裏金ただしたらクビになった!陸自元会計隊長が語る自衛隊の腐敗ぶりと本当の怖さ
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元陸自古河駐屯地会計隊長の加藤好美元1等陸尉。入隊した直後からカラ出張による裏金づくりを見てきた。会計隊長になったときにこれをやめたが、予算のつかないトナー代など2年の任期中に約100万円の身銭を切ることになる。「公金横領」の汚名を晴らすべく闘ってきた。 |
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- 大学に行きたいから自衛隊に
- 公然とやっていた「カラ出張」
- 警務隊がカラ出張で裏金づくり
- 規律が一番たるんでいた陸上幕僚監部
- 「花見会」「餅つき会」「演習」で裏金づくり
- 「800万円作らないかん」と会計課長は自慢
- 「ビール券で納品」のマネロンも
大学に行きたいから自衛隊に
――自衛隊に入った動機から教えてください。
家は青森県浪岡町で、もともと先生になりたかったんです。歴史が好きで史学の先生になろうと思っていた。でも私大にいく金はなかった。兄の同級生が自衛隊で募集やっていて、自衛隊は学校行かせてくれるという話を聞いた。手っ取り早いと入隊しました。人より苦労するかもしれないけど、努力すればいけるんじゃないかと。それが発端ですね。
――何年ですか。
昭和46(1971)年です。教育隊の成績はトップでした。最初の職場が青森駐屯地の会計隊。
――自衛隊行きながら大学に通ったわけですね。通信制?
はい。最初は青森駐屯地で日本大学の通信制やって、2年後、市ヶ谷駐屯地に異動になってからは夜間コースに編入しました。仕事終わってから水道橋の大学に行って、夜の9時ごろまた戻ってくる。週に2、3日。忙しかったですよ。
――会計隊で最初にした仕事はなんですか。
契約係を命じられました。簡単に言えば、契約を結んで物品を入れるところです。具体的には、まず補給科という部署から「○○を買ってくれ」と調達要求書がきます。これに基づいて業者をいくつか選定して、入札して落札した業者に物を納めさせる。そんな仕事です。
――どの業者を選んだらいいか、下っ端の隊員にわかるんですか。
だいたい決まっているから難しくはありません。文房具はこれこれの3社、雑貨は3~5社といった具合に指名業者のリストができている。糧食(食料品)は50社ほどありましたが、食品別に、魚は3社、肉は3社、冷凍品は5社といった調子です。
――棲み分けができている。
そう。ですから業者の選定で悩むことはない。
――すぐに仕事を覚えた?
3ヶ月ほどすればたいていのことは出きるようになりました。難しい仕事ではありません。
――自衛隊の印象はどうでしたか。
自衛隊というのは怖いというイメージがあったんです。でも入ってみるとそんなに怖いところではないなと思いました。いじめもありませんでした。自分のことを、やっていればいい。上の言うこと何でも「はいはい」とやっていれば何ら問題はない。やれと指示されたことやっていれば、本当に快適なところだなと。
公然とやっていた「カラ出張」
――青森から市ヶ谷、その後もずっと会計隊。気がついたことはありましたか。
「カラ出張」ですね。青森駐屯地のときからあった、これは。入ってすぐにわかりました。陸曹が、あけすけにやっていましたから。出張しないのに、みんな名前貸してね、旅費の精算請求やって、払って、その現金を、責任者が集金する。先輩たちのそうした作業を、横で見ていました。実際に関与するのは幹部や古参陸曹で、陸士はやりません。
――カラ出張を依頼するのは誰ですか?
会計隊の場合は、隊長の指示に基づいて、先任陸曹がやります。「あなた、今度はいつからいつまで旅行したことになっているから」と頼むわけです。
――どこに出張したことにするんですか。
だいたいが行き先は、ほかの部隊です。1泊で2万円から3万円。少し遠いところだと2泊しますから5万円ほどになります。架空の旅行命令書をつくって、金にするわけです。
――そうやって作ったお金は?
私が勤務した部隊では、金庫に現金で溜め込んでいましたねこの先は会員限定です。
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自衛隊の警察組織である警務隊もカラ出張で裏金をつくっていたことを知って加藤さんは驚く。後に告発した文書。茨城県から愛媛県まで電車で出張する、存在しない部隊名がかかれている、宿泊の実態がない、などの事実が確認されている。
旧防衛庁のあった東京都港区檜町。現在は再開発されて東京ミッドタウンとなっている。高級幹部が公費で飲み食いし、職場では連日宴会が開かれていたという。
仙台駐屯地の門を警備する女性自衛官。予算不足を補うために「カラ出張」はやむを得ないと加藤さんは当初思ってきた。駐屯地の記念日もまた裏金づくりの機会だったという。
12旅団(旧12師団。司令部は相馬原駐屯地=群馬県)のHPに記載された協同転地演習の様子。師団司令部の会計課長が、演習の際に「800万円の裏金をつくらないかん」と自慢するのを聞いたという。
自衛隊は怖いところだと思って入った加藤さんだったが、「ビニールハウス」だなと規律の緩さを感じるようになった。不正をただそうとして本当の怖さを知った。上は古河駐屯地、下は朝霞駐屯地の広報施設に貼られた隊員募集広告。
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読者コメント
海上自衛隊呉地方警務隊、捜査のやり方は、暴力団、訴えても、広島地方検察庁は動かない。
これが自衛隊の内情であれば、余りにも酷い。
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