府省別の自殺率と自殺者数。赤線は18歳以上60歳以下の国民の自殺率。
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人事院職員福祉課はこのほど、01年度から08年度までの府省別の自殺者数をはじめて明らかにした。防衛省・自衛隊は独自に公表しているため、これで国家公務員の自殺に関する全体像を組織別に比較できることになる。日本人の同期間の平均は、10万人あたり27.4人。これを超えていたのは、特別職である陸上自衛官(37.0人)、海上自衛官(36.3人)、防衛省事務官(28.2人)の3組織だった。直近5年では、自衛官の自殺率が国民平均を45%も上回っていた。一般職では法務省(27.2人)、農水省(25.4人)が多かった。鳥インフルエンザや耐震偽装問題など、世間を揺るがす問題が発生した年は関連省庁で自殺率が上がっている傾向が見られた。(記事末尾で府省別の自殺者数・年平均残業時間をPDFダウンロード可)
【Digest】
◇自殺率、陸自や法務省などが国民平均超える
◇職種別の自殺率 税務職は低く林野庁現業は高め
◇原因は過労自殺か 精神異常が5年で倍増
◇霞ヶ関の残業、公式記録では年平均359時間
◇「ウツになった職員を地方に返してくる」
◇鳥インフル、社保庁問題、耐震偽装… 自殺率とリンクか
◇調査・分析されない国家公務員の自殺
◇自殺率、陸自や法務省などが国民平均超える
人事院は過去、02年度の府省別の自殺者数を公表したことがあったが、年度別の詳細(常勤職員)が明らかになるのは初めてと見られる。防衛省は、すでに防衛省事務官と自衛官(ともに特別職であるため、人事院の調査対象外)の年度別の自殺者数を独自に公表している。
防衛省・自衛隊を含めた府省別の自殺率(10万人あたりの自殺による死亡率)は、自殺者の出ていない環境省と、公表を拒否した会計検査院と思われる組織を除くと、8年間で平均19.2人だった。同期間における18歳以上60歳以下の日本人の自殺率27.4人よりも、8.2人低かった。
(※以下、「日本人の自殺者」や「日本人の自殺率」というときは18歳以上60歳以下の日本人を言う)
毎年自殺者を出していた組織・職種で自殺率が高かったのは、陸上自衛官(37.0人)、海上自衛官(36.3人)、防衛省事務官(28.2人)で、いずれも日本人の自殺率を上回っていた。4位以下は、法務省(27.2人)、農水省(25.4人)、航空自衛隊(24.1人)、国交省(19、6人)……と続く。法務省の自殺率が日本人の自殺率とほぼ同じ水準だ。
自衛官などの特別職を除いた一般職に限ると、8年間の平均自殺率が日本人の平均自殺率を上回った府省はなく、自殺率20.0人を上回った府省は法務省と農水省の2省だった。
8年間の平均では日本人の自殺率を上回ることのない一般職の国家公務員だが、年度別では超える年もある。02年度から08年度までの8年間で、各府省の自殺率が日本人の自殺率を上回った回数は、法務省が4回で最多、農水省が3回、厚労省、外務省、文科省、国交省などが1回、財務省、総務省、経産省は0回だった。陸上自衛官は8年すべてで日本人の自殺率を上回っていた。
国立病院や国立大学が法人化し、母数が減った後の04年度から08年度までの最近5年に限ると、陸自と海自の自殺率は平均40.0人を超えていた。法務省も5年平均では29.6人に高まり、同期間の日本人の平均自殺率27.6人を上回るが、自衛官は実に国民平均よりも45%増と、明らかに多い。
このほか、最近5年間で毎年自殺者が出ていた組織・職種で、自殺率が20.0を超えていたのは、防衛省事務官30.1、空自25.4人、農水省23.1人、国交省21.7人、厚労省21.5人、警察庁20.4人。
府省別の自殺率と自殺者数は以下のとおり.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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自殺者数に関する人事院と防衛省の文書。 |
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資料を元に集計した府省別自殺率など。 |
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09年の省庁別の年間残業時間。 |
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