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【政治のホント超図解4】モルガンの金融マンより忙しい国会議員

情報提供
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本記事は渡邉が書いた『週刊東洋経済』2007年12月22日号巻頭特集の原稿です
 国会議員やその候補者は、どのような悩みを抱えているのか。今回は、物理的な面から、政策に割く時間の捻出に苦労する「スケジュール」、精神面から、信念に反する投票行動も強いられる「党議拘束」に焦点をあて、その実像に迫った。いずれも有権者から見えにくく、理解されにくい。こうした政治家の悩みのポイントを知ることで、応援する議員を選ぶ際の視点を持つことができるはずだ。
Digest
  • 外資金融より忙しいのが当り前!?
  • 選挙対策における衆参の差
  • 「選挙」と「カネ」が心配で政策に時間を使えない…
  • オリンピックのジャンプと一緒
  • 地元に委員会質疑の様子を流せ
  • 官僚時代に味わえなかった「成長してる感」
  • 人が傷つく決断をできるのは政治家だけ
  • 党議拘束という悩み
  • 防衛省格上げ法案で見えた信念
  • ブレずに信念を貫く平沼議員
  • 党議拘束が外れたのは臓器移植法案1件だけ

外資金融より忙しいのが当り前!?

「自分の場合は資金には恵まれていますが、それでも金融マン時代よりずっと忙しい。国会議員のスケジュールは、①カネ集めに時間を割くのか、②地元で選挙対策に時間を割くのか、③政策立案に時間を割くか。この3つに、自分の24時間をどう割り振るかなんです」

東京銀行を経て、モルガンスタンレー証券の役員クラスにあたるマネージング・ディレクターを3年前に辞め、同年、国会議員に転じた民主党の大久保勉議員は、国会議員の多岐にわたる仕事ぶりを、そう表現する。

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ある1週間のスケジュール

いったい、外資金融マンより忙しい仕事内容とはどういうものなのか。スケジュール表を見せてもらうと(右記参照)、平日は金融関係者からの情報収集、役人を呼んでのレクチャー、質問準備、国会出席、そして夕刻からは同僚議員の資金パーティーの繰り返し。

土日は地元の民主党県連との打合せや記念式典への顔出しなど、イベントが目白押しだ。プライベートな時間など、ほとんどなさそう。確かにこれでは、自分の資金集めのために使うような時間は見当たらない。

野党議員にもかかわらず、官僚によるレクチャーが目立つ。官僚は自分が作ってきた政策を通すため、与党議員との関係を密にする。野党議員は実力者でない限り、なかなか相手にされない。

経済産業省でキャリア官僚を13年間経験した後藤祐一氏が解説する。「官僚は、すごいシビアに政治家を見ているんです。官僚が作った原案を、利害関係者の顔を立てながら調整できる先生のところには、片っ端から集まる。田中角栄さんがそうだったように、官僚から情報が入る政治家にならないと話にならない」

官僚レクは、大久保議員のいう3つのうちの、③政策立案の時間である。

このように、カネ集めよりも政策立案に時間を使えるのは、外資金融マン時代の蓄えがあるからだ。モルガンのMDは年俸で億単位が当たり前。したがって基本的には、②選挙対策と③政策立案に注力できるという特殊事情がある。

選挙対策における衆参の差

さらに、②選挙対策についても、任期が6年とはっきり決まっている参院議員は恵まれているほうだという。「衆院はいつ選挙があるか分からないので大変です。自分はまだ選挙まで3年あるので、地元のほうは若干、勘弁してもらっている」(大久保議員)。

実際、金帰火来(金曜に地元選挙区に帰って地元に顔を売り、翌週火曜に永田町に戻ってくる)ではなく、大久保議員は「金帰日来」になっている。その分、政策立案に時間を使えるのだ。

確かに、今年が選挙年だった参院議員は、大幅にその影響を受けていた。「選挙が近い人は委員会質問の準備ができないので、代わりを頼まれる。それで私の発言時間が多くなっている事情もある」(桜井充議員)。

ある参院議員は「ここだけの話、(選挙の年になる)6年目は委員会の理事など時間を拘束される役職を降りて、ヒラにしてもらった。テレビに出たほうが有利だからです」と明かす。

選挙が危うい議員はテレビ出演を優先せざるを得ない。「国会会期中に、(国会の日程が入らない月曜を除く)火水木金の昼にテレビに出ているということは、本来の仕事をサボっているということ。国会の日程というのは前日にならないと確定しないので、テレビ出演の予定を入れられるはずがないんです」(同)

選挙に落ちたら、次に公認されるまで無職になってしまうのだから、政策立案どころではないのだ。「だから、いい人が来ないんですよ。大企業に勤めている人が、政治の世界に来ない。結果、2世、3世か、もしくは学生のころから政治家志望の人か、市会議員、県会議員から。これが問題です」(大久保議員)

先代からの地盤を引き継ぎ、地元に強固な支援者組織ができあがっている世襲議員は、②選挙対策をそれほどしなくてよい点で、そのメリットは甚大なのである。

「選挙」と「カネ」が心配で政策に時間を使えない…

大久保議員が、自分では開かないが、同僚議員の政治資金パーティーに顔を出しているように(この週は2回)、通常は電話や手紙、訪問によって参加者を募り、資金パーティーを行う。そのカネで私設秘書を雇い、地元の事務所を増設して秘書に地元対策を自分の代わりにやってもらえば、自分の時間を消費しなくてすむからだ。

通常は、資金パーティーへの参加を募るための活動に時間を割き、地元に帰ってイベントに出席するなど地元対策に時間を割き、政治家として最重要なはずの政策立案にかける時間がどんどん削られていくのが国会議員の実情である。

大久保議員のような、前職で富を築いた人ではなく(カネがない)、2世3世議員でもない地盤が弱い人(選挙が不安)が国会議員になると、どういうことが起きるのか。

民主党の山井議員がその構図を説明する。「立法活動にのめりこんで時間を使うと、資金も集まらないし、(地元に帰れないから)選挙にも落ちる。だから、地元活動を頑張る。その結果、地元偏重の議員ほど当選を重ねやすくて、それで大臣になる。立法はやってないから、政策はぜんぶ官僚任せになる」。これは国民にとって、絶望的なサイクルといえる。

オリンピックのジャンプと一緒

大久保議員は、極めて特殊な例だ。なぜ自分で貯めたカネの散財を決意してまで、政治を志したのか。

--大久保さんの場合は、金銭面でいくとモルガンのMDとかに比べて一気に減るわけじゃないですか。その辺のモチベーションといいますか、どういう動機で政治家になられたんですか?

「もうおカネはいいですから。むしろ社会貢献ですね。日本の金融界が弱いでしょう。要はオリンピックと一緒ですよ。例えば、日本人が長野オリンピックで金銀銅をジャンプでとりましたね。その次は誰もいなかったでしょう。何が変わったかと言ったら、ルールが変わったんですよね

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後藤祐一氏。69年生まれ。東京大学法学部卒業後、経済産業省を経て、2005年、衆院補欠選に出馬し落選、現在、次期衆院選の民主党公認候補。

党議拘束造反の事例(同特集58頁より)

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読者コメント

読者2008/03/05 11:52
市議2008/03/05 08:33
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