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携帯基地局撃退マニュアル 住民が健康被害から身を守る7つの対策

情報提供
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かつては携帯基地局の設置に反対する住民を、電話会社がガードマンを雇って排除したこともある。写真は、熊本市御領のケース。(本文参照)
 国際がん研究機関(IARC)が発癌性リスクを指摘した携帯電磁波。その発信基地である携帯基地局の周辺住民と電話会社とのトラブルが様相を変えてきた。かつて電話会社は、基地局の設置を決定すると、住民の反対を押し切ってでも、強引に開局にこぎ着ける傾向があり、既存の基地局の撤去にも応じなかった。ところがこのところ電話会社が「撤退」に追い込まれるケースが増えている。その背景に、疫学調査などからも携帯電磁波の人体への影響が否定できなくなってきた事情がある。電話会社とトラブルになったとき、どう対処すべきなのか?住民運動に対して恫喝裁判を起こされたら?伊那市、京都市、町田市、横浜市などの成功事例に基づき、問題解決のための「7条の対策マニュアル」を公開する。
Digest
  • KDDI、早々と撤退
  • ガードマンを使って住民を排除
  • ポールは設置したが・・・
  • 基地局設置の計画が消えた
  • マンションの総会で基地局撤去を決議
  • IARCが発癌リスクを認定
  • 発癌リスクを示すドイツの疫学調査
  • 太宰府市における疫学調査
  • トラブル撃退のマニュアル7条
  • SLAPPには弁護士懲戒請求で正面から対抗を

今年の2月末、長野県伊那市の日影区で自営業を営む村上信夫さん、好子さん夫妻(仮名)をひとりの女性が訪れ、大型封筒を手渡した。封筒の中には、A4サイズの書類が4枚。女性は訪問の目的を、

「このたびKDDIの携帯電話の中継アンテナ設置の計画があり、建設予定地から半径30メートル以内にお住まいの方や土地の所有者の方々にお知らせをお届けしています」

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さまざまな型の携帯基地局。街のいたるところで観察できる。

と、説明したという。

携帯電話の中継アンテナとは、俗に言う携帯基地局(左写真)のことである。基地局のアンテナからは、電子レンジとほぼ同じ周波数のマイクロ波(電磁波の一種)が発せられ、通話を可能にしている。

しかし、近年、マイクロ波が人体に与える発癌リスクなど、人体への多様な影響が否定できなくなってきた状況の下で、携帯基地局の設置をめぐり、電話会社と住民の間でトラブルになるケースが増えている。

女性は、トラブルを事前にさけるために基地局設置の通告を行ったのである。

しかし、この種の通告対象者は、極めて限定されている。対象になるのは通常、基地局を中心にポールの高さの2倍の半径で円を描き、円の領域内にある民家や土地の所有者に過ぎない。

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携帯電磁波の人体影響がクロースアップされるなか、マスメディアも特集を組むようになった。写真は、『週刊東洋経済』(2012年6月23日号)の記事。

女性が村上さん宅を訪れたのは、設置を計画している基地局のすぐそばに、60軒ほどの住民が共同で所有している山林があり、村上さんが地主の代表名義人のひとりになっていたからだ。

ちなみに村上さん宅から、基地局の設置場所までの距離は208メートルだった。高低差は30メートル。従って基地局が操業を始めると村上さん一家もマイクロ波の直撃を受ける。

村上さん夫妻はマイクロ波の危険性について、ある程度は知っていた。「伊那谷の環境と健康を守る会」という住民運動に参加している知人がいる関係で、携帯電話の設置をめぐるトラブルが全国で起こっていることも聞いていた。そこで相手をけん制するために、

「説明会は行わないのですか?」

と、女性に尋ねた。

「説明会をご希望ですか?」

女性の顔に、当惑の表情が浮かんだ。住民から説明会の開催を求められた場合、基地局の設置に難航が予測される。女性は、村上夫妻の希望を上司に伝えると言い残して、帰って行った。

ちなみにこの女性はKDDIの社員ではなく、KDDIから基地局の設置をめぐる業務を請け負っている会社の社員である。KDDIに限らず、ほとんどの電話会社は、基地局設置の「前線部隊」として、こうした下請け会社を使っている。

参考:「伊那谷の環境と健康を守る会」が主催した馬奈木昭夫弁護士の講演『人体実験を許すな。~携帯電磁波の危険性~』)

KDDI、早々と撤退

村上夫妻が巻き込まれた基地局設置をめぐるトラブルは、その後、意外な展開をみせる。結論を先に言えば、KDDIが早々と撤退したのだ。相撲の決まり手で言えば、自滅の典型、「腰くだけ」であった。

好子さんにとっても、それは予想もしない結末へと進んでいった

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携帯基地局の設置に反対して座り込んでいる人々。熊本市御領。

携帯電磁波の安全性についての大手3社(ドコモ、KDDI、ソフトバンク)の見解。、『週刊東洋経済』(2012年6月23日号)より。孫正義氏は、原発には反対しているが、携帯電話は、問題ないとしている。

太宰府市の基地局問題は、市議会を巻き込んだ混乱へと発展した。(上)西日本新聞の記事、(下)毎日新聞の記事。

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tukanana2014/02/13 19:47

どう見ても携帯電話の基地局でないアンテナが。ま、ライターが「別の電波」発信源だから仕方ないか(棒)

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読者コメント

てる2015/10/11 21:19
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