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ポスト戦後のキャリア論-7 能力を開発するには①

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本書のキャリアモデルと、マーカスのロジック

動機が分かっても、能力がない人は仕事がデキないばかりか、むしろ企業にとっては銃殺されるべき存在になりかねない、と述べた。能力があっても、高い能力=高い給与、すなわちキャリアの成功と勘違いしている人も多いし、弱点の克服こそ重要だという迷信に騙されている人も多い。自分の能力は、正しく効率的に開発していかねばならない。本章では、能力開発のセオリーについて述べる。

Digest
  • 才能+知識+技術=強みを持つ能力
  • 「ほんの少しの才能を持つこと」は難しい
  • ストレングス・ファインダー
  • 資質と職務のマッチング
  • ベルビンのチームモデル
  • 能力のライフストーリー分析
  • 自分の才能が分かるとき

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才能+知識+技術=強みを持つ能力

能力には正しい開発の法則がある。それは、自分の才能を見極め、そこに重点的に知識と技術を加えていくことだ。しかも、その能力は、少なくとも予想しうる将来、自身の動機に合致する仕事内容で役立つ見通しが立っていることが望ましい。

前章で、動機の中心、つまり「コア動機」の背後には「価値観」があると述べたが、同様に、能力の中心を「コア能力」と呼ぶなら、その背後には「才能」がある。才能とは、先天的に備わっている優れた資質で、能力とは、才能にプラスして後天的に身についたスキル(知識や技術)の総称である。

ベストセラー『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』(マーカス・バッキンガム著)では、この才能について以下のように定義している。

才能…無意識に繰り返される思考、感情、行動のパターン

知識…学習と経験によって知りえた真理と教訓

技術…行動のための手段

そして、才能+知識+技術=「強み」、強みの定義は「常に完璧に近い成果を収める能力」であるとした。マーカスは、「強み」を意識的に伸ばすために、自らの才能(資質)を理解し、知識と技術を、才能ある分野で修得することに時間を傾斜配分することこそが決定的に重要だ、と説いている。

マーカスは統計で有名な「ギャラップ社」でビジネスリーダーの調査に17年携わってきた人物で、これは統計的な結論だという(なお、スポーツ選手における筋力や持久力など肉体的な才能は、脳とは別の必要条件である)。

マーカスによると、「強み」の源泉となる才能とは、脳の神経細胞(ニューロン)同士の橋渡し役になる「シナプス」の回路を指し、これは10代の半ばに固まって以降、生涯変わらない。ようは、パソコンの中に入っている半導体の集積回路みたいなものをイメージすればよい。一度固まった回路は、入ってくる情報に対して、常に同じパターンで信号を変換して送り出す。この脳内回路が個々人によって異なるため、各自が様々な才能を持つ。

私にとって、マーカスのロジックは全く違和感のないものだった。本書のキャリアモデルに当てはめて言えば、右上の図のようになる。

才能が全くない分野でいくら能力開発をしてみたところで、「コア動機とコア能力の双方と被る部分で仕事を得る」というキャリア目標を達成できない。つまり、ハッピーなキャリアにはならない。

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ある1人の人間が持つ様々な才能(資質)と伸び方

この議論で興味深いところは、弱みを伸ばすことに比べ、強みを伸ばすことのほうが、いかに人間にとって自然で、かつ効率よく生産性の高いものなのか、を生物学や行動遺伝子学などの研究事例から説明している点だ。「脳にとってすでにシナプス結合がたくさんある領域に新しいシナプス結合を作るほうが簡単なのだ。よって、すでに強い分野でもっとも成長することができる」(『最高の成果を生み出す6つのステップ』)。これを私なりにイメージ図で示すと、左記のようになる。

ポイントは、全く同じ量の努力(時間)をしても、もともと才能が1しかない「才能A」の場合は後天的に4しか伸びず、逆に才能がもともと9ある「才能B」については、12伸びる、という点だ。この差もあくまでイメージであるが、同じ時間だけ努力をしても、伸びる能力の絶対値は大きく異なる。つまり、加速度的に差が付くのだ。その結果、最初の段階で、どの才能を伸ばすと決めたのかが、強みを形成して一流になれるか、または二流以下で終わるのかを分ける、決定的な原因になる。

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一流の到達ラインはきわめて高い。先天的な段階で既についてしまっている才能の差は、一生、埋まらない。才能のない分野で努力しても一流に到達することはない。

マーカスの言う強み=「常に完璧に近い成果を収める能力」は、数学でいうと、右記のような漸近線(無限に接近してくる曲線)で表せる。

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