8億円が無駄の可能性
◇1カ月で47回も打たれた政府広報
◇裁判所から国立博物館、NHK学園まで
◇京都女子、駒沢、慶応なども
◇読売の提灯記事とタイアップ
◇司法関係者までがまんまと騙された?
◇読売が紙面で“税金もっとよこせ”
1月19日付け『読売新聞』に、「政府広報紙不足で申し入れ」と題する記事が掲載された。薬害C型肝炎の原因である血液製剤の納入先を明記した政府広報(折込チラシ)が「新聞購読家庭に行き渡らず、厚労省などに問い合わせが殺到している」ので、読売新聞社が「十分な量の政府広報を用意することを政府に求めるよう、日本新聞協会に申し入れた」というのだ。
つまり読売は、自分の紙面で堂々と、「政府広報(=国民の税金)をもっとよこせ」と求めているのだ。
全国で戸別配達されている新聞の公称部数は、約4500万部。従ってこれらの新聞すべてに政府広報を折り込むためには、同じ部数の政府広報が必要になる。ところが実際に政府が準備した政府広報は3000万部で、約1500万部(33%)が減数されていた。読売によると、それが原因で内閣府に「問い合わせが殺到」したというのである。
いったい何本の電話を根拠に「殺到」と表現しているのか数字も隠されているため、読者は読売の政府に対する“営業活動”を鵜呑みにしてはいけない。読売は、折り込みが足りないというなら、まずは自社の本当の実売部数を公表すべきだろう。
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山積みになった「押し紙」。新聞で包装されているのは折込チラシの束。定期的に古紙回収業者のトラックで回収される。写真は記事とは無関係。
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実際、実売部数についての検証は進んでおり、新聞社が新聞販売店に搬入する新聞のうち、かなりの新聞が実際には配達されず、ノルマとして買い取りを強いられる「押し紙」に化けている実態が分かってきた。後述するように、読売西部本社管内では推定4割にもなるため、公称より33%減らしても、まだ余るのだ。
その結果、内閣府も政府広報を新聞に折り込むに際して、適正な折込部数を決めるのに苦慮しているようだ。内閣府の職員が言う。
「水増し部数があるという話は聞きますが、地域によって程度が異なり、把握しようがないのが実情なんです」
内閣府は「押し紙」を推定して1500万部の減数をおこなったことを公式には否定するが、部数の水増しが行われていることを把握しているのだから、やはり「押し紙」を考慮して、公称部数を33%下回る数量を設定したと考えるのが自然だ。
政府広報の部数が3000万部と4500万部では、経費の支出額が大幅に異なる。しかも、その経費は国民の税金だ。
C型肝炎の政府広報に割り当てられた予算は、約5億円。もし、内閣府が「押し紙」分を含めた4500万部分の政府広報を準備していたとすれば、1億円から2億円ほど余計に税金が支出されていたことになる。
◇「押し紙」4割のYCが続出
読売新聞の西部本社管内(九州・山口地方全県)における部数水増しの実態を紹介しよう。広告主が、いかに騙されているかを実感できるはずだ。
次に示すのは、福岡県の筑後地区とその周辺地域におけるYC(読売新聞販売店)で明らかになった、水増し部数、あるいは「押し紙」の実態である。
※YC大牟田明治: 2007年10月の定数は2400部だった。しかし、弁護士の仲介で「押し紙」を排除したので11月の定数は1480部になった。差異の約900部がほぼ「押し紙」だ。
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新聞折込の選挙公報も、「押し紙」と一緒に多量に捨てられる。写真は記事とは無関係。
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※YC大牟田中央:2007年10月の定数は2519だった。しかし、弁護士の仲介で「押し紙」を排除したので11月の定数は1620部になった。差異の約900部がほぼ「押し紙」だ。
※YC久留米文化センター前:2007年11月の段階で定数は2010部、残紙は997部。残紙の約1000部がほぼ「押し紙」。
※YC小笹:1998年5月の時点で定数が2330部、実配部数が1384部。差異の約1000部がほぼ「押し紙」。
このうちYC大牟田明治、YC大牟田中央、YC久留米文化センター前の3店は、昨年の末に弁護士に依頼して「押し紙」排除に成功した。また、YC小笹は現在、「押し紙」裁判を進めている。
ちなみに「押し紙」の責任がYCではなくて、読売新聞社にあることは、真村裁判を通じて福岡高裁で認定されている。つまり「押し紙」は、読売新聞社による販売政策の結果にほかならない。
これら4店のほかにも「押し紙」があるという話は、複数の関係者から聞いている。
こうした、わたしの多くの取材結果からの推定では、読売新聞西部本社管内の「押し紙」率は約4割である。同じ販売政策の下では、「押し紙」率も平均したものになる傾向があるからだ。従って4割ぐらいの紙面広告が紙面本体と一緒に捨てられている可能性が高い。
◇政府広報で税金8億円が無駄の可能性
実配部数の不透明な実態は、折込物にかかる経費のだまし取りに加え、紙面広告料金のだまし取りにもつながっている.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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典型的な「突出し広告」スタイルの政府広報
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