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イタリア最高裁で携帯電話による脳腫瘍で労災認定、日本で認められる条件

情報提供
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イタリアで職場の携帯電話が原因で脳腫瘍を起こしたと労災認定されたイノセンテ・マルコリーニさん。イタリアのニュースRai News24より
 仕事中の携帯電話長期使用により脳腫瘍ができたとして労災認定を求めたイタリアの裁判で、10月18日最高裁で勝訴が確定した。ケータイと脳腫瘍の因果関係が裁判で確定した世界初のケースとして日本のマスコミ以外ではニュースになった。一方の日本では、住民の健康障害を理由に中継基地局の操業停止を求めた裁判で10月17日、宮崎地裁が住民の請求を棄却した。電磁波の健康被害について内外で明暗が分かれたが、そもそも日本の裁判では因果関係認定のハードルが高い。今後、電磁波にともなう過敏症や腫瘍などの健康被害が裁判で認められるには、どういった研究手法や証拠が必要なのか。10月18日の慶大の新築建物に関する高裁判決でも因果関係が認定された化学物質過敏症と比較のうえ、その見通しを検証した。
Digest
  • イタリア最高裁で労災認定
  • 携帯電話と脳腫瘍の疫学データを重視
  • 因果関係の立証要件のハードルが海外の2.5倍高い日本
  • 日本の中継地基地局操業停止訴訟は却下されたが
  • 電磁波過敏症の因果関係が認められるには
  • 過敏症の原因を心因性だけと断定できるか?
  • 電磁波過敏症でも心拍変動・自律神経の変動

イタリア最高裁で労災認定

イタリアの最高裁で労災認定が確定したイノセンテ・マルコリーニ氏、60歳。現地の報道を総合すると、マルコリーニ氏は、イタリア北部に位置するブレシアという都市で工場のフィナンシャルマネージャーをやっており、12年間にわたって携帯電話を毎日5~6時間使っていた。

10年前のある日、ひげを剃っていた時に突然顎に痛みを感じ、病院に行ったところ、顔の左側の三叉神経での良性腫瘍、と診断された。

がんなどの悪性腫瘍ではないが、腫瘍は頸動脈を圧迫する可能性があり生命の危険があるとして、手術で切除を行った。手術は成功したが、左側の顔面麻痺は残った。また、手術後も激しい痛みが続き、鎮痛剤としてモルヒネを常用している、とのこと。

マルコリーニ氏は、通常左手で携帯を使い、右手でメモを取っていた。腫瘍ができた位置は携帯電話に最も近い部分だといえる。

腫瘍ができた原因は仕事中の携帯電話の使用にあると考え、マルコリーニ氏は労災認定の申請をした。しかし国の労働災害保険協会では因果関係が認められず、却下。

裁判となり一審でも棄却されたが、控訴審で2009年12月に労災を認める判決がおり、今回、最高裁でその控訴審の判決が確定した。

携帯電話の使用と脳腫瘍との因果関係が明確に裁判で認められた世界でも最初のケースで、ロイター通信が世界に配信し、英国では「テレグラフ」紙大衆紙「サン」 でも取り上げられた。

また一流学術誌であるNatureや、アメリカの電磁波問題に関する専門誌「Mircowave News」でも紹介されている。

ところが日本国内では、共同通信がローマ発で伝えたものの、それを掲載したのは全国紙・ブロック紙で産経新聞と西日本新聞だけ(ともに10/19夕刊)。もちろん朝日・読売・毎日・日経は黙殺した。独自取材はゼロだった。このように、巨大スポンサーであるケータイ会社に都合の悪い情報は遮断されている。

携帯電話と脳腫瘍の疫学データを重視

携帯電話と脳腫瘍の関連については、本サイト内記事で伝えているが、2011年の5月にはWHOの下部組織である国際がん研究機関が、ヒトでの疫学調査のデータをもとに「発がんの可能性あり」という評価を下している。

イタリアには、電磁波の健康影響を懸念する研究者の集まりである国際電磁界安全委員会(ICEMS)という国際組織の本部がある。今回の裁判では、原告側の専門家証言者として、このICEMSの設立者で、イタリア・パドア大学の名誉教授であるジノ・アンヘロ・レビ博士が証言した。

裁判では、ヒトでの疫学調査で10年以上の長期使用で脳腫瘍の発症率が統計的に有意な上昇を示す、という点が重視され

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宮崎県延岡市での携帯基地局操業停止をを求めた裁判の判決を伝える報道。毎日新聞宮崎版10月18日

微量影響の問題点7月20日フォーラムでの坂部教授発表資料より。

心因性とは決めつけられない。同フォーラム坂部教授発表資料より

化学物質過敏症患者での化学物質濃度と心拍変動のリアルタイムモニターの例。坂部教授発表資料より

電磁波過敏症の患者でも電磁波ばく露と心拍数や自律神経の変動をリアルタイムで示したケース。

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endorow2012/10/30 11:50
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