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就活自殺遺族に聞く-1 ニトリ、地元銀、IT企業…内定3つで「なぜ死ななければならないのか」

情報提供
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関西学院大学4年生だった青木佑介さん。軽音楽サークルの会報誌から。(遺族提供)
 「就職活動での自死というと、内定が1つも取れなくて、ということしか考えられないですよね」--。1人息子で関西学院大学4年生だった青木佑介さん(当時21)を就活自殺で失った父・昭さんは、そう話す。佑介さんは、「お値段以上」のCMで有名なニトリや関西アーバン銀行など3社の内定をとり、ニトリへの入社を決め、東京本部で行われた内定者懇親会にも出席していた。だがその後、就活を再開して間もなく、2009年7月に自殺した。内定辞退の決断、持病の腰痛をめぐる不安、自殺未遂という兆候…佑介さんはなぜ自殺に至ったのか、どうすれば防げたのか。5時間にわたって昭さんに話を聞いた。
 警察庁によると、2011年は、大学生など150人が就活の悩みで自殺。2007年の2・5倍に増えたという。青木佑介さんもその1人である。

※自殺に対する世間の否定的な感じ方をなんとかしたいという青木さんの思いから、名前と顔を出すお許しをいただいた。

※「うつ状態の人にがんばれと言ってはダメだ、がんばらせてはダメだということは知っていた。知っていたのに、実際には反対のことを言ってしまった。思いとは逆のことをしてしまった。頑張らせてはいけない状態にあるという認識ができなかった。自分の対応のまずさが佑介を死なせてしまった」ーーそう後悔する昭さんは、「この記事だけで佑介の死を理解してはダメだ」「間違いや後悔をちゃんと役立ててもらいたい」とも言う。

※取材をお受けしてくださる就活自殺ご遺族の方、ご連絡をお待ちしております。どうぞよろしくお願い致します。(FAX 050-3488-3175,info@mynewsjapan.comまで)

 阪神尼崎駅の近くにある喫茶店で、青木昭さん(65)はこう漏らした。

 「ふつう、就職活動での自死というと、内定が1つも取れなくてということしか考えられないですよね。それ以外は考えられないですよね。それが内定が3つもあって、なんで死ななければならないのか。3つも取れるほど頑張ったのに、なんで死なせてしまったのか」

 昭さんの一人息子で、関西学院大学文学部の美学芸術学専修だった青木佑介さん(当時21)は、就職活動中だった2009年7月23日、自宅マンションのリビングで首を吊って自殺した。インテリア小売大手で就職人気企業とも言えるニトリや、地元の銀行など3社から内定を得ていながらの自殺だった。なぜそんな結末になったのか、昭さんに話を聞いた。

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(上)ニトリから内定者への通知。(下)ニトリの案内冊子の裏に書かれたメモ。(遺族提供)

◇ニトリ、地元銀行、IT企業から内定
 佑介さんの趣味は音楽。大学在学中に音楽の専門学校にも通っており、昭さんによれば、「趣味の域を少し超えた知識を持っていた」。小学校1年から始めたピアノ教室にも大学生1年生のころまで通い続け、所属する軽音楽サークルではキーボードとボーカルを担当、アルバイト先はレコード販売店HMVで、ゼミでの研究テーマは「テクノロジーの発展と音楽表現の変化」だった。就職活動も第一志望は音楽業界。任天堂にはゲーム音楽を4つ作曲して送っているが、どれも内定には届かなかった。

 「ポジティブな方だが、将来をあまり期待しておらず、楽しいことはあるのだろうか、何の為に生きるんやろうか、という受け止め方をしていた」というのが、昭さんから見た佑介さんの性格だ。そんな佑介さんが人生の支えにしたいと考えていたのが音楽で、会社選びも、音楽を楽しむ時間が持てるかどうかが大きな基準になった。

 「性格がよく書かれている」と昭さんが見せてくれたのは、サークルが制作した卒業記念冊子(佑介さんは死亡していたが卒業メンバーに入っている)で同学年の仲間が佑介さん宛に寄せたメッセージの1つ。

  まじめで、くそまじめで、優しくて、丁寧で、誠実で。
  お人好しで、気が弱くて、ちょっと抜けてて、優柔不断なところがあって
  誰もが当たり前に聞き流していくところを、流せない。そんなところあったと思う。

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(上中)佑介さんのエントリーシート。(下)別のESの裏面に書かれた自己分析。画像処理は筆者による。(遺族提供)

 佑介さん自身、自殺する1週間前のミクシー日記に、「正直者は馬鹿を見る」「羊を被った狼になりたい」と書いている。エントリーシートの裏面に書かれた自己分析などによれば、人から可愛がられるタイプだったようだ。

 音楽業界以外で志望した職種はおもに営業で、6月半ばまでに、ニトリ、関西アーバン銀行、関西のIT企業の3社から内定を取っていた。最初の内定は5月26日、IT企業のSE職としてだった

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2009年6月23日と7月16日の佑介さんの日記。(遺族提供)

2009年6月と7月の、父親のメモ入りカレンダー。画像処理は筆者による。(遺族提供)

エントリーシートの殴り書き。いつ書かれたのかは分からないという。(遺族提供)

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yakouhai2012/05/29 12:47

生きるために就活をしてみると、何のために生きるかまで考えてみたりする。私はしなかったが。

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jiangmin-alt2012/05/22 00:47

やっぱ「けいおん」はだめだな。古典をやろう! とりあえず高校浪人でもして、早い段階で履歴書に空白を作っておくのがいい予防策になるんではないかな。

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kinghuradance2012/05/21 13:49

記事を最後まで読めないのでどのような結論になっているのか分からないけれど、何故彼が死を選んだかは彼自身に聞かないと分からない…。

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ニトリに採用されたい2016/12/09 06:09
  2016/10/09 18:06
ニトリに採用されたい2016/10/09 15:15
2013/04/20 21:07
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三宅勝久2012/05/22 21:19会員
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