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労働時間の長い会社、短い会社、密度の濃い会社、薄い会社

情報提供
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キャリアの上積み感と適正報酬の関係
 「民間企業ならどこも馬車馬のように働かされる」と思っている人は多い。だが実際には、その労働時間の絶対的な長さも、その密度も、会社によって全く異なる。NTTグループのように労組が強い大企業では、短時間労働で趣味にも時間を使えるし、残業時間の制限が厳しい会社では、「時間内に終わらせねば」というプレッシャーがあったり、やりたい仕事でも切り上げて帰らねばならない不本意感を感じることもある。
Digest
  • 「休みがないのが当り前」の異常
  • 成長効果の高い仕事
  • 「キャリアの上積み感」という見えない報酬
  • 時間で考える思想からの脱却
  • さまざまな残業の形
  • サービス早出
  • 持ち帰り仕事が発生
  • メールの送受信記録でチェック
  • 若手社員には不満も
  • 15分単位で残業を申請
  • 選択制や途中からの「みなし」
  • みなし導入は成果主義とセットで
  • メリハリの付け方
  • 短時間勤務をしたい人は
  • ホワイトカラー・エグゼンプションの問題
  • 36協定の怪

【この軸で選ぶ意味】

一方で、「みなし」を導入し時間で管理していない会社では、気楽さはあっても、延々とメリハリなく長時間を働く傾向が強く、成果主義の人事処遇でない場合には、納得性が低い。

「休みがないのが当り前」の異常

私は、社会人になって10年間、長時間働く仕事としては、トップを争う職種ばかりを経験した。新聞記者、外資系コンサルタント、起業家である。タイムカードをガチャっとやったことはなく、時間単位で残業代をもらったことも一度もない(これは違法で、使用者は時間外労働に対し、割り増し賃金を払う義務がある)。

飛行機の炎上事故が起きたときは、1ヶ月で2~3日しか休みがなかった。これは新聞記者の場合、ごく普通のことで、それがカルチャーとして定着し、「休む」とか「帰る」とか言い出すことはできないカルチャー。逆に先輩から「近くで見れて役得だな!」と言われる始末だ。

事件・事故がなくとも、月3回の泊まり勤務の日は3時間の仮眠だけで朝から深夜まで働かされるので、常に寝不足で精神的に不安定となり、思考も衰弱する。採用前に熱心に健康診断をやったり、男女ともに、いかにも丈夫そうな人が採用されていたのは、このためか、と思ったものだ。すぐに熱が出たり倒れたりするタイプの人がうらやましいくらいだった。

それでも、体内に疲労が蓄積されて過労死につながるなどで、新聞記者の寿命は平均より短いという話は社内でよく聞いた。労組の支部長の団交での常套句は「我々は命を削って仕事をしてるんだから、給料が高くて当然だ!」だった。

この発想は、この業界の労使の考えを代表している。つまり、労使ともに、「休みを増やす」という方向性はなく、「休みがないのが当たり前なんだから給料を上げろ」という発想で、ではいくら上げましょうか、で調整が図られるのだった。私は、時代錯誤も甚だしいと思っていた。

自分が好きな仕事、キャリアになる仕事だけをできているなら我慢もできるが、仕事を選べない若手記者には全くあてはまらない。私は事件記者のキャリアに興味はなかったが、そもそも個人の希望など聞く気がなく、それが不満だった。

成長効果の高い仕事

結局、やりたい仕事ができないことが分かり、「キャリアの上積み」職業人として成長し、市場価値が高まっている感覚を優先して、厳しい世界ながら短期で成長しやすい外資系コンサル会社へ、年収を下げて転職した。コンサルは年俸制(みなし時間制)で、どんなに働こうが時間とは関係なく、年1回、スキルだけを評価して年俸を改定する、という考え方だった。オフィスはフリーアドレス制で、出社する必要さえない。労働時間は、完全に自己管理だ。

コンサルは常に顧客に対して付加価値を生み出すのが仕事なので、土日も頭が休まらない。寝ていても勝手に頭が考えてしまう。仕事のサイクルが3ヶ月程度の短期が多く、確実にその期間で結果を出さないといけない。自己裁量とクリエイティビティの余地が大きく、仕事に終わりがない。こういう仕事は、時間で管理するのは不可能だな、と実感したものだ。

一方、新聞社には存在すらしなかった「研修」が充実しており、どんどん受けた。仕事との相乗効果で、自己成長につながった。これは逆にお金を払っても良いくらいだと思った。それが今後の職業人生における「稼ぎのタネ」につながる、と確信できたからだ。

そして5年後、記者とコンサルという全く異なるスキルセットを活かして起業し、今に至る。起業家の多くがそうであるように、私も寝食を惜しんで仕事に打ち込み、稼いでいる。なにしろ、好きな仕事しかやらなくてよいのだ。今思うと、20代のキャリアは本当に役立った。

「キャリアの上積み感」という見えない報酬

このように、少なくとも私が経験した仕事だけ考えても、時間の感覚は、全く異なる。それは主に、先に述べた「キャリアの上積み感」(職業人として成長し、市場価値が高まっている感覚)との対比で表すのが適切だ。概念図を示そう(右上参照)。

働いた時間の長さに応じて賃金が支払われるべき仕事というのは、経済のソフト化が進んだ現在の日本では、少数派だ。1947年制定の労働基準法は、製造業中心の時代背景から生まれ、実労働時間主義のままとなっており、ギャップが大きくなっている。

ラインに流れてくる製品をチェックしたり組み立てたりする単純労働の多くは、3ヶ月も続ければ覚え、それ以上はスキルが伸びない。だから未経験者による「期間工」という仕事も成立する。つまり、キャリアの上積み感はゼロだ。時間をそのまま、お金に換えている感覚。これは、20代だろうが60代だろうが、同じである(図中、単純労働の仕事B)。

だが、労働の市場化・グローバル化が進むにつれ、時間で管理される単純労働系業務においては、汎用品工場は最低賃金を求めアジアへ移転し、また国内のサービス業でさえ、コンビニやファミレスの店員は、アジア系外国人に置き換わりつつある。

一方、逆にキャリアを上積める仕事(図中、高付加価値の仕事A)は、こちらからお金を払ってでもやる価値が

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労働時間の質と量〔各エリアの特徴〕

労働時間の質と量〔代表的な企業名〕

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mini_will2012/01/22 15:11

RT @masa_mynews: 僕は「残業は文化だ!」「知的ブルーカラー」「どうせ持ち帰り」の各エリアの企業はお勧めしない。みなし時間労働制のほうで思う存分キャリアを磨いて、さっさとエグジットしなきゃ。/労働時間の長い会

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メッシ2008/02/01 02:50
NTT2008/02/01 02:50
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商社マン2008/02/01 02:50
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