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新潮・黒薮VS読売の“押し紙”部数偽装訴訟、2審開始 弁護士16名が支援「これは言論弾圧事件だ」

情報提供
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「A4版」60ページの詳細な控訴理由書。「押し紙」問題だけではなくて、フリーライターに対する言論弾圧の問題にも言及している。
 読売新聞社が、偽装部数(押し紙)報道をめぐって新潮社と黒薮哲哉氏を訴えた裁判の控訴審が10月13日に東京高裁で始まった。被告の黒薮氏の代理人として、新たに16人の弁護士が支援に乗り出した。その背景には、読売が黒薮氏に対して1年半の間に起こした3件の裁判が、ライター個人に対する言論弾圧だとの認識がある。この3件による請求総額は実に約8千万円にものぼり、読売にとって不都合な言論を行う個人の抹殺を企てたものであることは明らか。弁護団から提出された控訴理由書は、本来認められている「推測・評論」が一審では「事実の摘示」と強弁され立証を求められるなど、原審判決が立証対象を誤っていたことを鋭く指摘している。(控訴理由書と一審判決文はPDFダウンロード可)
Digest
  • 定評あるノンフィクションを切り捨て
  • 立証対象を誤った原審判決
  • 読売の販売会社「ユース」の実態
  • 「押し紙」の定義も誤り
  • 読売による一連一体の言論弾圧

「読売新聞VS週刊新潮」の名誉毀損裁判が、東京高裁を舞台とする第2ラウンドに入った。去る10月13日、第1回口頭弁論が開かれ、読売新聞社と新潮社(黒薮)の双方が意見陳述を行った。

この裁判は、『週刊新潮』(2009年6月11日号)に掲載された「新聞業界最大のタブー『押し紙』を斬る」と題するわたしの署名記事が名誉棄損に当たるとして、読売が5500万円の損害賠償と謝罪広告の掲載などを求めたものである。

第1審の東京地裁では読売が勝訴。新潮社とわたしに対して、総額で385万円の支払いを求める判決を下した。読売は、「勝ちました」と言わんばかりに、自社の紙面で勝訴を大きく報じている。

(参考動画:判決を解説した「桜プロジェクト」

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(上)読売新聞東京本社。(下)主筆兼会長の渡邉恒雄氏。渡邉氏は、2007年度の新聞文化賞の受賞者でもある。

控訴審から、被告側の代理人弁護士の構成が変わった。

新潮社の代理人弁護士に加えて、わたし個人の代理人弁護士として、福岡県で読売を相手に10年来、販売店訴訟にかかわり、読売による優越的地位の濫用を認定する判例(真村裁判福岡高裁判決)を出させた弁護士ら16名が加わったのである。

言論・表現の自由にかかわる重大問題ということで支援を要請し、承諾を得た結果、弁護団の新体制が整ったのだ。

わたしはわずか1年半の間に、読売から3件の裁判を次々と起こされていた。

2008年2月の著作権裁判(最高裁で黒薮の勝訴が確定)、同年3月のウエブサイト「新聞販売黒書」の記事をめぐる名誉毀損裁判(地裁、高裁で黒薮が勝訴、現在は最高裁で継続中)、本稿で取り上げる『週刊新潮』の記事をめぐる裁判である。読売から請求された総額は約8000万円である。

福岡の弁護団は、これら一連の裁判を読売によるフリーライターに対する「一連一体」の言論弾圧事件という認識に立って、支援を引き受けてくれたのである。いわばこの裁判は、単に「押し紙」問題だけではなくて、言論・表現の自由についてのテーマも内包しているのである。

なお、読売側の代理人は、伝統ある人権擁護団体である自由人権協会の代表理事を務める喜田村洋一弁護士と、事務局長の藤原家康弁護士である。喜田村弁護士は、読売の販売政策もサポートしてきた経緯がある。

定評あるノンフィクションを切り捨て

福岡の弁護団が控訴理由書の中で主張している内容は、一言でいえば東京地裁が新潮社とわたしに求めた立証対象が完全に間違っているということである。もちろんその他にも主張はあるが、中心となる柱は、立証対象をめぐる主張である。

しかし、その詳細に踏み込む前に、 第1回口頭弁論で展開された興味深い場面を紹介しておこう。

裁判長は新潮と読売の双方にそれぞれ15分の意見陳述を行うことを認めた。

(参考:黒薮の意見陳述の全文

それを受けて読売側は、喜田村弁護士が意見陳述を行った。その中で「裁判所への批判=悪」と言わんばかりの考えを披露したのである。言論・表現の自由を前提に活動しているメディア企業によるこのような主張は珍しく、紹介する価値が高い。

以下、その部分を引用してみよう。

原審である東京地方裁判所は、このような欠陥記事である本件記事による名誉毀損を認めました。蓋し、当然のことです。

 しかし、黒薮氏は、自らの取材ないし執筆に問題があったとは全く認識していないようです。それどころか、逆に、法廷外で、インターネットを利用するなどして、原審裁判所を始めとして、根拠のない非難を裁判所に浴びせ続けています。たとえば、原審の3人の裁判官の実名を挙げた上で、「3人の判事は、証拠として提出された書籍を全部読んでいない可能性が高い。新聞社のビジネスモデルを理解しないまま、判決を下したようだ」と決めつけ、あるいは、原審判決について、「結論を先に決めた判決であるから、書籍に裏付けがないと判断した具体的な理由を一行も記述できないのではないだろうか?」と非難しています。(略)
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魚住昭氏の『渡邉恒雄 メディアと権力』。東京地裁は、記述に裏付けがないと決めつけた。

引用文にある書籍とは、魚住昭氏の『渡邉恒雄 メディアと権力』(講談社)、河内孝氏の『新聞社-破綻したビジネスモデル』(新潮社)、それに森下琉氏の『押し紙』(同時代社)である。東京地裁は、これらの書籍につて、「記載を裏付ける証拠がなく、これをもって『押し紙』が存在することを認めることはできない」と認定したのである。

原審判決の記述では、具体的になにをもって記述に裏付けがない証拠とするのかは不明だが、わたしはこのように飛躍した論理の「文芸批評」を読んだことはなかった。記事や書籍を正しく評論する力があるのかすらを疑った

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2000年8月20日付け朝日新聞に掲載された『渡邉恒雄メディアと権力』の書評

新聞は再販商品であるにもかかわらず、一部のホテルやファミレスでは、無料で配布されている。

販売店で新聞が過剰になっている事実は、朝日の秋山耿太郎社長も認めている。『週刊ダイヤモンド』(2011年1月15日)号。

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読者コメント

mennso2012/04/11 09:22
元ASA関係者2011/11/01 14:07
元ASA関係者2011/11/01 14:04
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