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「裏金でトナー購入の歴史」証拠改ざんで隠蔽 裁判所も堂々とだます自衛隊の本当の怖さ

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国側が裁判に出してきた改ざんされた後任会計隊長の陳述書。左が改ざん証拠(赤線部分)。原告が疑問を指摘すると取り下げた。会計隊のトナーが公費で買われていたという話が付け加えられている。トナーは裏金で買われており、公費購入を裏付ける証拠は何も出てきていなかった。
 「カラ出張はもうやめる」―そう決心した陸自古河駐屯地会計隊長の加藤好美さんは、それまで裏金をあててきたコピー機(非官品)のトナー費など予算のつかない経費について、自ら身銭を切ってこれを埋め、業務を回してきた。その後会計監査隊に異動し、古河駐屯地業務隊長の「汚職」を摘発。処分がうやむやになったその直後、加藤さん自身が「公金横領」というあらぬ疑いで警務隊に逮捕される。証拠不十分で不起訴になったものの懲戒免職に。「横領などしていない。皆わかっているはずだ」。汚名を着せられて組織を追われた加藤さんは、名誉挽回をかけて裁判に挑む。10年に及ぶ法廷闘争のなかで明らかになったのは、証拠を改ざんし、供述をねじまげるという自衛隊の無法ぶりと、真相に目を閉じる裁判官の姿だった。(判決文、上告理由書等はPDFダウンロード可)
Digest
  • 裏金やめて身銭100万円を投入
  • 会計監査隊が指南する「裏金隠し」
  • うやむやにされた業務隊長の「汚職」
  • 裏金つくってる警務隊が捜査
  • 証拠ないまま不当逮捕
  • 予算のつかない「寄付受けコピー」
  • 裏金づくりやめようとしたのがあだに
  • 裁判で明らかになった証拠偽造
  • 虚偽の供述するよう隊員に圧力も
加藤好美(かとうよしみ) 元1等陸尉。1952年、青森県浪岡町生まれ。1971年に陸上自衛隊入隊、古河駐屯地会計隊長、会計監査隊東部方面分遣隊など歴任。監査隊時代に古河駐屯地業務隊長の不正を摘発。その数ヵ月後の2002年8月、業者と結託して公金を横領をしたという疑いで警務隊に不当逮捕される。証拠不十分で不起訴となるが懲戒免職に。処分撤回・弁済金55万円の返還を求めて提訴。10年に及ぶ審理で敗訴が確定するが、「横領」の汚名は事実上否定された。裁判の過程で警務隊の裏金づくりなどの不正を暴露。国が証拠改ざんや虚偽供述を強要していた事実も明らかになる。

 非キャリアで陸上自衛隊に入隊し、会計隊畑を歩んできた加藤さんは、カラ出張や演習の際の水増し請求などによる裏金づくりが、当たり前のように行われている実態を知り、疑問を覚える。そして入隊27年目、40歳半ばのベテラン幹部自衛官となった加藤さんは、古河駐屯地の会計隊長に昇任、そこである決断をする。前編の裏金ただしたらクビになった!陸自元会計隊長が語る自衛隊の腐敗ぶりと本当の怖さに引き続き、加藤元1尉の話を聞く。

裏金やめて身銭100万円を投入

――相馬原の後、古河駐屯地の会計隊長になります。1998年3月。

はい、それで私は「カラ出張」も「裏金」もやめようと決めたんです。もうそういう時代じゃないと。前任者から30万円渡されました。裏金ですね。それを先任陸曹に言って金庫に入れさせました。帳簿はなかった。30万はそれまでで一番少なかったですね。

――カラ出張やめて金は足りたんですか。

足りません。やむをえず自分の金を使いました。歴代の会計隊長は自分名義の口座を作るんですね。「準公金」と呼んでいました。予算でまかなえないものをそこから出して使う。コピー機のトナー代や演習のときの備品など年間で100万円以上は必要なんです。夜間の演習するのに懐中電灯が一個か二個しかない。持っていない若い隊員には買ってやるしかない。演習のときの夜食とかも予算が足りない。土塁つくるときのベニヤ板とかの資材も予算がないので自前で買うほかない。二年の任期で、準公金の口座には自分の金を合計で260万円入れました。異動になって解約したときの残金は170万円。

――100万円の身銭を切った。 

はい。カラ出張いっさいやりませんでしたから。

――部下の隊員たちはどうでしたか、カラ出張やらないという隊長をみて。

喜んでいたでしょうね。できることならやりたくないですから。

――カラ出張をやめるという決断をした。でもその「代償」を払うことになるわけですね。「トナー代」で足元をすくわれる。これは後にお伺いします。

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会計隊長を経た後、加藤さんは会計監査隊に配属された。そこで、前任地である古河駐屯地の業務隊長が防大同期の営む業者から金品を受け取っていた問題を摘発する。しかし処分は甘く、事実上うやむやになった。監査隊の報告書(上)と古河駐屯地(下)

会計監査隊が指南する「裏金隠し」

――古河駐屯地に2年いて、次は会計監査隊東部方面分遣隊。どんな仕事を?

適正に経費が執行されているか、また調達された物品が適切に管理されているか。要は無駄なことをやっていないかを監査するのが本来の仕事です。ところが実態は、会計検査院の検査に引っかからないよう、不正を隠す「指導」をしていました。カラ出張とかしているのみんな知っていますから、検査院が来ても問題にならないように書類を整えておきなさい、裏帳簿など都合の悪いものを隠しておきなさいと指導するんです。

――ばれないように。

ばれないように。馴れ合いです。対検査院のための事前監査です。

自衛隊がカラ出張をやっているというのがわからないよう、ちゃんと書類を整えておけと指導する。 

――アリバイを作っておけと。

そう。

――ところが、そこで古河駐屯地業務隊長の不正をあげるわけですね。

平成13(2001)年秋の定期監査のときでした。監査隊に着任して一年あまりたったころ。業務隊長のKという1佐が工事に関連して業者から金品をもらっていた。

――古河駐屯地というと加藤さんがいた職場ですね。

そう。

――K業務隊長を摘発することについてはどう思いました?

はっきりいって嫌だったね。一年間一緒に仕事した間柄。私がすべてKの悪事を暴露した。そう思われるにきまっている。また、カラ出張もやることになるんですが、これは摘発しないというのが不文律でした。タブー。これをやれば全自衛隊の反感を買うのは目に見えていました。

――反感買う。

やっちゃいけないことだったんです。

――でも、やると決めたのは。

会計監査隊東部方面分遣隊の隊長です。

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警務隊員らが加藤さんの部下に対して虚偽の供述を強要し、その旨陳述書に書かせてていたことも明らかになった。業者から「1つも納品されていないと思います」と自身の署名のある陳述書(左)に対して、部下は法廷で、実際には納品があり、「印鑑をつくしかなかった」となどと証言した。

うやむやにされた業務隊長の「汚職」

――どうして隊長はやることにしたんですか?

内部告発があったんです。うちの監査隊長と仲のいい防大同期の隊員です。K1佐はその隊員の一年先輩。二人は仲が悪かった。で、隊員はK1佐の悪事を摘発してくれるよう監査隊長に情報提供したというわけです。端緒は私じゃない。

――どちらかというと人間関係で、いままで誰もやらなかった不正を摘発することになった。

そう。みんな驚いた。ただK1佐の悪事というのは目に余っていました。防大の同期がやっている業者があって、給湯工事の入札に参加した。結果、落札できなかった。でも、下請けとして工事に潜り込み、仕様書と違う廉価の給湯器を入れさせて、金を浮かせた。そして業者からゴルフバッグをもらっていた、というものです。

――入札ではずれた業者が下請けで復活、そして金を浮かせて「賄賂」をもらった。ひどいですね。

そう。

――刑事事件には?

ならなかった。うやむやです。結局業務隊のカラ出張だけを問題にして、あとは不問。警務隊も逮捕しようと動いていて、業者や関係者の供述もとっています。しかし立件しませんでした。K1佐は依願退職しましたけどね、それでおしまいです。懲戒免職になる見通しだったのを、陸上幕僚監部がもみ消した

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業務隊長の「汚職」が発覚しながら、処分をうやむやにした古河駐屯地。正門の向い側には陸自1佐で、著書の大量購入など自衛隊の全面協力によって参議院議員になった佐藤正久氏の看板があった。佐藤氏の政治団体の代表者は森勉元陸幕長(三菱電機顧問)が務める。初出馬当時の選挙は自衛隊法違反が濃厚に疑われるがうやむやのまま改選を迎えている。

改ざんされた陳述書の肉筆による署名部分。ハネ、うったての部分など癖が明らかに違う。また、手本をなぞるように似せて書いた印象を受ける。もともと陳述書を2通作っていて、紛失したので同じものを作り直したなどと苦しい釈明をしている。

野外炊具をつかって食事をつくる陸自隊員。この機械をめぐって、かつて陸上幕僚監部の広報担当を経験した防大出身の幹部が、業者から賄賂を受け取る汚職事件があった。陸幕は毎日5時になると酒を飲んでいた。一番たるんでいたと加藤さんは言う。

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モモ2013/06/26 00:47
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