B 不良企業予備軍 【バランス型】
(仕事3.0、生活3.0、対価2.4)
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昨年秋、花王の係長クラスの社員に、突然、残業代の支給が始まった。マクドナルドの「なんちゃって管理職」問題で原告側の勝訴が確定し、会社が約1000万円の和解金を支払うことで合意(2008年3月)したことを受け、密かに制度を変えたのである。要するに、マクドナルドが、実態がないのに管理職扱いにして店長の残業代をカットしていた違法行為と同じ問題を、花王も抱えていたということだ。偽装管理職が社会問題化するなか、花王はこの変更について一切、対外的に発表はしなかった。
【Digest】
◇「お縄になっちゃうので言えない」問題
◇エラい人ほど朝が早い
◇花王マーケ職の「なかなか落ち着けない」1日
◇厚労省お墨付き“ファミリー・フレンドリー企業”の実態
◇周りは親切、ライバルではない
◇SSKとエコーシステム
◇うまくいかなかった職種別採用の示唆
◇R&D主導に加えマーケ主導商品へ
◇3年はデッチ仕事を覚悟
◇今夏ボーナス、会社業績連動分はゼロ
◇抜擢なし、40歳まで差がつかない
◇賞味期限ギリギリのヘルシアが半額で
◇「事なかれ主義」の大企業病
◇「お縄になっちゃうので言えない」問題
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花王のキャリアパス
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具体的に変更の対象となったのは、マーケティング職なら「シニアマーケター(SM)」、研究開発職なら「サブグループリーダー」と社内で呼ばれる、ランク3(MK3、RD3…)の社員である(右記キャリアパスの図参照)。
マーケで学卒14年目、研究開発で院卒10年目に、ほぼ一律で昇格すると、月収が定額支給となり(ボーナス含め年収750万円ほど)、裁量権も持たされぬまま、「E職」と呼ばれる上司の管理下で、延々と時間を気にせず働かされていた。
マーケの中堅社員が言う。「SMは部下を評価する権限もない“なんちゃって管理職”でした。ビューティーケア事業ユニットは、毎年だれかが倒れるといわれるくらい過酷で自宅への持ち帰り仕事も多いのに、つい半年前まで残業代が出なかったんです」
花王は、過去にも労働基準監督署の検査が入りサービス残業が問題視されたことから、2005年前後に、ICカードによる入退館時刻の自動記録システムを導入。出社の時刻と退社の時刻が情報システムを通じて勤怠管理の画面に現れ、それに合うように社員が自己申請する仕組みになった。管理が機械化されたことで労働時間は正確になり、サービス残業はなくなるはずだった。
だが、カルチャーはそう簡単には変わらず、当初目的どおりには運用されていない。「サービス残業がカルチャーになっていて、みんな変とも思わないんです」(購買部門社員)。多くの社員は、サービス残業を当たり前のこととして受け入れているという。花王には日本の労働基準法など通用しないのだ。
具体的には、どう運用されているのか。辞めたばかりの元社員に尋ねると、「お縄になっちゃうので詳しくは言えない」と興味深い答えで、社員も違法性の認識を持っていることが分かった。
現役社員によれば、その手口はこうだ。.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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花王の現場組織 |
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花王の給与(ランク2中堅社員) |
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